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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~幻想都市編~
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237話 闇の中<カトレア視点>

 サクラを探して三千里。とまではいかずとも城の中を歩き回っているのは私ことカトレアよ。レオナの魔法のおかげで敵に見つかることなくサクラを探すことができているわ。


「いねえな。すごい特殊な場所にいるんじゃないか?」

「だとしたらお手上げね。でもほとんどの場所を探したし打つ手がないのも事実よ」


 どこか可能性はないのかしら。特殊な場所……王の間は?


「王の間だと? 床が崩れてんだろ? レオナ以外入れないぞ」

「でもまだ見てないでしょう? それにアービシアが立っていた玉座の方は壊れてなかったわ」

「玉座か……。後ろに隠し階段でもありそうだな」

「なんでよ……」


 ライアスの言葉にレオナがジト目を送る。

 正直レオナに同意だけどサクラも同じこと言ってたのよね。可能性は高いと思うわ。


「なに? カトレアもライアスに同意するの?」

「前にサクラが似たようなこと言ってたのよ」

「なるほど。さっさと王の間に行くわよ!」

「手のひらドリルかよ……」


 手のひらが掘削機? 確かにレオナなら貫手で床を掘れそうだわ。なんにせよ行って確認したいわ。


「おい! まだ見つからんのか! ネズミは三匹。さっさと見つけ出せ!」


 少し遠くから怒声が聞こえてくる。私達三人が逃げ出したことに気付いた城の兵士たちが私達を探してるみたいなの。


「アービシア様のために!」

「「アービシア様のために!!!」」


 兵士ももれなく洗脳済みってわけね。恐ろしいわ。

 追っ手をかいくぐりながら王の間を目指す。たまに気付かれては三人で兵士たちを伸していった。


「ライアスも魔法の使い方を思い出したのね」

「あの牢の中だけ魔法が使えなかったみただな。ま、使えるならいいだろ」


 なんで私達は魔法を使えたのかしら。……考えても仕方ないわね。そういったことはサクラに任せしましょう。


 兵士たちは悪くないから無力化するだけにとどめ、レオナがやりすぎた分はライアスが動けない程度に回復する。やっぱりいいコンビじゃない?


 王の間にたどり着き、レオナがドアをぶち破る。中を見ると崩れたのが嘘のように綺麗な床がある。


「もしかして幻覚を見せられていたとか?」

「ちがうよ? わたしががんばってなおしたの。えっへん」


 驚いて部屋を見まわすと玉座の裏から一人の女の子が出てきた。ドワーフの子供みたい。どこかで見たかしら?


「わたしのさくひんをこわすならあなたたちはてきだよ。かくごしなさい!」

「ただの子供じゃないわね……。油断せずにいきましょう」

「あーびしあぐん、かんぶのひとり! ちの! まいるっ!」


 名乗りを上げるとチノは身の丈以上の大きさの真っ黒なハンマーを振り上げる。どこからだしたのよ!?


 チノがハンマーを振り下ろすと床から大量の棘が出てくる。


「物理と見せかけて魔法!?」

「面倒な!」


 チノが振り回すハンマーに合わせて部屋の形が変わっていく。壁から巨大な拳が出てきたり屋根から雹のように小さな弾丸が降り注いだり捌くだけで精いっぱいになってしまう。


「まだまだだよっ!」


 チノが変な液体が入った瓶を投げてよけるとあたりが真っ白な霧に覆われる。

 魔力感知のおかげで攻撃をかわせるけど前が見えないのはまずいわね。


「だーく・いん・あびす」


 霧が真っ黒に変わっていく。炎魔法で空気を温めて風を起こして霧を晴らすと私は一人で真っ暗闇の中に立っていた。


「ここは……グリフスとケアードがいた闇に似てるわね」


 炎魔法で明かりを確保しようとしても光は闇に溶け込んで自分の姿さえも目視することができない。幸い魔力感知は反応があるも私はサクラほど得意じゃないから心もとないわ。


「げーむのかいしだよ! そこにいるてきとたたかってね! かったらひとだけしてあげる」


 チノの声が一度だけ響き渡る。魔力感知に人影が反応して杖を構える。相手は二人……みたいね。


 レオナとライアスはどこに行ったのかしら。遠くには行ってないと思うのだけど……。


 勢いよく風を切る音が聞こえて杖ではじく。思ったよりも攻撃が軽い? 向こうも驚いているようで手数を増やしてきた。杖を回しつつ攻撃をはじいて杖先に火をともす。サクラの真似をして温度を上げた炎よ。食らいなさい!


『**! ********』


 言葉にならない声が聞こえる。知能でもあるのかしら。


 距離をとって慎重に戦い始めた敵と打ち合っていると突然背後に気配が現れる。しまった!


『****! ********!』

「何言ってるの?」

『***。********』


 しかし、後ろに現れた気配は私を捕まえるだけで攻撃はしなかった。何か言って訴えているみたいだけど……。


 私が思わず返答すると残念そうな声色で返事が来た。もしかして敵意がない?

 どうやら私が戦っていた相手も羽交い絞めにされているらしく攻撃される気配はない。


 それにしても力強いわね。今の姿勢で敵対されたら危険すぎるわ。

 逃げようともがくも抜け出せない。


「きゃあっ!」


 手の甲から腕にかけてぬるっとしたものが這った。気持ち悪い!! 思わず気を逆立てるも気にした様子もなくぬるっとしたものが動き続ける。なになに!? 後ろにいる存在は変態なの!? は、早く抜け出さないと腕がぞわぞわするわ!


『****。****!』


 耳元で何かを言いつつぬるぬるしたものが塗りたくられる感覚に恐怖がピークに達する。むりむりむりむり! サクラ助けてっ!


「いやっ! 離して!」

『*******』


 半狂乱になりつつじたばたしていると首元を噛みつかれた。血を吸われる感覚とともに頭に軽い痺れがはしる。た、立っていられないわ。少しして血を吸われる感覚が終わるもそのまま力が抜けてその場に崩れ落ちた。

次話は明日の17時投稿予定です


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