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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~魔国編~
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226話 色欲の欠片

 コハルちゃんと二人、私の夢に立つのは私ことサクラ・トレイルである。夢の世界の戦いってどうなるんだろう。


 ぼーっとしているバクに先制して攻撃を仕掛ける。


「ファイアーぼががっ」


 魔法を打とうとしたらコハルちゃんに邪魔された。なんで?


「魔法や身体を動かす攻撃はやめた方が良かろう」

「どうして?」

「現実の身体が夢と同じ動きをしていたらどうするのじゃ。城が吹き飛ぶ」


 なるほどね。その可能性はゼロじゃない。可能性がある以上気をつけるべきか。


「じゃあどうやって攻撃すれば?」

「基本的には妾が動くしかなかろう」


 む、そうなるのか……。娘一人に任せて私が動かないの気が引けるな。


 私がどうしようか考えている間にコハルちゃんが色欲の欠片に突っ込んでいく。だけどバクとの距離が縮まらない。……見ていて脳がバグりそうだ。


「ぬぅ? サクラ、どうなっていたか分かるかの?」


 コハルちゃんは一度諦めて私の元に戻ってくる。


「分からなかったよ。前に進んでるのに距離は縮まってなかったかな」


 まるで目の錯覚を使った模様を見ているみたいだったね。魔力感知で集中して確認してみる?


 …………だめだ使えない。いや、ちゃんと機能はするけど現実の情報が入ってくる。膝枕をしつつ介抱してくれているカトレアちゃんと狐の姿になって私の上で寝てるコハルちゃん。それから外から干渉できないか試しているヴィヴィと私の顔を真横から眺めて涎を垂らしているレオナ。…………レオナは何やってるの? あ、カトレアちゃんがレオナを引っぱたいた。見なかったことにしよう。


「何か分かったかの?」

「うん? レオナが変態かもしれないね」

「そんな今更なことを知りたいわけではないわ!」

「ご、ごめんよ」


 怒られちゃった。うーん。あっ! ちょっと試してみよう。


 魔力感知をしつつ手を(バク)に向けて魔力を込める。……よし、現実には動きが反映されないみたいだ。念の為弱めに魔力を放って平気かどうか確かめる。夢の世界ではバクに美味しく頂かれたけど現実では何も起きていないみたい。


 さすがに魔力感知で把握してる事まで夢だとは言わないよね? そこまで疑う必要が出てくると全く動けなくなっちゃうよ。


「コハル、私も動いて問題無さそうだよ」

「それは良い事じゃ。助かるぞ」


 もしも現実に反映したらごめんと心の中でレオナに謝りつつ氷の槍を大量に発生させる。うん、もし火の魔法が反映されて城が燃えたらシャレにならないからね。……氷で半壊しても同じだって? いいの! 気分の問題だから!


 私の放った氷の槍はバクの近くで一旦止まり、一つに纏まってアイスキャンディーになった。なんで!? 私達が驚いている間にバクがアイスキャンディーを食べてしまう。


「……夢の中だからなんでもありってこと?」

「もしかしたらそれが権能なのかもしれぬのう」


 色欲の大罪(アスモデウス)のスキルは支配に近いとオリディア様が言っていたね。魅了できるのは人だけじゃなかったとは……。そういえば魅了できる人は格下だけだったね。であればきっと魔法も同じかな。


「どちらにしろ普通の魔法は効かないみたいだね」

「うむ。どうするつもりなのじゃ?」

「イメージで対処してみる」

「む?」


 小首を傾げるコハルちゃんも可愛いな。ほっこりしつつも魔素の支配(ニブルヘイム・真)で私の夢に干渉する。うっ、なんかゾワゾワするよ。


 その後、目を瞑って夢全体に散らばっていた色欲の欠片を一箇所に集めた時のようにバクが傷を負ったイメージを浮かべる。


「ぴぃー」


 鳴いた!? 驚いて目を開けるとイメージした通りに負傷したバクが転がっていた。しかし数秒後には治ってしまう。


「イメージ勝負ってとこかな?」

「妾の出番がないのう」

「いや、恐らくイタチごっこになるから止めをお願いしたいかな」

「任せるのじゃ」


 簡単に作戦を練ってからバクと戦い始める。

 イメージするのは植物。セレスが使っていた植物をイメージする。


 蔦状の植物が色欲の大罪に襲いかかる。やっぱりバクの手前で止まるね。これは恐らく……。


「ぴい」


 蔦がバクの後ろ足を引っ掛ける。いい感じだ。


「空間を繋げておるのか?」

「うん。コハルが近付けなかったのも蔦が届かなかったのもバクが空間を拡張し続けるイメージをしていたからだと思ってね。バクが干渉している空間を避けて攻撃してみたの」


 なんでもありになった時のイメージ勝負ならこの世界しか知らない向こうよりも私の方が有利……のはずだ。


 転んだバクに向かって植物からレーザーを放つ。これが当たればバクは弱まる(・・・)


「避けて!」


 嫌な予感がしてコハルちゃんに指示を出す。転がったままのバクの口から私が出したものと同じ(・・)レーザーが発射された。起き上がろうとじたばたしているせいでレーザーがあちらこちらに飛び交っている。


 レーザーを打つために用意した植物も先に弱らされて使い物にならなくなる。レーザーを避けている間にバクが立ち上がり前脚で地団駄を踏む。そこを起点として空間が割れて……。漆黒の闇が中に見える。中に入ったら消滅しそう……。


 地割れが反乱してバクを呑み込むイメージを思い浮かべる。割れ目に牙を持たせてパクリ。


 となる前に花へと変化して光始める。互いのイメージが干渉し合って景色が次々と変わっていく。


 天が落ち、火山が噴火して海ができ、海から宇宙が発生する。ハチャメチャな世界が造られていく。


 空間が割れたり巨大化したり、分身が出てきたりとなんでもありの戦いが続いていく中で最初に出した蔦の葉にバクが触れた。


「今!」

「うむ!」


 私の声に合わせて葉が変形して狐の形になるとその手がバクに触れた。


「ピュイィィ」


 そのままバクが消滅してコハルちゃんが人の姿に戻る。


「先に戻るのじゃ! サクラも早く起きるのだぞ?」


 色欲の欠片が消えたことで夢と現実の境界が無くなっていく。コハルちゃんがしっかりと逃げ出したことを確認してから私は目を覚ました。

次話は明日の17時投稿予定です


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