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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~地底公国編~
210/292

201話 登山

 車を降り、火山を登っているのは私ことサクラ・トレイルである。ドワーフの地底公国の入り口が火山のどこかにあると言われているため、一度車から降りて探しているのだ。それに乗ったままだと外が暑すぎて蒸し焼きになりそうだし。


「暑いわね」

「人型になっても暑いのじゃ」


 モフモフ組は暑さでぐったりとしている。かくいう私も二人ほどではないけど暑さに参っている一人となっている。魔法で施錠されていたら探知で直ぐに入り口が見つかるのに。


 数は少ないけど炎の霊みたいな魔物や暑い環境に適合した魔物も襲ってくるため余計に暑苦しい。幸いなことに倒すのは簡単で私が魔法で吹き飛ばしたりカトレアちゃんが杖で殴り飛ばしたりするだけで済んでいる。


「もう火口に向かうしかないのかしら」

「定番だけど絶対じゃないよ」

「なんでもいいのじゃ。さっさと涼しいところにいきたいのじゃ」


 ドワーフの国に着けば涼しめると信じて三人で入り口を探しているけど全く見つからない。一つの可能性として火口に向かうことにした。山頂に近付くほど暑くなりそうだけど我慢するしかなさそうかな?

 んー、魔法で涼めればいいんだけどな。氷魔法で微調整できれば。むむむ……。


「なんで吹雪を作ってるのよ」

「涼しくならないかなって……」

「もう、氷魔法はずっと氷華に頼ってきたつけが回って来たわね」

「ぐぬぬ」


 いつも氷華に魔力を流して発生した冷気を調整して氷を作ってきたから一から氷を作ることに慣れていないのだ。細かい魔法制御は得意のはずなんだけどな。


「氷華からしたら面白くないんじゃろう。我慢するのじゃ」

「そうなのかな?」


 氷華は妖刀の一種だから意思を持っていてもおかしくない。壊しちゃっとことに今更ながら罪悪感が……。


「二十年近く丁寧に使ってきたんだから罪悪感を持つ必要はないわよ。むしろ壊れても直してまで使おうとしてくれてることに喜ぶんじゃない?」

「そうかな?」

「ええ」


 私の心を読んだカトレアちゃんがフォローしてくれた。この感覚久しぶりだ。


 一度作った吹雪の残り冷気を少し纏って涼しみつつ火口を目指す。中に飛び込めばきっと入り口がある……よね? ちょっと自信持てないけど麓には入り口らしき場所が無かったからあってるはず。うん、きっとね。


 念のため道中も入り口が無いか確認しつつ山頂に上る。火口に近付くほど熱気があがり、わずかな冷気だけだと相殺しきれなくなってくる。カトレアちゃんとコハルちゃんは溶けそうだ。私も魔法が雑になって来たよ。


「やっと山頂に着いたわね」

「ここから飛び降りる気か? 正気じゃなかろう」


 コハルちゃんに正気を疑われてしまった。でも他に候補がないからな。私がいれば魔法で飛べるけど普通のドワーフは空飛べないよね。もしかしてドワーフは空を飛べる? そんなわけないか。マグマにも負けない体を持ってるのだろう。……暑さで頭が働いてないな。


「せめてドワーフの知り合いに聞くべきだったのじゃ」

「それがチコには連絡がつかなかったのよね」


 私達の仲良い知り合いのドワーフってチコしかいないんだよね。ハーフならルノアさんとか学園長とかいるんだけどね。……ハーフだろうと関係ないじゃん。聞いておけば良かった。


「過ぎたことはしかたないのじゃ。直前までルノアといたとしてもしかたないのじゃ」

「うぐぐ」


 念話機が必要無いほど近くに知ってる人がいたのに何をしていたんだ。


「先に見てくるよ。ここで待っていて」

「一緒に行くわ……と言いたいところだけど火口の中はキツそうね。待ってるから見つけたら教えて頂戴」

「うん。任せて」


 カトレアちゃんとコハルちゃんを山頂に残して一人で火口の中にはいる。どこか入り口はないかな?


 天の魔法でマグマを操作して中を覗く。ここには無さそうだ。次に側面を見てみる。入口はないけど……なにかあるな?


「石板? いや、看板とスイッチだね。なになに?」


 看板をみると非常口と書かれている。……非常口!? もしやちゃんとした入り口は別にあるの!? ま、まあ入り口には変わりないし? 入口が麓にあったとしても山登り楽しかったし? 悔しくなんて無いんだからね!


 火口を出て山頂に戻るとカトレアちゃんとコハルちゃんの二人が魔物に襲われている。といっても二人にとっては敵じゃなく普通に蹴散らしてるけどね。二人が魔物を殲滅し終えた頃、カトレアちゃんが声をかけてきた。


「覗きに目覚めたのかしら? 手伝ってくれても良かったのよ?」

「大丈夫そうだったから。それと入り口見つけたよ」


 非常口だったけど……。


「ふーん? 見つけたけど正面口は別の場所にあったって顔ね」

「なんで分かるの?」


 やれやれといった顔をするも怒っては無いらしい。良かった。


 カトレアちゃんとコハルちゃんと三人で非常口に向かう。車は蒸し焼きになるし絨毯は熱さで発火しそうだからお馴染みとなっている空と風の魔法の組み合わせで飛んでいく。


「こんな場所に入り口があると思う方も大概じゃが実際にあると酔狂なものじゃの」

「あれ? 私ディスられてる?」

「気のせいじゃ」


 そうか、気のせいだったか。気を取り直して中に入ろう。

次話は明日の17時投稿予定です


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