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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~地底公国編~
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211話 後処理

 ラティナの話を聞き流すこと数時間。解放された頃にはコハルちゃんは夢の中で私も船を漕ぎ始めていた。ラティナ自身はずっと興奮しっぱなしだったけど話したことで少し満足したらしい。私達を置いて鍛冶場に戻って行った。今戻っても鍛冶場とは名ばかりの残骸しか残ってないと思うんだけどな。


 探していた氷華も無事に見つかりラティナが回収して行った。ただ、鉱石喰らい達が食べていた鉱石は量が多すぎてラティナ一人では持ち帰れなかったため私に回収するよう何度も念を押して行ったね。さすがに私もこの惨状をみて放置するほど鬼畜じゃないよ。


「コハル戻ろう」

「石はもう見たくないのじゃ……」


 夢の中でも鉱石を見せられていたらしいコハルちゃんはげっそりしてるからおぶって帰ることにする。


「サクラお疲れ様。災難だったわね」


 坑道から出て街中に戻るとカトレアちゃんが労ってくれた。えへへ。


「カトレアもお疲れ様。コハルのおかげで楽ができたよ」

「ん? ああ、違うわ。ラティナの話」

「そっちね」


 思わず真顔に戻るとカトレアちゃんはそんな私を見て苦笑しつつも再度労ってくれた。できた嫁だ。


 次の日、三人で荒らされた街中を散策する。途中途中、土の魔法や天の魔法で街の修復に協力をしつつ被害状況を見て回るが思ったよりも荒れていない。


「てっきり鉱石喰らいが大量にいたから持っと穴だらけになってるものかと思ってたよ」

「昨日のうちに大きな穴は塞いだみたいね。土いじりは得意なんじゃない?」

「農業みたいな言い方だね」


 それにドワーフが得意なのは槌いじりでしょう……いや、なんでもないです。

 カトレアちゃんの冷たい視線に少しだけゾクゾクしつつ鍛冶場へと向かう。


「既に打ち始めてる人がいるの?」

「ラティナとかとても張り切っていたわよ。恩を返すためにも最高の二振り(・・・)を作るって息巻いてたわ」

「とんでもない物が出来そうで怖いね」


 鍛冶場に到着すると大きな穴でいくつかの鍛冶場が一つに繋がってるのが見て取れる。


「場所取りはどうするんだろう」

「今までと変わっておらんようじゃな」

「ラティナ以外は悪戦苦闘してる?」


 前までは扉が閉められていて中を見ることができなかったけど今は穴のおかげで中が見える。ノリノリで槌を振っているラティナ以外の人達は火の前から移動していない。火力に納得いかないのかな?


「穴を通して他の人の鍛冶場から熱気が来たり逆に外に出て行ったりするせいで火の威力が変化してるようね」

「なんで穴を埋めないの?」

「排煙機構が機能してないからだ」

「ジャックさん!?」


 三人であれやこれや話しているとジャックさんが声をかけてきた。ちょっと憔悴してる?


「俺の目は腐っていた。ドワーフで一番の剣が打てるからと、唯一オリハルコンを扱えるからと、俺が全て正しいと思っていた。だが実際はどうだ。小娘と侮った相手はあんなバケモンを倒す実力者。ラティナだってあんなに楽しそうに刀を打ってやがる……。しかも天才って奴だ」


 ジャックさんの突然の独白に驚きつつも耳を貸す。なんとなく口を挟んだらダメな気がしたんだ。


「すまなかった。俺は一から鍛え直そうと思う。二人と一緒に……。許して貰えたらだがな」


 私達に頭を下げたジャックさんは返事も待たずにラティナの元へと歩いて行った。


「少しは信用して上げてもいいんじゃないかしら?」

「ラティナが許すなら私が怒ることは無いよね」


 ジャックさんがラティナに頭を下げ、ラティナが慌てつつもジャックさんの事を宥めている間、私達は笑いながら二人を見守っていた。


 ―――


「ちょっと! 昨日助けてって視線を出したのになんで無視したの!」

「親子の和解に第三者は不要でしょ」

「ジャックさんも憑き物が取れたような顔してたし良かったじゃない」


 次の日、ラティナが客室に突入してきた。口では文句を言いつつも表情は晴れ晴れとしている。


「コハルちゃーん。二人が冷たいよぅ」

「どさくさに紛れてモフるでない。たわけ」

「コハルちゃんも冷たい」


 ふっふっふ。コハルちゃんは私かカトレアちゃんにしか身体を許さ(モフモフさせ)ないのだ


「サクラもモフり過ぎじゃ。このたわけが!」

「ぴえん」


 私も拒否されてしまった……。こうなると三日近くモフモフさせて貰えなくなるんだよな。悲しい。


「そうだ。サクラさん。マティが呼んでたよ。山頂で待つって」

「了解。今から向かえばいいかな?」

「うん。先に向かってるみたいだから早めに行ってあげて」


 わざわざ山頂に行かなくてもここに来れば良いのに……。もう遅いけどね。


 ラティナに礼を言ってから外に出る。さて、非常口から火口に出ますか!


 ―――


「待ってたの」

「ちょっと待って何それ」


 火口から出て山頂に行くとマティナが真っ赤なうねうねした物を食べていた。辛い通り越して痛そうなやつ。食べたらお腹壊しそう。


「大量発生した鉱石喰らいの激辛仕立て。あげないよ?」

「うん、要らないよ?」


 鉱石喰らいってことはミミズでしょ? 絶対食べたくないわ。食感と辛さのダブルパンチで口に含んだ瞬間気絶しそう。むしろ死ぬる。


「そう。美味しいのに……」

「拷問にしか見えないよ……」


 ちょっと残念そうにしつつも食べ続けるマティナ。私はいつまで待てばいいのかな?

次話は明日の17時投稿予定です


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