200話 神の鉱石
祝200話!
絨毯の上で目を覚ますと目の前にポーラがいた。
「うおっ」
ちょっと驚いた声が出たけど起こさずに済んだようだ。周りを見回すとカトレアちゃんとコハルちゃんも寝ている。コハルちゃんは顔色も良くなっているね。コハルちゃんの頭を撫でると頭を手に押し付けてくる。うん、可愛い。
「サクラ様。もう体調は平気かね?」
「うん。ゆっくり眠って疲れも取れたよ」
私が起きたことに気が付いたのか近くのキノコに座っていた里長が声をかけてきた。
「コハルちゃんの様子が変だった原因に心当たりはある?」
「いや、今まで試練を受けたものであそこまで憔悴したのは初めてみたの」
里長にも原因が分からないのか。本人が目を覚ますまで待とう。
「さて、サクラ様が手に入れた鉱石を見せてくれるか?」
「はいこれ。結構丈夫なんだ」
「面白い鉱石なのサ!」
アテムボックスから鉱石を取り出す。ポーラが起きて興味津々といった様子で覗いてくるのを横目に魔力を流して光ることも確認する。
「光ったのサ! やっぱり面白いのサ!」
「なんと! 良くストレージに入れられたの」
里長が驚いている横でポーラははしゃいでいる。里長は驚き過ぎじゃない?
「ストレージじゃなくてアイテムボックスなんだけど」
「アイテムボックス? 創造神様から聞いたことがあるのう。神霊様とその契約者様には使える秘伝だとか」
そこまで大げさなものじゃないと思うけど……。魔力を使わないのと制限がないのが便利だからストレージよりも多く使うけどね。
「であればその鉱石はオリハルコンと呼ばれるものだのう」
「オリハルコン!?」
オリハルコンはメジャーな鉱石の一つだ。あれ? オリハルコンはSDSにも出てきたけど光る設定はなかったはず……。
「オリハルコンは光らないよね?」
「む? オリハルコンは光るぞ? もしも魔力を通しても光らない物だとしたらそれは偽物だな」
「なんですと!?」
ならSDSに出てきたオリハルコンは偽物だった? いや、そういえば魔法を使うときに光ったような光らなかったような……。うん。どっちでもいいや。
「本物のオリハルコンは魔力を吸収するからストレージには入らぬのだ」
「ふむふむ」
うーん、攻撃魔法だけじゃなくて普通の魔法も受け付けないとしたらどうやって加工するんだろうか。熱に弱かったりする?
「オリハルコンって加工できる?」
「普通は不可能だがドワーフの秘術なら可能だと言われておるな。伝手があるなら行ってみるがよい」
「分かった。そうするよ」
幸い真田様のおかげでドワーフの鍛冶師への紹介状がある。偏屈な爺さんとのことだけど氷華とオリハルコンであればきっとお気に召すだろう。
「ん、んぅ」
「カトレアおはよう。コハルも少し落ち着いた?」
鉱石についての話が一段落した頃、カトレアちゃんとコハルちゃんが目を覚ました。コハルちゃんの顔色は……悪くなさそうだね。
「うむ。サクラの言う通り止めておけば良かったのじゃ」
「途中退出はできなかったの?」
「いや、しようと思えばできたのじゃがどうしてもクリアする必要が出て来ての。無理してもうた」
「そっか」
何があったのか、報酬に何を貰ったのか、聞きたいことはあるけど聞いてもいいのかな?
「中で何があったのか聞きたいか?」
「あ、教えてくれるの?」
「ん? もちろんじゃぞ?」
必要以上に時間がかかった上にかなり衰弱していたから聞かれたくないものなのかと。
「それで何と戦ったのかしら?」
「うむ。最初に妾、それからカトレアにサクラ、強欲、怠惰、嫉妬、傲慢、憤怒の欠片じゃ」
今まで戦った大罪の欠片との再戦をしたのか、よく勝てたね。というか私にも勝ったのか。ちょっと複雑。
「見事なボスラッシュだね」
「さすがにまだ戦っていない大罪の欠片は出てこなかったのね」
「うむ。残りの大罪も吸収したら一度戻ってくるつもりじゃ」
そっか、全ての大罪を撃破したらコハルちゃんにとって良いことがあるんだね。
「もしや報酬をもらうには全ての大罪に勝たないといけないのかしら?」
「うむ。それまでは楽しみに取っておくのじゃ」
コハルちゃんがにこりと笑う。これほどの苦労に対する報酬ってなんだろう。気になるね。
「秘密じゃ」
今度はいたずらっ子のようににやりと笑う。そうか、なら私も楽しみに待つとしよう。
―――
ポーラがついて来ようとして里長に止められるといったミニハプニングもあったけど無事に里長やポーラ、妖精達と挨拶を終えて里を出る。ドワーフの国に向かうために島を出て海を横切る間、話の内容は自然と試練の事になる。
「コハルはどうやって偽物の私を倒したの?」
「む? カトレアとサクラのことは倒してないぞ?」
「どういうことよ」
コハルちゃんの返事に訝し気な顔をするカトレアちゃん。戦ったのに倒してないことが理解できないのだろう。でも私には心当たりがあるね。
「会話だけで終わったの?」
「うーむ……」
「微妙な反応ね」
「カトレアは妾に修行をつけてくれたのう」
流石カトレアちゃんだ。試練の中の偽物でもコハルちゃんの為に動くなんて!
「それでサクラは……」
「サクラは?」
「妾の事をモフるだけモフって満足したら終わったのじゃ……」
「サクラ……」
うーん。二人の視線が痛い。私がやったことじゃないのに。
「実際にサクラが出ても同じことしたでしょう?」
カトレアちゃんのツッコミにそっと目を逸らす。うん、絶対にやってたわ。
「それよりも早く進むよ。思ったより時間かかっちゃったし」
「誤魔化したわね」
「誤魔化したのじゃ」
さりげなく話題も逸らし、大陸に辿り着いてからも車を走らせる。思えば私にとって最後の未踏の地か。楽しみだね。
―――
<アービシア視点>
「ちっ。裏切ったか」
「どうしたの?」
「気にするな」
サクラめ、どうやって気付いた? まあいい。邪魔が入った時はどうしようかと思ったがここまで来たら残りの二つは力づくでも問題ない。
「出陣の準備をするぞ」
「総大将自ら出張るの? 良くないと思うんだよ?」
「俺が直接出向く必要などあるまい。配下に任せれば十分だ」
今までは情報を収集するためにしか使ってこなかった配下だが戦力としても期待できる。
「バルバロッサはブーワ山へ、グリフスは魔国へ行け。ニュディル。お前は残りの国へ行け。戦力は現地調達だ。合図を出すまでは姿を隠しておけよ」
これでいい。もうすぐだ。もうすぐで俺様は……。
アフターシナリオ ~桃源郷編~ 補足情報を同時投稿しています
本編次話は明日の17時投稿予定です
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