表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~桃源郷編~
200/292

192話 妖精族の里

 泣いているポーラを宥めているとカトレアちゃんとコハルちゃんが合流した。


「サクラ。間に合った?」

「なんとかね。ほら、無事だよ」

「大人間が三人も……。終わったのサ。キュー」

「……無事に見えないわよ?」


 ポーラの顔が蒼白になって気絶してしまった。大人間と関わってはいけないって言っていたし嫌な思い出でもあるのだろうか。昔妖精狩りでもあったとか?


 二人にポーラの事を説明する。と言っても分かってることは少ないけどね。


「ふむ。サクラなら妖精族と関わって大丈夫のはずじゃ。サクラは神に連なる存在だからのう」

「カトレアとコハルの二人はダメなの?」

「妾とカトレアもこの島に入れた時点で関わって大丈夫のはずなのじゃ。セレスのおかげじゃな」


 コハルちゃんの話によると妖精族は創造神(オリディア様)や神霊達の部下みたいな存在で、裏から世界を支配……ではなく調整しているらしい。アビスの封印の維持にも協力しているとか。コハルちゃんは本当に物知りだね。ふむふむ。二人は神樹の実に関わっているから平気かもしれないんだね。


「はっ! 大人間に囲まれてる夢をみたのサ! 大人間がここに来れるはずないのにサ。あはは……は は? まだ夢を見てるみたいなのサ」


 目を覚ましたポーラは未だに混乱してるらしい。どうしようか。


「初めましてポーラ。私はカトレア。こっちのサクラの友達よ」

「ポーラはポーラなのサ。三人は私達に何の用?」

「危険な目に合ってたから助けただけよ。他意はないわ」

「むむむ。大人間は信用しちゃいけないって言われてるのサ。でもこの三人は悪い人じゃないのサ」


 ポーラ……考え事が全部口に出てるよ。うーん。セレスの名前を出せば信用してもらえるかな?


「ポーラ。私はセレスのパートナーなんだけど信用できないかな?」

「セレシア様の!? 嘘ついてないのサ? 言われてみればセレシア様そっくりなのサ! 分かったのサ。里長に案内するのサ」


 セレスの名前の効果は抜群でパァーと顔を輝かせたポーラは私の指を掴む。もしかして妖精の里に遊びに行ける!? 期待に胸が膨らむね!


 ……。


 あれ? 進まないの? ポーラを見るとだらだらと汗を流している。


「どうしたの?」

「里の入り口に奴がいるのサ。危険だけどポーラが対処するから大人間は隠れていて欲しいのサ」


 ポーラの視線の先には先ほどポーラが避けていたカエルが一匹。決死の覚悟を決めた顔してるけど私達にとっては強くもなんともないただのカエルだね……。


「ポーラ。私達が対処しようか?」

「だ、ダメなのサ! お客様を危険な目に合わせられないのサ!」

「大丈夫大丈夫。これでも強いからね」


 安心させるようにポーラの頭を撫でて笑いかけるとポーラの顔が真っ赤になった。怒るほど信用できない? 苦笑しつつカエルを捕まえて外に逃がす。カエルは暴れることもなく何処かへと跳んでいった。うん。無用な殺生はしない方が良いよね。


「サクラ様カッコいいのサ! 危険なあいつを素手で捕まえる強さに圧倒的な力を見せた後に見せるご慈悲。素晴らしい大人間なのサ!」

「お、おう」


 顔の近くに飛んできて興奮したように早口で話しかけてきたポーラに気圧される。心なしか目がキラキラしてるよ。星が飛んできそうだ。

 あれ? 呼び方が大人間からサクラ様に代わってる? セレス効果凄いね。


「サクラでいいよ。様はいらない」

「ハイですなのサ! サクラ様!」

「あ、うん。言っても意味ない奴だね」


 私は察しが良いのですよ? これは何度問答してもループに陥るパターンだ。言うだけ無駄だろう。


 元々カエルがいた場所に向かって何やら魔法を使うポーラ。空の魔法だね。何気に私以外が使ってるの初めて見たかも。


「えへん。妖精族はみんな超級適正の魔法が使えるのサ! すごいのサ!」

「そうだね。コントロールできるようになるまで大変だったでしょう?」


 私が驚いたのを見たポーラが褒めて褒めてと近寄ってくる。犬みたいな妖精だね。思わず破顔すると後ろから冷気を感じて背筋が凍り付く。


「さっそく仲良くなったのね。良かったわ」

「ぴぇっ! カトレア怒ってる?」

「なんで私が怒る必要があるのかしら? 妖精は小さくて可愛いものね。サクラがロリコンだとは思ってなかったわ」

「誤解してない!?」


 目が全く笑ってない! そして私はロリコンではない! 確かに可愛いと思うけど犬猫愛でるみたいなものだよ!


「ほれ行くぞ。いつまでいちゃつくつもりじゃ」

「そうね。行きましょう」


 コハルちゃんの一言に機嫌を直したカトレアちゃんが歩き始める。ポーラは……震えてるね。カトレアちゃん大人げないよ。ま、そんなところも可愛いけど。


 ポーラを連れて二人に付いて行く。道は分かっているのかな?


「こっちじゃな」

「なんで道を知ってるのサ!?」

「聞いたことがあるからに決まっておろう」

「妖精族の極秘事項のはずなのサ」


 ん? もしや怠惰の罪(アケーディア)使った? コハルちゃんの使える権能や効力が段々と強まって大罪スキルに近付いてる気がする。今後はコハルちゃんに異変が無いか定期的に確認しよう。


 しばらく四人で歩いてると膜のようなものを通過した感覚がする。前を向くと景色が一変していた。


「綺麗ね」

「百聞は一見に如かず。じゃな」

「おぉー! 綺麗」

「自慢の故郷へいらっしゃいなのサ! ゆっくりしていって欲しいのサ!」


 色とりどりの花々が見渡す限り続く草原。ところどころある泉には蓮の葉が広がりキラキラした光の玉が浮遊している。私達が綺麗な景色に感動しているとポーラが自慢げに両手を広げて歓迎してくれた。

次話は明日の17時投稿予定です


評価とブクマ、いいねをお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