239話 合流
「ここは……セレスの祝福を受けた場所?」
黒い蔦に体を縛られた状態で目が覚める。近くにはレオンとヴィヴィ……それからジークがいるみたい。ジーク以外は全員捕まっている。カトレアちゃんはどこ!?
「ジーク。カトレアはどこ?」
「気にする必要はないんだよ?」
ジークは何も教える気がなさどうだ。こちらを向きすらしない。
「ヴィヴィ。起きてる?」
「なんとかね。でもレオンからは反応がないわ。一応生きてるみたいだけど……」
もしかして記憶を操作されてる最中とか? だとしたら止めないと。
「無駄なんだよ。この城に来た時点で僕たちの勝ちは決まったんだよ」
私が抜け出そうとしてるのを見てジークが呟く。
なめられたものだね……! 魔力を練るもいつもより効率が悪い。
「魔法は使えないんだよ。サクラは無駄なことをせずにそこにいればいいんだよ」
使えない? そんなことないと思うけど……。ただ、魔法を使えても黒い蔦が丈夫すぎて切れないけどね……。
「あまり素体には乱暴したくないの。抵抗しないで?」
「うぐっ」
私が魔法を使ってることに驚きつつもジークが手を振ると蔦の締め付けが強くなる。アービシアの使ってきた黒い棘といいこの黒い蔦といい呪いが含まれた攻撃が厄介だ……。
「サクラ。お守りに魔力を流してみて」
「うん? わかった」
ヴィヴィから簡単な指示を受けてからお守りに魔力を流す。周囲が一瞬白くなり黒い蔦が切れた。
「!? 何をしたの?」
私同様蔦から解放されたヴィヴィを掴んでその場を離れる。
雑な運び方でごめんね?
「レオンは大丈夫かな?」
「殺されはしないと思うわ。記憶も……たぶん大丈夫。信じましょう」
レオンはかなり衰弱していたから今は置いて逃げることにした。後で助けにくるけど安定して呪いに対抗する手段を手に入れることが優先だ。
気休めだとわかるヴィヴィの言葉を信じて庭を走り抜ける。
「どこに行くつもり?」
「カトレアとレオナを探すよ。早く合流しよう」
お守りを持ってるなら大丈夫だと思うけど心配なことにかわりない。どこに行ったんだろう……。城と庭を繋ぐ迷いの廊下……本来は庭への侵入を防ぐための廊下を渡りきると中庭に出た。
「ジークはついて来ないね」
「レオンがいるからじゃない? 私達に見捨てる選択肢がない以上、レオンの場所に必ず戻ってくるからね」
なるほどね。無理に追って警戒させるよりも泳がせておこうということかも。最後に捕まえれば問題ないって感じ? 油断してるなら今のうちにお守り以外の対抗策を練って戦う準備をしないとね。ふふふふふ。
「サクラ……悪い笑みが出てるわよ」
「ふ? こほん。どうやってやり返そうかと思ってね」
「サクラってかなりの戦闘狂よね……」
「え? 私は平和主義だよ?」
やられっぱなしは性に合わないし強い人と戦うのも楽しみだけど戦闘狂じゃないよ! あれ? だいぶ前にも同じこと考えたな?
「それより、ヴィヴィは呪いの対策を知ってるんでしょう? なんで教えてくれなかったの?」
とっさにお守りに魔力を込めてって言えたのはもともと知ってたからだよね?
「分かったのは直接ジークをみたからよ。それにお守りは確実に対抗できる手段だけど使用制限があるから多用しないでほしかったのよ」
使用制限? もとは私が作ったお守りだしそんなものはないけど……はっ!
「オリディア様の魔力?」
「ええ。王都に来た時に渡した量しかないわ」
要は今のままだとジリ貧ということだね。カトレアちゃんとレオナも気付いて節約していればいいんだけど……。
魔力感知で城内を探ると王の間にカトレアちゃんがいることが分かった。戦闘中かな?
「急ぐよ」
「ええ」
巡回してる兵士達を迎撃しつつ強行突破していく。兵士達は悪い人たちじゃないから怪我をさせる訳にはいかない上にやたらと強化されていたせいで想定以上に時間がかかる。
カトレアちゃん無茶してないといいな。
王の間の前に辿り着くと外からでも分かるほど濃密な呪いが充満していた。
……さっき来た時もこんな感じだったのかな? なんで私は気付かなかったの?
強大な呪いの気配に一瞬気圧されるも中にカトレアちゃんがいることを思い出して気合いを入れ直す。
「サクラ大丈夫? だいぶ顔色が悪いけど……」
「二人を助けるためだから大丈夫。我慢できるよ。それよりヴィヴィは何も感じないの?」
それとも神霊にとってはなにも問題にならない気配なのかな?
しかしヴィヴィはキョトンとした顔で首を傾げる。
「前回来た時と一緒で何も感じないわよ?」
「そっか……」
気になることは多々あるけど一旦置いておこう。
呪いで閉じられているドアを天の魔法でこじ開ける。
……? 魔国で闇を払った時はそこまで感じなかったけど私の魔法に違和感がある。
「ドアが開いたわ! 中に入るわよ」
「うん!」
ヴィヴィの一言に我に返って王の間に突入する。すると私の目に飛び込んできたのは……。
「かとれあおねえちゃんもふもふ!」
「ちょっとチノ。くすぐったいから止めてちょうだい」
「ぎゅー」
「もう仕方ないわね」
チコそっくりの幼女と戯れているカトレアちゃんの姿だった。
「え? あ? えっ?」
やばい。語彙力がお亡くなりになってしまった。幼女と戯れるカトレアちゃんが尊くて浄化されつつもなんだ浮気か? という嫉妬と幼女から呪いの気配が盛れてるんだけど敵なのかな? という疑問、もしカトレアちゃんの記憶が書き換えられていて私を敵認定してきたら死ねるといった不安がごちゃ混ぜになりつつ、お姉ちゃんしてるカトレアちゃんが可愛いってなって頭がパンクしそうだ。というかしてる。
「あらヴィヴィとサクラ。無事に逃げ出したのね」
「…………」
「サクラ?」
「レオナ。今のサクラは放っておいてあげて」
私の反応が無いことに訝しげな視線を送ってきたレオナだったけどヴィヴィの一言で気にしないことにしたようだ。対応は間違ってないけどちょっと寂しい。
「で、あれらは?」
そう言ってヴィヴィが指差したのはカトレアちゃんと戯れてる幼女とぐったりしてるライアスの二人だ。
ライアスは何してるのさ……。
「チノの事はおいおいね。ライアスは呪いにやられて死にかけてるわ」
「助けないと!?」
「それがお守りが上手く機能しないのよ」
「ママの魔力を使い切っちゃったのね。サクラのお守りを使いましょう」
私が持ってたお守りをライアスに装着する。ゆっくりと魔力を流して呪いを祓う様子を確認しつつ治療をすると直ぐに動けるようになるまで回復した。
「せんばい……?」
「無事じゃなさそうだけど平気そうだね。みんなで話し合いをしようか」
そろそろ幼女をカトレアちゃんから引き離したい。そのモフモフは私のものだ!
「しょうもないこと考えてそうね」
「いつも通りでいいんじゃないか?」
う、うるさいよ!
次話は明日の17時投稿予定です
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