230話 こい<レオナ視点>
アフターシナリオ ~魔国編~ 最終話です!
補足情報まとめも同時投稿しています! ぜひそちらもお読みください!
皆様ごきげんよう。私はレオナ。サクラ様の愛人候補よ。様付けすると本気で嫌がれるから普段は呼び捨てで呼んでるわ。
初めてサクラ様に会った時は衝撃だったわ。頭が固く口うるさいお父様が嫌になって外の国を見る為に家出をして、気まぐれに寄ったとある学園のお祭り。そこで初めて可憐な乙女を見かけたのよ。男も女も関係なく魅了する雰囲気を持った彼女を一目見て気に入っちゃったわ。
その後しばらくか弱い乙女は守らなくては……とサクラ様を見守っていたけど(断じてストーカーじゃないわ。サクラ様は気付いた上で見逃してくれていたもの。同意ってことよね)、そこで知ったのは可憐な乙女の皮を被ったナニカだったということ。未だにナニカは理解出来ていないけど愛の前には些細なことよね!
私がサクラ様を好きになったと言えばあれね。スタンピードを制圧した時の凛々しいお姿! 可愛い乙女がめちゃくちゃカッコよくて強いなんて最強じゃない? 最強よね? 異論は認めないわ!
聞き耳を立てて……こほん、風の噂でサクラ様が世界を旅したがっていると話を聞いた時はとても焦ったわ。当時の魔国にサクラ様が行くとガッカリさせてしまうと! 正直魔族達がサクラ様をどうにかできると思っていなかったし、喧嘩を売って滅ぼされるだけかなとも思ったのだけど、そんなことになったら魔国を観光することを楽しみにしていたサクラ様がガッカリしてしまう。そんなことは絶対に許されないから泣く泣くサクラ様の元を離れて魔国を矯正したのよ。
その後ヴィヴィから話を聞いてサクラ様の役に立てる! と思って張り切って挑んだのが今私達の後ろにある遺跡……正確には最奥の試練よ。残念ながら当時は報酬が貰えなかったけどね。
とまあ、なんでそんな話をしていたのかと言うと私は今ヴィヴィと二人で遺跡の最奥にいるからよ。入った邪魔を処理してこれからサクラ様とデートだったはずなのになんでこんなことになっているのかしら。
「もうちょっとコッチに気を向けてくれてもいいんじゃないかしら?」
「サクラから引き離したママが悪いわ」
「私もサクラちゃんと久々に会いたかったわね。でも残念ながらここではもう会えないのよ」
私のパートナーであるヴィヴィと創造神の……オリ、オ、オリディア様? が仲良く話をしているわね。で、なんで私とサクラ様の仲を引き裂いたのかしら?
「ヴィーちゃん。私睨まれてるのだけどどうしてかしら?」
「サクラから引き離したからよ」
「……サクラちゃんも難儀ねぇ」
ため息をついていてもオリディア様は綺麗ね。サクラ様はこんな人が好みだったりするのかしら?
「レオナちゃん。いいかしら」
私ももっと自分磨きをしないといけないわね。サクラ様から聞いたあの方法を試してみましょう。うふふ。
「レオナちゃんっ! ちょっといいかしらっ!」
「なにかしら?」
考え事をしていたのにオリディア様の大声で気がそれる。なんで邪魔するのかしら。……もしやライバル?
「ものすごく誤解されてるみたいだから言うけど邪魔したわけでもサクラちゃんに恋愛感情をもってるわけでもないわよ」
「そうなのね」
ライバルになりえないのならどうでもいいわ。サクラ様の味方みたいだし。
「ヴィーちゃんヴィーちゃん。レオナちゃんはもう少し私に興味を持っていいと思うの」
「ママ。諦めて。今のレオナに声は届かないわよ。……せめてサクラが近くにいれば普通に戻るんだけど」
「そう……。サクラちゃんのためにもなる情報をあげようと思っていたけど要らないみたいね」
「それならさっさと言いなさい!」
なんで出会い頭に教えてくれなかったのかしら? 最初に聞いていれば今頃サクラに教えられたのに。
「食いつきが凄いわね。というか私の事を蔑ろにしすぎて不敬よ。その程度で怒ったりしないけど……」
「ふんっ。サクラ様に比べたら創造神なんて毛虫みたいなものでしょ」
「いいすぎじゃないかしら……。流石にショックよ」
ショックを受けてるみたいだけど早く話してくれないかしら。
「まあいいわ。えっとね。ジークちゃんに気を付けて」
「っ! わかったわ」
私には良く分からなかったけどヴィヴィには心当たりがあるみたいね。じゃあサクラ様も把握しているのかしら。
「それだけよ。試練の報酬は今の情報でいいかしら」
「けち臭いわね」
「……まあそうなるわよね。じゃあ特別にこれをあげる。好きに使っていいわよ」
オリディア様が懐から何かを取り出す。これは? ……手触りはすべすべね。絹でできた布かしら? な、ナニに使えっていうの……。
「サクラちゃんが無くしたものよ。ちなみに洗濯してないわ」
「なんですって!? じゃあこれは……」
さ、サクラ様が使用済みの……。ごくり。この布にサクラ様が触れていたのね……。
「サクラちゃんはそれの存在について忘れているわ。レオナちゃんがサクラちゃんに返して感謝されるもよし。隠してこっそりと……神としてこれ以上は言えないわね」
オリディア様が悪い顔をして笑う。……あなたが神か! いえ、やってることは悪魔みたいだけど私にとっては神様よ! この布は我が家の家宝にしましょう!!
