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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~地底公国編~
221/292

212話 原因

 マティナに呼び出されて山頂に来たのは私ことサクラ・トレイルである。呼び出した張本人は人知を超えたお肉を食べてるね。


「なんの話があるの?」


 マティナが真っ赤な何かを食べ終えたのを見届けてから改めて声をかける。


「ありがとう」


 なんのこと? 紡織の欠片を倒したことかな?


「ラティが喜んでたの」


 珍しい素材に出会えたから……じゃなくてジャックさんとの壁が無くなったことだよね?


「私は何もしてないよ。マティナとラティナ、それからジャックさんが歩み寄っただけ」

「それでもきっかけをくれたのはサクラ」

「そっか」

「…………」

「…………」


 あれ? 用がそれだけなら客室から出てきた意味無いんじゃない?


「えっと、なんで山頂に呼んだの?」


 今のは前置きでこれから本題だよね? と念を込めて聞くとマティナは首を傾げた。そして懐から巨大な骨付き肉を取り出して……。


「待て待て、今どこから取り出したの?」

「? アイテムボックス」


 そうか、アイテムボックスか。転生者特典だと思っていたけど神霊の契約者なら使えるのか。


「それ一人で全部食べるの?」

「もちろん……?」


 キョトンとした顔で再度首を傾げた。お肉の方がマティナよりも大きいんですが? あれ? 私がおかしい?


「いやぁ、サクちゃんキャパってるね」

「ルディ?」

「サクちゃんは普通っしょ。マティナが変なだけ」

「お、おう」


 ルディが少し遠い目をした。SDSで大食いだったはずのルディですら引く程の食欲……。マティナ怖い。


「で、今回ここに呼んだのはウチだよ」

「どうしたの?」

「あれれ? ホントに心当たりないのかな?」


 突然ルディの雰囲気が変わって気圧される。心当たりってなんの?


「ありゃ? ホントにハズレか。ごめんプー」


 よく分からなくて頭にはてなマークを浮かべていたらルディの雰囲気が元に戻った。さっきのが本性だったりするの? ルディ怖い。


「そんなサクちゃんに悪いニュースともっと悪いニュースがあります。悪いニュースから言うね」

「選択肢は与えられないんだね……」

「モチのロン!」


 あー、良い笑顔だなー。嫌な予感がするよ。


「サクちゃんが通った非常口。実は非常口ではありませんでした!」

「え?」


 懇切丁寧に看板までかけられていたのに? 非常口って書いてあったよ?


「実は非常口だったのはずっと昔の事だったんょ。今は封印の祠にだったんだよねー。やばば」

「へえ、封印のほ……こら?」


 もしかしなくても怠惰の欠片が暴れだしたのって私のせいだった?


「ピンポンピンポンだいせーかーい! ま、尻拭いはサクちゃん自身でしてくれたから責めるつもりはないけどね!」

「ならなんで話題に出したの」

「ワザとかもしれないでしょ?」


 その唐突に雰囲気変えるのやめて! 怖いから!


「ん? わざわざ倒すならメリット無いじゃん」

「マッチポンプかなーて思ったんょ。ジャックやマティナが断れないように」

「もしくは仕留めるために?」

「あーね。その可能性もあったかにゃー」


 どの道私がわざとじゃないと理解を得られたならなにより。それでも何か補填した方が良さそうだな。余ったオリハルコンでも寄付をする? あ……。


「マティナ、昨日暴食の欠片から回収した鉱石を渡しておくね。私には偉い人とのコネ無いし」

「……んくっ。分かったの。まかせて」


 口に頬張っていた果物を飲み込んでから返事をするマティナ。いつの間にあのお肉を食べきったんだ……。


 本来なら元の持ち主に直接返した方が良いと思うけど残念ながらどの鉱石が誰の物か分からない。名前も書いてないしね。そうなると一番のお偉いさんに配分してもらうのが後腐れ無いと思うんだよね。

 思った通りマティナにはお偉いさんとのコネがあるみたい。さすがドワーフ一の鍛冶師の娘で神霊の契約者だね。


 私がその場に回収していた鉱石を片っ端から出し、鉱石が積み上がる前にマティナがアイテムボックスに回収する。掃除機みたいで面白いな。


「おつかれー。テラ多くてヤバたんやん」

「少しお詫び用に私が持ってた鉱石(オリハルコン)も渡しておいたよ」

「ありがとう。でも美味しそうな匂いの方が気になったの」

「まだお腹空いてるの!?」


 アイテムボックスの中には魚料理もいくつか入ってるけど……。少しくらいなら渡してもいいかな。


「はい。これ。こっちが味噌煮でこっちが竜田揚げ、そしてこれがパエリヤだよ」


 せっかくだから持ち運び用の机と一緒に料理をだす。この山(ドワーフの国)は海から遠くて海の幸とは縁が無いらしくルディも興味を持ったようだ。マティナは涎が垂れてるよ。


「食べていい?」

「量は少ないけどね。ルディにも少し分けてあげて」

「……………………ん」


 めっちゃ悩んだな。あれだけ食べてたのに独り占めするつもりだっだのか……。

 ルディが少し分けて貰おうと箸を持つとマティナが泣きそうになる。……もう何も言うまい。


「ウチは一口でオケよ。だから泣きそうな顔しないで」


 ルディは慌ててあやすも好奇心には逆らえないらしく一口分だけ確保した。だからなんでその量で絶望顔するの!? 誤差だよ誤差!


「わぁ美味ぽよ! これが……海!」


 申し訳なさそうにしつつも一口食べて笑顔になるルディ。でもただの素人料理でそんな壮大なものじゃないよ?


「幸せ」


 マティナも料理を食べて笑顔に戻る。ルディが一口食べるまでにマティナが一品食べ終えたことには突っ込まないからね!

次話は明日の17時投稿予定です


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