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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~空島編~
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190話 空島統一<虎徹視点>

アフターシナリオ ~空島編~最終話です。

 サクラ殿が空島を出発してはや数か月。羽のない者には来れなかった空島にも人が増え始めた。たまに荒くれものが出てくるが楓やルノアを筆頭にした教え子達のちょうど良い訓練場になっている。


「今日もご苦労様。虎徹も織田も良く働いてくれて嬉しいよ」

「はっ! ありがたきお言葉」


 労いの言葉をかけられて織田と共に真田様に跪く。織田が真田様に下ったおかげでほとんどの国は真田様の配下となり表面上は速やかに空島の統一がなされたのだが、陰で反乱を企んでいる連中がいたり局所的な小競り合いが残ったりしている。織田を含めサクラ殿の狂気的な姿を見ていた者は反逆心が湧かないのか気持ち悪いくらい従順なのは助かっているがな。


 国主決定戦(バトルロワイアル)が終わった後の一週間で儂との修行を公共の場で行ったのも皆が従順な理由の一つかもしれぬ。……もしや圧倒的な力を示したサクラ殿がいなくなった後も儂らが手綱をひきやすくするために体を張ってくれてのか!? これは感謝せねばならぬな。


 サクラ殿は最後まで儂に勝てなかったとぼやいていたけど魔法有りでは圧倒的に向こうの方が強いのだ。魔法禁止の縛りでまで負けるわけにはいかぬよ。なにがサクラ殿を駆り立てていたのか気になるがカトレア殿もコハル殿も付いておる。悪いことにはならぬだろう。


「師匠! またも地上の冒険者と現地の馬鹿者との小競り合いが起きたでござる!」

「拙者とルノアで対応に行く許可を」

「許可する」


 この二人の成長も目を見張るものがある。規格外達(サクラ殿)は別として心身ともに同世代では敵なしだろう。それゆえに織田に目を付けられてしまったのは不運だったがな。


「虎徹殿、一つお願いが」

(へりくだ)る必要はない。元々敵対していたが今は仲間だろう? 知っておるか? 儂らは真田の双璧と呼ばれているんだぞ?」

「それは真実を知らないからだ。敗者は勝者に従うものさ」


 以前の織田は嫌な奴だったけど有能なのは確かだった。そこで真田様と画策して織田は最初から味方だったことにして側近のトップの一人に仕立て上げたのだ。


 簡単に言うと儂が真田様の盾として身の守りを固め、織田は真田様に献上するために外で暴れまわっていたことにした。忠義心が強すぎて暴走していたが真田様の元に戻ってこれたから落ち着いたと噂を流している。

 おかげで織田は生き地獄を味わう覚悟を持てるほどの忠臣として有名になり始めている。


 権力も人望も持たせすぎかも知れないがサクラ殿に生き地獄を味わされた織田は何か(・・)から目が覚めたのか信用できるし問題ないだろう。


「公の場では対等にするんだぞ? それで儂に何をお願いするのだ?」

「分かってる。ドラゴハルト様と二人で話をしたい」

「儂に言われてもな……。ドラン。どうだ?」

「もちろんいいぜー! 俺も聞きたいことがあるからなー!」

「感謝する」


 こいつ本当に織田か? 熱でもあるのか偽物か……。ま、ドランなら大丈夫か。


 ―――


 しばらくして二人が戻ってくる。織田の話に思うことがあったのかドランにしては珍しく難しい顔をしている。途中で聞こえた怒声が関係してそうだ。


「ドラン。何を言われた?」

兄弟(神霊)の中に裏切り者がいるらしい」

「は?」


 普段の大声が嘘のように小さな声でぼそりと呟いたドランは調査するといって姿を消した。サクラに連絡を入れておくか。


 ―――

<アービシア視点>


 セレスに負けて投獄されてから早十五年、俺は今ブルーム王国の国王ロータスと王太子シルビアの前に立たされている。あいつめ。やるなら先に伝えておけ。


「君の処罰がやっと決まったよ。いや、元々処刑は決まっていたんだけどね? 君の事を闇に葬るか表に出して僕の成果とするかでもめていたんだ。愚かだろう?」

「全くだ。昔のあんたならさっさと処刑だけでも済ませていたと思うが? 歳を取ったな」

「僕はやんちゃだったけど冷酷じゃなかったつもりだよ」


 白髪まじりの髭を蓄えたロータスが割とフランクに接してくる。この男も耄碌(もうろく)したものだ。表面上にこやかに接していると最近成長してロータスに似てきたシルビアが前に出てくる。


「あなたの存在は闇に葬ることになりました。人々が感じる恐怖は魔王だけで十分です。ましてや無事に終幕した脅威で不安にさせることはない」

「あの時の坊主が成長したなぁ。娘の背に隠れるのはやめたのか?」


 力を蓄えるために結界の魔道具を奪おうとして学園を襲撃したときに大人を頼り子供を誘導していたのを見ていた。歩を弁えているといえば聞こえが良いが単に自分の実力に自身がないだけだ。切れ者との噂もあったが所詮は噂だったな。協力者の顔が浮かびあがり思わず笑みが漏れる。


「何が可笑しい」

「別に? ただ滑稽だと思っただけだ。恰好つけたことを言っているが俺を表に出して断罪すると血を引いた娘(サクラ)に迷惑がかかるから闇に葬るだけだろう?」


 あの娘のことなどどうでもいいだろうに。魔王を倒すと魔王の横で息巻いていた間抜けだからな。……そういう意味ではこいつも一緒か(・・・・・・・)


「やあやあアビス。いい気味なの」

「ジーク。何している」

「……アビス?」


 ジークめ。こんなところでミスしやがって。シルビアが疑わし気な顔をし始めたじゃないか。まあいい、誤差の範囲だな。


 始めようか。この世界の解放(はかい)を!

補足情報を同時投稿しています!

本編次話は明日の17時投稿予定です


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