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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~幻想都市編~
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234話 横着

 私サクラ! 友達の記憶をいじったら局所的な記憶喪失にしちゃったの! てへっ! …………どうしよう! ミーヤごめんね!?


「サクラ? そんなに冷や汗かいて何やらかしたのよ」

「カトレア? いやー、あはは……」


 私がやらかした前提で話しかけてくれるカトレアちゃん。私の評価が気になるな? ま、合ってるんですけどね!


「えっと、ミーヤの記憶が局所的に……ごにょごにょ」

「サクラ? 誤魔化すにしても口でごにょごにょ言うのは無しよ」

「うっ、……ミーヤの記憶に干渉していた魔力を取り除いたらその部分の記憶が空白になりました!」

「そう」

「え?」


 それだけ? もっと慌てるとかちゃんとしなさいって怒られるとか思ってたのに。


「あ、サクラはミーヤの記憶を治してる間の様子を知らないのね」

「なになに? なにがあったの?」


 もしかしてミーヤの記憶で見たあれやこれやを口に出してたりする!?

 チコを見るも恐怖で顔を引きつらせてるだけで恥ずかしがってる様子はない。


「チコ?」

「ひっ」


 声をかけると小さく悲鳴を上げて震え出した。小動物を虐めてるみたいで罪悪感が……。


「サクラが魔法を使ってからミーヤは痙攣したり息が荒くなったり暴れだしたり大変だったのよ。最後の方は穏やかな顔してたけど傍目から見たら苦しみ抜いて死んだように見えたわ。ショックで記憶が飛んだと言われても納得できるしなんならそれだけで済んで良かったわねって感じ」

「申し訳なくなってくるよ……」


 そんなに酷かったの? ……怖がってるチコにやりにくいよ。


「サクラ、記憶は気にしなくて大丈夫よ」

「ヴィヴィ? 治せるの?」

「数日かけてゆっくり戻るはず。おそらくその記憶喪失は混乱しないための自己防衛反応だから」


 なるほどね? それなら仕方ないのか。じゃあ次はチコを治そう。


 ―――


 うん、チコよ……。君思っていたより……ううん、なんでもない。


 無事にチコの治療も終わり、再度ジークに記憶を改竄されないよう二人を隔離する。


「じゃあ他の人達も治療しましょうか。戦力になるのはウィードさん、学園長、ギルマスサブマスあたりかしら? サポーターとしてルアードさんも治しておきたいわね」


 うん? それってつまりミーヤやチコの治療をした時のようにみんなのあれやこれやの記憶を見ることになるの? 嫌なんだけど!?


「全員捕縛して捨ておこう」

「サクラ? 記憶の欠損については気にしなくていいのよ?」

「記憶を治療する時にさ、私の意思に関わらずいろんな記憶が見えちゃうんだよ……」


 全然ピンと来た様子のない三人に補足で説明する。


「だからね、見たくもない姿も見えちゃうわけで……」

「乱れた姿も見れるってことかしら?」

「なんでそこをチョイスした!? でもまあ間違ってないかな。黒歴史まで発掘しちゃうしその時に感じたこととかも……」


 二人が昔誰を好きだったとか、どんな感情を持って過ごしていたとかまで丸ごと把握出来ちゃうんだよね。


「……はっ! もしかしてサクラは今発情」

「してません!!」


 阿呆な事を言い出したレオナはシバいておく。

 人のそういったシーンを目の当たりにするのも嫌だけど他人の感情が流れ込んで来てる時点で不快感しか無いんだよね。


「そんなに嫌がること無いじゃない」

「そこまで言うならレオナにやってもらおうかな」

「任せなさい」


 私は治療する時のストレスが嫌だったから捕縛して邪魔されないようにするだけで良いと思ったけど代わりにやってくれる人がいるなら話は別だ。レオナに任せよう。


 ―――


 ウィードさんや学園長、ギルマスとサブマスにルアードさんを拉致してレオナを通して治療していく。


「ちょっと、もうちょっとだけ休憩させて」

「そう言って一時間は経ってるんだけど?」


 最初にウィードさんの治療を終えたレオナが吐きそうな顔をして休憩をしてから早一時間。すっかり顔色は元に戻ってるのに再開しようとしない。


「任せなさいってレオナが言ったんだよ?」

「サクラ、ごめんなさい。茶化したのは悪かったわ。でもここまでとは思わなかったのよ」


 レオナがマジ泣きし始めた。カトレアちゃんとヴィヴィは役目を振られないように存在感を消してるよ。


 うーん。連れてきちゃったし治すか? このまま捨て置くのも有りだけど……。


「いっぺんにやっちゃおう」

「正気!? 絶対にやめた方がいいわよ!」

「とにかく試行回数を減らしたい」

「それは分かるけど……」


 残りの四人を一箇所に集めてまとめて魔法を使う。魔法はイメージが大事だ。


 四人の記憶に潜り全員に共通した記憶を探し出す。全て通しで見る必要はない。上手く行けば負担が減るはず……!


 ―――


 結論から言うと半分成功半分失敗だった。狙いは良かったし、ちゃんとジークと会った場面にピンポイントでアプローチできた。ただ四人分の感情を舐めていたのだ。脳は一つのままなのに思考や感情が同時に五つ分処理をしなければいけなくなって意識が吹き飛んだ。


 なんなら目が覚めてからも直ぐに吐いたし、頭がガンガンして今日はもう動けない。

 マルチタスクできる人はこの情報量を処理できるのかな? ぐぬぬ、羨ましい。


「で、どうだったの?」


 カトレアちゃんが話を聞いてくるけど答えられるほど快復してないよ。

 ノロノロと身振りで伝えようとしたけど上手く体が動かない。


 普段なら私の意図をしっかり受け取ることができるカトレアちゃんでもお手上げらしい。

 何冷たい水がとても美味しい……。

 横になったまま水を飲んでる私を見てカトレアちゃんが苦笑した。


「ちゃんと快復したらまた聞くわね」


 そうしておくれ。ではおやすみ。

次話は明日の17時投稿予定です


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