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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~幻想都市編~
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235話 潜入

 全員分の治療を終えた次の日の朝、吐気や頭痛も収まった。普通に会話出来るようになったため、昨日の治療でなにが起きたのか説明している。


「それは……災難だったわね」

「ごめんなさいね。私がもう一人でも引き受けていればサクラの負担が減っていたのに……」

「あはは、大丈夫だよ」


 元はと言えば横着しようとした私が悪いのであってレオナは悪くないのだ。……一人引き受けて貰えただけで嬉しいよ。ホントだよ?


「そうなると改めて一人ずつ治療することになるのかしら?」

「うーん、干渉はできたから大丈夫だと思うけど一人くらい確認した方がいいかも」

「それなら私が行くわ。サクラにばかり負担をかけられないもの」


 今度はカトレアちゃんが立候補した。私達の惨状を見て志願するなんて……。


「カトレア。無理しなくて良いんだよ。辛いことはレオナに丸投げしちゃおう」

「私の扱いが酷いわね……」


 レオナが何か言ってるけど無視だ。私はカトレアちゃん第一主義だからね! それに……


「さっきもう一人でも引き受けていればって言ってたよね? 引き受けるチャンスだよ」


 グッと握り拳を作る。……脅してるわけじゃないからね!?


「分かったわ。干渉しないで確認するだけならまだマシだもの」


 苦笑いしつつも快く引き受けてくれたレオナに魔法をかける。直ぐに戻ってくるでしょう。


「レオナにばかり頼るのね」

「何か言った?」


 レオナをルアードさんの記憶の中に飛ばすと頬をふくらませたカトレアちゃんがそっぽを向いた。なんで膨れてるの?


「どうしたの? 私悪いことした?」


 カトレアちゃんに尋ねてみるもそっぽを向いたまま教えてくれない。

 むむむ。何が気に触ったのかな。もしかして治療する役を自分でやらずにレオナに無理やり押し付けたこと? それともカトレアちゃんも人の記憶の中に入ってみたかったとか?


 カトレアちゃんの尻尾をモフモフしつつ考えるもこれと言った原因が浮かばない。


 はっ! もしや無意識にレオナに惹かれ始めてるとか? そんな中私がレオナに意地悪したことで機嫌が悪くなった……?


「カトレア……浮気はダメだからね?」


 カトレアちゃんの尻尾に顔を埋めつつボソリと言ってみる。すると聞こえていたのかゲンコツで頭を殴られた。ひどい!


「サクラは何を勘違いしてるのかしら?」


 ニッコリ笑顔が眩しいなー……。あはははは……。

 私が目を逸らすとカトレアちゃんがため息をつく。


「はあ、サクラ相手に伝わると思った私が馬鹿だったわ。いい? 私はサクラの隣を歩きたいの。過保護に守られてサクラの後ろにいたいわけではないのよ。私はサクラとは違って出来ない事も多いけど私ができることくらいはやらせてちょうだい」

「ガドレア゛ぢゃーん」

「あっ! こらっ! 鼻水を付けるのやめなさい! もう、私の尻尾がベトベトじゃないの!」


 カトレアちゃんの優しさに感動した私はさらに強く尻尾にしがみつく。嫌われた訳じゃなくて良かった……。


「戻ったわ……えぇ……?」


 治療の確認を終えたレオナが戻ってくるも私達の様子を見てドン引きしている。


「サクラはどうしたの?」

「まだ参ってるみたいよ。今日はまだ動けないかもね」

「そう。昨日ほどでは無いにしろ私も辛いし今日は休みましょう」


 レオナの言葉に全員が同意し宿でゆっくり休むことになった。


 ―――


 次の日、すっかり快復した私達は城の前まで来ていた。申し訳程度に私がかけた気配遮断の魔法のおかげか私達が近くにいることに気付かれて無いみたいだ。


 正門から入り込む為に誰かが門を通るのを待つ。


「なかなか人が来ないね」

「ライアスの一件があってから訪問する人が減ったみたいよ」

「門番が追い返すようになったってこと?」

「違うみたいね。誰も近付きすらしないらしいわ。王都の人達にとって王城はとても神聖なものになったみたいね」


 もしかして私達が潜入する方法を予想して対処したのかな? それとも私達以外に被害が出ないように……それはないか。アービシアなら嬉々として巻き込みそうだ。


「警戒されているってことかしらね」

「一度セレスに捕まってるからかな? ……それも今はわざと捕まったんじゃないかって疑わしくなってきてるけどね」


 機会を伺うこと数時間、ルアード商会の魔動車が城に近付いているのが見えた。それもかなり大型の車だ。


「え? ルアードさん?」

「明らかに怪しいけどチャンスよ。後ろをついて行きましょう」


 まだルアードさんは宿で気絶してるはず……。それとも快復したのかな? 私達を止めに来たのか援護しに来たのか……分からないけど今動かないといつまでも潜入できなさそうだね。


 カトレアちゃんに同意して四人で車の後ろをつける。




 無事に城の中に入ることができた。

 車の中を感知すら出来なかったのは気になるけど罠では無かったみたい。でも、もしアービシア軍に人にバレてはいけないような物資を調達させられているとしたらどうしよう。


「サクラ。それを考えるのは後にしましょう。ルアードさんの記憶は戻したし本人がどうにかするでしょ」

「うん」


 失敗したな。記憶の治療をする時に別途記憶の改竄があるか確認すべきだった。まとめて治療したせいで胸痛する内容しか治してないや。


 はっとしてレオナを見ると首を傾げられた。


「昨日ルアードさんの記憶を確認してたよね? 怪しい物資の調達とか頼まれてなかった?」

「無かったはずよ。ところどころ抜けがあったけどそれはサクラが治療した後だと思うし」


 なるほど。ならあの車は別の用があったのか……。ルアードさんが居なくなったことの連絡? でもそれなら大きな軍を出す必要もないか。


「こらっ、気を抜かないの。ここはもう敵地なのよ」

「そうだね。気をつける」


 カトレアちゃんに怒られて思考を中断する。隠密は……大丈夫だね。最短距離で王の間を目指すよ!

次話は明日の17時投稿予定です


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