「じゃあサクラちゃん達の場所に戻すわね。サクラちゃんによろしくね~!」
手触りの良い布に頬擦りしているとオリディア様の力で元居た場所に戻される。
「おかえりなさい。何か貰え……それは!」
しまった! 見つかったわ! ど、どどどどうしましょう……私が変態だと思われてしまうわ。
「ありがとう! 遺跡に落としてたんだね!」
「い、いえっ! サクラ様のお役に立てて光栄ですっ!」
サクラ様が私の手をギュって! ギュって握ってくれたわ! もう手を洗わないようにしましょう!
「手触りが良くて気に入ってたんだ!」
サクラ様が私から布を受け取って喜ぶ。あぁ、私の家宝が……。
「戻ってきてよかったわね。お気に入りだったんでしょう? そのハンカチ」
あぁ、ご無体な……。ま、まあサクラ様が喜んでるならそれでいいのよ。それでいいのよ!! ううぅぅ。
―――
<レオン視点>
ジークからブルーム王国がアービシアに侵略されていると聞いてから数日後、俺たちはブルーム王国にやってきていた。またここに来るとはな。
「妖精族のおかげで予定よりも早くついたな」
「ああ、まさか手伝ってもらえるとは思えなかった」
昔とは違って妖精族はめったに人前に姿を現さない。それなのに移動しようとしていた俺たちの前に現れて空の魔法でブルーム王国の近くまで転移させてもらえたんだ。
妨害があったらしく直接中に入れなかったが海を渡ることを考えると十分ありがたいな。
ジークには到着まで時間がかかるって言ったがここまで来たなら直接会いに行ったほうが早いか。
「どこから潜入する?」
「そうだな。ライアスは正面から堂々と入ってくれ。その間に俺が隠れてどこか適当な窓から潜入するさ」
姿も消せて空も飛べる俺一人の方が楽に潜入できるからな。それにライアスならいやでも目を引くしちょうどいい役割分担だろう。
「了解。陽動だな?」
「いやいや、アービシアは秘密裡に進行してるみたいだからな。友好国のライアスは無下にできないだろ。暴れなくとも十分引き付けられるはずだ」
作戦を共有しつつ王都を横切る。ん? 王都の様子がおかしいような? いや、良く分からんな。
二手に分かれて潜入作戦を決行する。
ライアスが城門で門番と話すと早速城の中が騒がしくなる。よし、今がチャンスだな。
二階の窓から入ってジークを探す。気配は……こっちか。
廊下を横切って地下へと潜る。もしかして捕まってるのか?
「ジーク! 大丈夫か! っ!?」
「ライアス? どうしてここにいるの? 到着するのはまだ先だと聞いていたんだよ?」
地下牢の扉を壊して中に入ると鎖に繋がれたシルビアや国王一家を前に立っているジークとアービシアの姿が目に入る。
「ジーク! 加勢する!」
ジークの前に出てアービシアに攻撃を……。ぐっ!?
「な、なんで……」
「くっくっく。なんでも何もジークはこちら側だ」
後ろから殴られた衝撃で意識が遠のきつつもジークを見る。
「余計なことをしたらもっと自由でいられたの。残念なんだよ?」
いつもと同じ口調なのにどこか狂気が感じられる口調で話すジークの声を聴きながら俺の意識は暗転していった。
本編次話は明日の17時投稿予定です
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