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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~地底公国編~
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210話 暴食

 進化した特殊な鉱石喰らいと相対するのは私ことサクラ・トレイルである。叩けば叩くほど強くなるタイプのモグラたたきをやってるよ。氷華が消化される前に倒さないといけないね。


 物理だと倒しきれないみたいだから魔法を使おう。まずは炎から試そうかな。


「ファイアーボール」


 いつものように火の玉を作って鉱石喰らいにぶつける。しかし冷気が邪魔をして攻撃が届かない。


「威力をあげた方が良い? いや、周りの鉱石喰らいも倒しちゃいそうだ」


 全力でやれば倒せそうだけど二次被害が恐ろしいことになりそうだ。氷の魔法も熱気に邪魔されそうだし……。


「サンダーボルト」


 雷魔法でどうだ! もはやミミズではなくゴーレムみたいな見た目になっているけど生物であれば雷は通るはずだ。


 しかし鉱石喰らいは口を開けて私の魔法を食べてしまった。


「魔法を食べるの!?」


 物理攻撃だと修復されて魔法攻撃だと食べられる……。詰んだ?


「もう全力で魔法を放つしか……」


 周りに被害が行かないように注意する必要はあるけど全力で魔法を使うのが一番だろう。脳筋万歳!


 結界を張ってから魔力を練り上げる。


炎熱地獄(インフェルノ)


 辺りが熱と炎に包みこまれる。熱さで露出している岩が結晶化したね。当の鉱石喰らいは……。


「炭になっちゃった?」


 残ったのは真っ黒な炭だ。氷華は? 結界を解いて辺りを探してみるも見つからない。


「うぅ、氷華が……」


 辺りに何も残ってないのを確認してしまう。一人地べたに手をついてると地面が振動し始めた。


「地震?」

「何やってるのじゃ?」


 落下物が無いか辺りを確認してから頭を守るように顔を伏せるとコハルちゃんの声が聞こえてきた。


「え? 地震が起きたら頭を守らないといけないから……」

「サクラの堅さであればその必要はなかろう。たとえ火山弾が当たったとしても無傷じゃろうに」

「おう、気持ちの問題だよ」

「それで、あやつは放置して良いのか?」


 コハルちゃんの声に前を向くとボロボロになりつつも地面に隠れていたらしい進化個体が姿を出していた。


「生きていてくれた!!」

「泣くほど嬉しいのか? あやつは暴食の欠片(・・・・・)じゃぞ?」

「え゛」


 コハルちゃんから衝撃的な言葉が出てきた。今暴食の欠片って言った?


「こほん。鉱石喰らいが進化した個体じゃなかったの?」

「うむ。暴食の欠片が憑依した個体じゃの。他の鉱石喰らいの胃袋もあやつの胃に繋がっているようじゃ」


 なるほど。鉱石を生み出さない個体は変異種じゃなかったのか。倒さなくて良かった。


「魔法を食われたのは暴食の大罪(ベルゼブブ)の権能か」


 暴食の大罪(ベルゼブブ)は食べたものを力に変えるスキルだ。また群体の性質を持つから仲間とした鉱石喰らいと胃を共有しているのだろう。一部とはいえ炎熱地獄(インフェルノ)の魔力を食われたのは痛かったかも。


「心配するな。妾がおる」

「コハル様!」

「やめい!」


 コハルちゃんを崇めようとしたら怒られてしまった。後で飴ちゃんあげよう。


 頼りになるコハルちゃんとともに鉱石喰らい進化個体改め暴食の大罪に向き合う。相手が大罪の欠片なら思いっきりやって問題ないね。さっきと同じように結界をはって……。


「避けるのじゃ!」


 私が炎熱地獄(インフェルノ)の用意をする前に暴食の欠片の口から火が見えた。火を噴くの!?


 咄嗟に炎の壁を張って火を相殺する。熱いね。炎熱地獄(インフェルノ)と同じレベルの威力がある。


「サクラ! 妾があやつの力を吸い取る。近付くために手を貸してほしいのじゃ!」

「任せて!」


 暴食の欠片が放ってくる冷気や熱気を天の魔法でコハルちゃんから逸らし道を拓く。コハルちゃんが近付き手をつくと暴食の大罪は苦しみだした。


「相変わらず対大罪の欠片としての能力が優秀だね」


 触れただけで勝負が決まる様子を見て苦笑する。セレスの魔王化を防ぐのもコハルちゃんさえいれば直ぐに済んだんじゃないかな? いや、既に終わったことを考えても意味ないね。全員無事にいきてるのだから終わりよければすべてよしだ。


「はっ!」


 コハルちゃんが夢幻を取り出して暴食の欠片に斬りかかる。コハルちゃんから逃げようとする暴食の欠片を蹴り上げて中に浮かせるとコハルちゃんが首のあたりを両断した。


 しばらくの間ぴくぴくとしていた暴食の欠片だったが見守っていると体が解けて後には大量の鉱石が残っていた。


「終わったね」

「うむ。らくしょーだったのじゃ」


 ドヤ顔してるコハルちゃんの頭を撫でる。うん、尻尾が嬉しそうにぶんぶん揺れて可愛い。よし、飴ちゃんの他にケーキでもつけてあげよう。


「キャーー!」

「ラティナの悲鳴!?」


 用意するケーキに思いを馳せているとラティナの悲鳴が聞こえてきた。でもどちらかというと……。


「変態じゃの……」

「嬉しい悲鳴みたいだね……」


 声がした方向を見ると怠惰の欠片が残した鉱石に頬擦りしているラティナの姿が目に入る。鉱石バカが加速してるよ……。


「あれ? 安全な場所に避難したんじゃないの?」

「ぬ? ラティナは妾を呼びに来たのじゃぞ? 一緒に戻ってきたのじゃ」

「そっか」


 薄情者って言ってごめん! すばらしい働きだったよ!


「良い鉱石でもあった? ひっ!」


 ラティナに声をかけるとラティナがグリンとこっちを向いた。グリンって聞こえたんだよ! そのまま近付いてきて持っている鉱石について早口で説明し始めた。オタクかな?


「この鉱石は氷炎獄石と言われていて氷炎鉱石をさらに熱く、冷たく温度をかける必要があって人工で作るのが不可能だと言われているものなんだよ! 魔力を込めると熱気や冷気を操れるのはもちろん、武器の材料にすれば気体や魔法も切り裂くことができるようになるんだ! こっちの鉱石は火廣金(ヒヒイロカネ)と呼ばれるものだね! オリハルコンよりも柔らかいけど魔法には強い。オリハルコンでも十分に魔法耐性があるんだけど火廣金(ヒヒイロカネ)は吸収した魔力を活用できる……」


 語り始めた……。途中途中気になる単語が聞こえた気がするけど言葉が多くてお腹いっぱいだよ……。

次話は明日の17時投稿予定です


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