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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~魔国編~
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223話 魔落ち

 グリフスからある程度の情報を得た。……残念ながら今欲しい情報は無かったけど有用な情報はあったと思う。


「セレス()昔から人たらしなのね」

「今の話を聞いてその感想なの?」


 しかも他にも人たらしがいるみたいな言い方だね。なんで私を見るの? 納得いかないんだけど!?


「こほん。次が本命だね。と、その前に……」

「私を呼んだのかしら?」

「うん。ケアードに話を聞くから付き添って欲しいんだ」


 ケアードはレオナの知り合いらしいしいた方が情報を得られる可能性が増えそうだよね。


「お父様ね……。なんで生きているのかしら」

「アービシアの呪いかもよ。グリフスが生きていたのも呪いの効果で生き返ったらしいし」

「へえ? ずいぶんと迷惑な呪いがあるのね」


 人によっては死んでも生き返ることに魅力を感じることもありそうだけどレオナは一笑した。興味ないのかな?


「起きなさい」

「ぐふっ。……ここは……どこだ?」


 レオナがケアードのお腹を蹴り飛ばして目を覚まさせる。おおう、痛そうだ。


「お父様。アービシアについての情報を洗いざらい吐いてもらうわよ?」

「ぐ、レオナードか。人類と仲良くしようとする貴様に話すことは何もない」

「またぶち殺してあげてもいいのよ?」

「はっはっは。殺せていないから私が生きているのだ。できない事を言うんじゃない。ぐふっ」


 流石に親子の情は無かったか。というかむしろ険悪? レオナも父親のお腹に穴を開けるんじゃないよ。


「あなたが生きているのは呪いの効果でしょう? お父様? 自分の力でもないのに自慢気に話すなんて元王様ともあろうお方が堕ちたものね」

「ふんっ。人なんぞと手を組んだ貴様ほどではないわ! 恥知らずめ! ぐはっ」


 ケアードが私を見て鼻で笑う。ただその態度がレオナの琴線に触れたみたいでレオナの目が吊り上がる。あー、嫌な予感。


「誰と組むのが恥ですって? 殺すわよ?」

「待って待って! 殺しちゃダメ!」


 ケアードの両手を切り落としてなおも追撃しようとするレオナを慌てて止める。まだ情報吐いてもらってないよ!


「もう、こんな奴に頼るのは止めましょう。サクラの耳が腐るわ」

「まあまあレオナ。腐らないから大丈夫だよ。で、ケアード。話を聞かせてもらうよ」

「ふんっ。貴様のような愚図に話す情報は無いわ! 死ね――」


 ケアードは攻撃してこようとして拘束に引っかかる。何を驚いた表情をしてるのかな?


「なぜ人間なんぞの拘束が効くのだ……。ふんっ。なら魔法で……使えないだと!?」

「お父様如きがサクラに敵うわけないじゃない。耄碌(もうろく)したわね」


 親子で仲良くしてないで話を進めようよ……。それになんでレオナがドヤ顔してるのさ。


「二人ともそれくらいにして」

「はいっ!」


 手を叩くとレオナが良い返事をする。返事だけじゃないといいな……。


「さてお父様。アービシアのこれからの狙い。配下、軍の構成などあらいざらい吐いてもらうわよ」

「誰が吐くか……。裏切り者め。我ら神から見放された種族はアービシア様について行くしか生きる道はないというのに……」


 ふうん? オリディア様が魔族を見放したと思ってるんだ。それにしても種族の特性は厄介だね。魔法が使えないはずなのに腹に空いた穴もすでに治ってる。


「愚かね。オリディア様が魔族を嫌っていたら私にヴィヴィが付くわけないじゃない」

「だが、そのオリディア様とやらは我らに何をした! 何もしなかっただろう!」


 この人は何を言ってるんだろう……。神が何もしないのは当然のことなのに。


「いい? 神は感謝するものであって頼るものではないのよ? 自力でなんとかしようともせずに他人に縋る。なんて恥ずかしい生き方なのかしら」

「う、うるさいうるさいうるさいうるさい! 苦労も知らない小娘が! 娘といえども許さんぞ」

「そもそもお父様に許されなきゃいけないことなんて何一つないわ」


 口論ばかりで話が聞けない。レオナを連れてきたのは失敗だったかな?


「サクラ」

「なに?」

「聖属性の魔法を使ってくれる? 魔物が嫌う結界でいいわ」

「うぃ」

「サンクチュアリ」

「ぐぅ!?」


 あれ? 弱い結界なのにケアードが苦しみ始めた。対魔物の結界であって魔族には効かないはずなんだけどな?


「さてお父様。なんで魔族の私にこの結界が効かないのにお父様には効くのか分かるかしら?」

「そこの小娘がそう操作してるか――」


 私の事を小娘と言ったアービシアの腹に再度穴が開く。傷が治るとはいえ懲りないね。


「そんなことしてないのは分かっているでしょう? 理由は一つ。私は人族、オリディア様の味方だから効果がない。でもあなたはアービシアの配下になったから神敵扱いされた。つまりあなたは魔の者なのよ」


 だいぶ暴論の気がするけど本当かな? あれ? 傷が治ってない?


「その再生力のおかげで強気だったみたいだけど今なら素直になってくれるかしら?」


 サンクチュアリの副次的な効果? そんなの知らないよ?


「私が王になってから魔族の中で稀に狂暴化する人が出て来てね。いろいろと調べてみたのよ。魔族が魔物化する事を魔落ちということにしたわ」


 ふむふむ。元からいたんじゃないんだね。


「なんで魔物化するようになったの?」

「昔は魔王を信仰していたでしょう? 言い方はともかく魔王の正体は神霊(セレス)様だったから魔落ちすることがなかったのよ。でも今は信仰対象がいないのよ。それで今までと同じように暴れまわってる人の何人かが魔落ちするようになったの。元からよく暴れている連中だったんだけど手が付けられなくなってね。仕方なく処分したら魔石が取れたから調べてみたわけ」


 その何人かはアービシアにそそのかされた? 先王も魔落ちしていたみたいだしすでに侵略が始まっていたわけか。レオナがいて良かった。

次話は明日の17時投稿予定です


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