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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~地底公国編~
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209話 鉱石喰らい

 鉱石喰らいが火炎石を食べる様子を見守るのは私ことサクラ・トレイルである。鉱石喰らいは食べた鉱石に自身の属性を融合する特性を持っているらしい。火山のような暑い環境には氷属性、砂漠のような環境では水属性といった環境を相克する属性を持つらしく討伐はせずに鉱石を作ってもらうための魔物だとか。……先に言って! 説明しておいて! 危うく何も知らずに狩るところだったよ!


「もしかして私が鉱石喰らいを探してる時にルディが来てたのって……」

「へ?」

「ん。私の指示なの」

「え?」

「サクちゃんが倒さないように見張ってたって感じ~」

「ふーん?」


 当の本人が理解できてないようだね。ラティナが言葉足らずで正しく鉱石喰らいの事を説明してないと判断したマティナがルルディアを派遣して私が鉱石喰らいを倒さないように見張っていたのだろう。


「まあいいや。無事に目的のものは手に入りそうだし……」

「糞を使うことはいいのかしら?」

「うん。気が抜けてどうでも良くなっちゃった」


 ここまで含めて私を押し切るための作戦なら凄いけど……ラティナの表情を見る限り違そうだ。日本では猫の糞を使ったコーヒーもあったし糞を肥料や薬に使っていたことを考えたら大丈夫だろう。……うん。


 ―――


 しばらく待っていると鉱石喰らいが氷炎鉱石を残して去っていった。ああ、手に入ってしまった……。

 ひっそりとショックを受けているとラティナが嬉しそうに氷炎鉱石を持ち上げている。ルディもテンション爆上げで眺めているね。


「見た目はただの鉱石みたいね」

「そうだね。加工されたらもう元が糞だとも分からなそうだね。ルーツを聞かなかったことにしよう。そうしよう」


 その後全員で部屋に戻る。上機嫌なラティナは直ぐに鍛冶場にスキップしていった。タノシソウダナー。


 ラティナを見送った後客間でゆっくりする。今日は精神的に疲れたよ……。


 ―――


 三日後、外がざわついている中、ラティナが猫背で手をだらんとした状態で目を見開いて客間に入ってきた。幽霊かな?


「顔色悪いよ? 休んだ方が良いんじゃない?」

「そ、そそそそれどころじゃないよ」


 ラティナに肩を掴まれて揺らされる。最近肩を掴まれること多いな?


「な、なにがあったの?」

「鉱石……喰らい……」

「鉱石喰らい?」

「鉱石喰らいに修復途中の氷華を食べられちゃった!」

「な、なんだってー!」


 ってふざけてる場合じゃない! 大問題じゃん!


「その個体は?」


 聞いてみるもラティナは首を振るだけだ。逃げられたのか……。それよりも……。


「人的被害はある?」


 ラティナは再度首を振る。それは良かった。被害が広がる前に対処しないとね。


 急いで外に出ると鉱石喰らいが暴れまわっている。このせいで騒がしかったんだね。よく見ると鉱石喰らいは建物や鉱石を食べて回っている。人は襲われてないみたいだけど物的被害が甚大だ。もしや手遅れ!?


「のんびりしすぎよ! 手伝いなさい!」

「ごめんごめん! 殺しちゃダメなんだよね?」

「そうね」


 先に外に出ていたカトレアちゃんに怒られる。今言われても困るね。


 物理的に殴り飛ばして鉱石喰らいを黙らせていく。氷華を食べた個体を探すために魔力を放出することも忘れない。


「気持ち悪いのじゃ!」


 コハルちゃんはコハルちゃんで鉱石喰らいを薙刀で打ち払っている。ちゃんと柄の部分で攻撃して殺さないようにしているけど打った時の感触が気に食わないらしく叩くたびに嫌そうな顔をしている。


 カトレアちゃんもコハルちゃんも氷華を食べた相手に当たっていないらしく氷華の反応はない。ううむ。早く探さないと。


 倒しても倒しても出続ける鉱石喰らいに辟易しつつも氷華を探す。早くしないと属性が追加されちゃうよ! ……あれ? 悪くないのでは?


「サクラさん。この鉱石喰らいはなにかおかしいよ!」

「え?」

「新しい鉱石が生まれてない!」


 え? それってつまり食べられたらそのまま消化されちゃうってこと?


「早く探さないと!」


 氷華が消化されてなくなる前に吐き出させないといけないね。移動速度を上げて氷華を食べた個体を探す。


「変異種だったりする? 倒しちゃって平気かな?」

「すべてはダメだけど少しくらいなら大丈夫……かも?」


 疑問形か……。ならなるべく倒さない方がいいね。

 引き続き鉱石喰らいを倒しつつ道を進むと一回り大きな個体を発見した。なんかゴツイな!?


「あれも鉱石喰らいなの?」

「変に進化してるね……」


 他の鉱石喰らいは大きなミミズの見た目をしているのに一匹だけ角や鱗が生えているね。近付くと熱気と冷気が織り交ざって襲ってくる。


「さすがに討伐しないと危険すぎるでしょう……」

「私は役に立て無さそうだから先に帰るね。サクラさんファイト!」


 呆然と見上げているとラティナが帰っていった。薄情者かな? いや、ラティナは戦えないから安全な場所にいてくれた方が良いけどね。


 さっそく進化個体と向き合う。この個体から氷華の魔力を感じるね。身体強化を使って鉱石喰らいを叩く。鱗が割れて悲鳴を上げるもすぐに鱗が修復していく。元の鱗よりさらにゴツイな?


「もしかして食べた鉱石で体を修復してる?」


 何度か鱗を壊して確かめるも仮説が合ってそうだ。壊す度に違う色や硬さの鱗に変わっている。


 まったく、面倒な相手だね。

次話は明日の17時投稿予定です


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