231話 先制攻撃
ついに最終章です!
最後までよろしくお願いします!
突然消えたレオナとヴィヴィを木の枝に座って待っているのは私ことサクラ・トレイルである。
「おい、レオナ様は大丈夫なのか?」
「もちろん。誰が呼び込んだのかも今いる場所も分かってるから大丈夫」
二人が消える直前に見えた魔力の流れと遺跡から感じる神聖な雰囲気を見るに十中八九オリディア様の仕業だろう。アービシアを討伐するのに協力してくれるのか……逆に止めようとしてるのか……。どの道危害を加えられることはないし戻ってくるまで待てばいいと思う。
カトレアちゃんと二人でまったりとしているとレオナのヴィヴィが帰ってきた。
「おかえりなさい。何か貰え……それは!」
ん? レオナが持ってる物はもしかして? ずいぶん前に無くした私のハンカチでは?
「ありがとう! 遺跡に落としてたんだね!」
「い、いえっ! サクラ様のお役に立てて光栄ですっ!」
なんで頬擦りしていたのか、どこで見つけたのか、聞きたい事は多々あるけど元々お気に入りのハンカチが返ってきたことに比べたら些細なことだね。
「手触りが良くて気に入ってたんだ!」
「戻ってきてよかったわね。お気に入りだったんでしょう? そのハンカチ」
懐かしのハンカチの感触を懐かしんでいるとカトレアちゃんが声をかけてきた。小さいころに蚕の魔物を倒して手に入れた絹で作ったのが懐かしい。
「サクラ。ママからの伝言よ。ジークに気を付けてって」
「そっか。じゃあ大切な情報が抜けてたのはわざとなんだね」
「ええ、ブルーム王国内の情報もどこまで正しいかわからないわ」
どこまでの情報を信じていいのか……。本当の情報が混ざっていることも分かっているし、しっかりと精査する必要があるね。
「考えてもしかたないわ。早く向かいましょう」
「チコやミーヤ達とも早く会いたいね!」
みんなは元気にしてるかな? 民には被害がないと聞いてるし何事もないといいのだけど……。
―――
心配しつつも王都に入る。よかった。前に来た時と変わってない。
「待って、ちょっと変よ」
「そうかな?」
改めて周りを確認するも。違和感は何一つない平和な王都だ。
「分かったわ。平和すぎるのよ」
「アービシアは水面下で動いてるって話だし普通のことでは?」
カトレアちゃんが何かに気付いたように手をポンとたたく。得意気な顔も可愛いね。うへへ。
「いくら水面下とはいえ王族が表に出なくなってから時間が経ってるのよ。それにも関わらず混乱が何もないのは変よ」
「なるほど」
ちょっとテンション上がってるカトレアちゃんが可愛い。うへへ。
「何か様子がおかしいわね。……もとから変だったけど加速してるわ」
「むぅ、カトレアがつれない。そんなカトレアも好きだけど」
あれ? カトレアちゃんってこんなに魅力的だったっけ? 見てるだけで胸がどきどきしてくるよ。
「見せつけないでくれるかしら? 奪っちゃいたくなっちゃうわよ」
……あれ? レオナもすごく魅力的に見える……。それに色気が凄くて刺激が……。か、体が火照ってくるよ。
「なんでお人形さんみたいなの? 閉じ込めたくなっちゃうじゃない」
舌なめずりするレオナにドキッとする。一体私はどうしたんだろう……。
「よく見るとレオナも可愛くて奇麗だね。なんでこの魅力に気付いてなかったんだろう?」
胸のどきどきが止まらない。レオナに近寄って顔を…………。いたっ!
「サクラ? 私の前で浮気かしら? いい度胸してるわね」
カトレアちゃんが思いっきり腕を掴んでくる。やばい、思いっきり迫られてる感じがして興奮しちゃう。
「ちょっと! 鼻血が出てるわよ!? なに人を見ていやらしい想像してるのよ」
「痛い痛い。強く掴みすぎ」
「ご、ごめんなさい。そんなつもりはなかったのよ」
「いいよ。気を付けてね」
「ずいぶんと見せつけてくれるわね。……こうなったら幽閉してしまおうかしら」
みんな私のことを想ってくれてる? ふへへ。ここは桃源郷かな?
「はぁ。ママの心配が当たったわね」
「いたっ」
「きゃっ」
「何するのよ!」
ため息をついたヴィヴィが私たちの頭を順にひっぱたく。……あれ?
「我に返ったわね」
「あれ? わたし?」
さきほどまでの痴態を思い出して顔が真っ赤になる。は、はずかしい……。
ちらりと二人を見ると二人も顔が赤くなっている。三人して変なことになってたのか……。
「念のためにママの力を借りていてよかったわ。サクラが作ったお守りに力を移しておいたわよ」
呪いの対抗策として用意したのに効いてなかった?
「いえ、効果はあったみたいよ。本来であればもっといろんな感情に振り回されるはずだったの」
「いろんな感情?」
「ええ、強欲、嫉妬、怠惰、憤怒、傲慢、色欲、暴食。すべての大罪にかかわる感情を増幅させて仲間割れをさせようとしていたみたいね」
七つの大罪の感情に支配される……か、あれ? いろいろと変じゃない?
「強力な分、対象にできる数が限られているみたいなのよ。それとお守りのおかげで全てではなく一つの感情に抑制されてるわ」
「そっか。でも悔しいな」
「ふふふ。本来であれば人には決してできないことをやったのよ。誇っていいわ」
褒められてもな……。これから戦う相手よりも劣ってると言われてるみたいで……。
「しっかりしなさい! 最後に勝てばいいの! 弱気になるんじゃないわよ!」
「カトレア……。うん。そうだね」
自分の頬を張って気合を入れなおす。こうなるとみんなの様子が気になるな。
次話は明日の17時投稿予定です
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