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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~魔国編~
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229話 懐かしの場所

 ゴーレムを作り終えてから一週間後、私ことサクラ・トレイルは未だに魔国の城の中にいた。


 魔族達にゴーレムを渡したら神像だと拝み出したり魔力を込めるのを頑張りすぎて倒れる人が続出したりと慌ただしい一週間だったけどやれることはやりきれたと思う。


 カトレアちゃんの特訓にも度々混ざったけど顔を出す度に闇魔法の扱い方や杖術が飛躍的に上達していて驚かされた。


 今はゲートを開いてブルーム王国に奇襲をする準備をしている。いざ鎌倉!


「ゲート! …………あれ?」


 ゲートを開くも通ることができない。もしかしてブルーム王国内に転移出来なくなってる?


「ダメみたいね」

「空飛んでいくしか無いわよ」

「せめてブルーム王国に一番近いポイントに飛ぶことにするよ」


 ニヤついた顔の二人がからかってくるけど全力でスルーする。実はゴーレム達を防衛位置に設置してから一週間、毎日のようにお供え物が置かれているのだ。

 カトレアちゃんの特訓に外に出たレオナが気付いてからは毎晩回収して私の元にお供え物を持ってきている。おかげで二割がた素材が戻ってきたけど私が勝手に作っただけだから申し訳ない気持ちでいっぱいだ。それを言ったら魔族達も好きで供えてるだけだから黙って受け取れと怒られちゃったけどね。……たまに明らかにレオナからだと分かる妖しい物が混ざっているからそれは突き返している。

 今出ていけば盛大に見送られるのが想像できるから城から直接飛ぼうとしてるんだよね。


 どこか生きてるゲートは無いかな? 何ヶ所か接続を試してみると、真実の遺跡に置いていたゲートに繋がった。


「よし、繋がったよ」

「えー」

「えーじゃないよ……」


 なんでそんなガッカリした顔をするのさ。もしかしてレオナってちやほやされたい人?


「勘違いしてそうだから言っておくけど私がちやほやされたいんじゃなくてサクラがちやほやされて戸惑ってるのを見たいのよ」

「いやいや、余計にタチが悪いわ!」


 そんなに嫌われて……はないな。うん。でも私が戸惑ってるの見ても面白くないのに。


「サクラの色んな表情を見れるのは至福なのよ? ね、カトレア」

「サクラが嫌がることで喜ばないわ」


 苦虫を噛み潰したような表情でカトレアちゃんが否定する。なんでその表情なの?


「そうねえ、サクラだってカトレアが困った顔してたらずっと見ていたいでしょう?」


 カトレアちゃんの困った顔? …………絶対可愛いやつ。


「見たい! いたっ」


 ちょっと悩んでから断言したらカトレアちゃんに尻尾ではたかれた。カトレアちゃんの顔を見るとちょっと膨れている。照れるなんて愛いやつめ。


「馬鹿なことしてないで行くわよ」


 呆れ顔のヴィヴィに急かされてゲートを潜る。



 ずいぶんと久々にやって来た。いろいろあったこの遺跡だけど最後に来てからもう十年以上経っている。私も前より強くなれたよね。



 今回はこの場所に用があったわけではないけれど……。

 セレス、しっかりとこの世界を守りきるからね! オリディア様も力を貸してください!


「もしかしてこの場所が?」

「うん。アービシアと戦ったりセレスと戦ったりした場所だよ。オリディア様と初めて会ったのはもう少し奥だけど、セレスが旅立った場所もそっちの部屋」


 カトレアちゃんはここに来たことが無かったか。レオナ達は……


「私達は来たことあるわよ。一年くらいかけて試練も突破したわ。まあ無駄骨だったけどね」

「ええ? 何をお願いしたの?」

「あら、乙女の秘密を知ろうとするなんてサクラはムッツリさんみたいね」

「秘密なら言わなくていいよ」


 思わずジト目になる。でもオリディア様が叶えられない願い事ってどんなわがまま言ったんだろう。ヴィヴィはレオナを見てため息を吐いてるけどどうしたのかな?


「サクラが気にすることじゃないわ。ここを出てブルーム王国へ行きましょう」

「うん」


 過去を懐かしみながら遺跡の外に出る。うん、外の森も懐かしい……ね!?


「総員警戒!」

「おお! 本当に来た」


 どうやら私達がゲートで遺跡まで飛んで来るのを予想されていたらしい。一体の魔物がお出迎えだ。


「情報を流される前に押し通る」

「うはっ。もう手遅れさ。残念だったな」


 さっさと対処しようとすると不敵に笑われた。念話持ち? いや、何かを伝えた感覚は無い。


「私に任せなさい」


 レオナが前に出て攻撃を仕掛ける。この魔物は知能があるけど戦闘力は低い。レオナ一人に任せても直ぐに片付くだろう。…………いや、ちょっと待てよ?


「レオナ!」

「分かってる、生け捕りにするわ」


 さすがレオナ。そこまで読んで前に出たのか。


 案の定あっさりと無力化するとレオナの目が妖しく光る。


「さて、あなたの知ってることを洗いざらい吐いてもらうわ」

「俺が知ってることはないさ。でもそうだね。アービシアはすでにレオナ様が来たことに気付いているよ」


 魅了の魔法か。縛りは厳しいみたいだけどこういう時強力だね。


「なんでアービシアは気付いたのかしら?」

「俺は戦闘態勢に入るまでずっとアービシアに合図を出していた。レオナ様が来て合図を出すのをやめたからアービシアは気付いてるはずさ」


 なるほど、その方法なら待っている時間が長ければ魔力がきつくなるかもしれないけどほぼ確実に報せを出せるね。


「ちょっと寝ちゃっただけとか言い訳できないの?」

「無理だね。魔道具を使って通信しているんだ。俺が寝ていようと気絶してようと関係ない」

「魔道具の故障だとは言えないの?」

「残念ながら。壊れるのは魔力に触れた時だけだ。それが理由で俺が見張り番に選ばれたしな」


 魔力に触れる? つまり私の魔力感知に触れて反応したのか。でも……。


「ああ、うっかり魔力を出しちまうこともあるわな。でも俺は生まれつき魔力を扱えない体質でな。自分で言うことじゃないが弱かったろ?」

「それで選ばれたのね」

「そういうこった」


 こっそり侵入するってのは難しくなったか。でも問題ないよね。そもそもバレる前提(・・・・・)で動いていたんだから!

次話は明日の17時投稿予定です


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