199話 二人の試練
区切りの問題で少し短めです。
試練を終えて絨毯の上でのんびりと休んでいるのは私ことサクラ・トレイルである。今はカトレアちゃんが試練を終えて戻ってくるまで待っている。
「サクラ様もカトレア殿が出てくるまで待つつもりか?」
「もちろん。ちゃんと出迎えてあげたいからね」
「そうか」
そういうと里長は妖精達を引き連れて先に戻っていった。絨毯の上に残ったのは私とコハルちゃん、そしてポーラの三人だ。
「サクラ、それで試練の内容はなんだったのじゃ?」
「聞いたら参加できないかも知れないけどいいの?」
「ん? 反対ではないのか?」
「反対だよ。コハルのトラウマになりそうだし」
むむむと悩み始めるコハルちゃんの頭を撫でる。私の予想が間違ってる可能性もあるし自分で判断して欲しいと思う。
「途中退出はできるのかのう?」
「どうだろう。私の場合は報酬をもらうまで出口がなかったけど途中で降参すれば出してくれるかも?」
「確証はないのか。でも妾も挑戦してみたいのう」
「そう、なら止めないよ」
「うむ」
何かあってもいいように妖精から貰った蜜を少しコハルちゃんに渡しておく。
―――
日が沈み、日が昇り、再度空が赤味を帯びてきた頃、カトレアちゃんがぐったりとした様子で洞窟から出てきた。ポーラはコハルちゃんの近くで眠っている。
「おかえりなさい」
「だたいま。思っていた以上にきつかったわ。サクラは良く突破したわね」
「カトレアが思っているよりは楽だったと思うよ。最後は試したいことも試せたし」
戻ってきたカトレアちゃんを労わっているとコハルちゃんが洞窟に向かう。
「妾も行ってくる」
「無理しないでね」
「うむ」
コハルちゃんを見送ってからカトレアちゃんが貰った報酬を見せてもらう。
「私がもらった報酬はこれよ」
「これは杖?」
カトレアちゃんが取り出したのは気を削って作られた杖だった。先端に宝石のようなものが付いていて綺麗だ。
「ええ、私の武器よ。基本爪か魔法を使っていたけどこれがあれば便利だと思ったの」
「カトレアって杖術得意だったっけ?」
「サクラも知ってるでしょ? そこそこよ」
カトレアちゃんの言う通り知ってる……と言いたいけど母にほとんどの武器、それこそ苦無や鎌みたいに使わないであろうものまで仕込まれてるから一つ一つの修練度がどれくらいかは把握できていないのだ。結局素手と魔法に頼るのがメンテナンスもなくて楽だということで今まで武器使ってこなかったから余計にね。
でもカトレアちゃんがそこそこと言うってことは人並以上に使えるってことだ。頼りにしてるよ。
「サクラは? 何貰ったの?」
「氷華を直すための鉱石かな。魔力を吸収して光るのは分かってるんだけど……」
そう言いつつ例の鉱石をカトレアちゃんに見せる。思いっきり握ってもつぶれないほど丈夫な鉱石だ。
「魔法にも大勢が高くて丈夫な鉱石なのね。加工できるのかしら?」
た、確かに……。洞窟の岩が崩れるレベルの魔法を打ちこんでも欠けることすらしなかった鉱石だ。心配になってきた。
「ドワーフなら何とかできるんじゃない? それに里長が知ってる可能性があるし……」
うん。私に必要なものとして手に入ったものだから加工方法も分かるはず。……だよね?
その後、起きたポーラを含めて三人で試験の内容について話しつつコハルちゃんを待つ。順調に進めば三日四日かかりそうだけど大丈夫かな?
しかし、私の予想は裏切られ、衰弱しきったコハルちゃんが洞窟の外に出てくるのは一か月後のことだった。
―――
かなり衰弱した様子で出てきたコハルちゃんを看病しつつ花が咲いている場所に戻る。移動中に妖精の蜜をなめさせると顔色は良くなったが精神的な疲れが残っているのかそのまま眠ってしまう。
「何があったのかしら」
「途中退場できなかったのかな。無理をしないように言ったのに……」
無理やり止めた方が良かったのかな?
「サクラ。サクラが責任を感じる必要はないわ。コハルだって見た目は子供でも精神は私達より上だから自分で判断できるわ。それに危険性は伝えたんでしょ?」
悩んでいたのが顔に出ていたのかカトレアちゃんが寄り添ってくれる。
「そうだね。少し休ませてから話を聞いてみようか」
「その前にサクラ様達も休むのサ! 二人とも顔色が酷いのサ!」
ポーラに怒られてしまった。私達も妖精達の反対を押し切って二人して一か月近く洞窟の前でコハルちゃんを待っていたから疲労がたまっているようだ。
「そうだね。コハルちゃんが起きるまで休憩するよ」
「そうするのサ! やっと休んでくれてほっとしたのサ」
ポーラに勧められるまま、私はカトレアちゃんとコハルちゃんと三人で絨毯の上に寝そべり、川の字になってぐっすりと眠るのだった。
次話は明日の17時投稿予定です
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