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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~空島編~
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189話 開国

 しばらくの間洞窟の外から追加の火を投げ入れる。自分でもやりすぎだと思うくらい火を投入し終えた頃、カトレアちゃん達が近くにやってきた。


「何やってるのかしら?」

「なんとなく少しでも温度が下がると出てきそうな気がして……」


 カトレアちゃんの呆れた声から心配し過ぎだと副音声が聞こえてくる。でも分身がいる時限定かも知れないけど不死だったから念には念を入れないとね!


「分身も全て溶けて消えた。大丈夫であろう」

「じゃあ出てきたら虎徹さんの責任で」

「お主……」


 虎徹さんからも呆れてる雰囲気出てるけど強い相手に警戒するのは当然でしょう。ファイアーボールを止めて織田が潜伏していた洞窟を見張る。


 …………。

 …………。

 ピシッ……ピシッ……ドンガラガッシャーン!


 しばらくすると冷めた岩に亀裂が入って洞窟が崩れる。誰か転んだ? コホン。気を取り直して、杞憂だと言われようとも崩壊した元洞窟の残骸を確認しようとするとボコンと言う音とともに何かが瓦礫から飛び出した。


「まだ生きてるの!?」

「警戒!」


 飛び出した何かは案の定織田でカトレアちゃんが驚いた声を出すけど何やら様子が変だ。天翼族の特徴である羽がボロボロで、服もほとんど燃え尽きてるけどそれ以上に覇気がない。しかも震えてない?


「サクラ殿……」

「なに? 私がどうかした?」


 虎徹さんからなんとも言えない視線を向けられる。私悪いことしてないよね?


「トラウマになってるようじゃの。心もバキバキにおられておるの」

「なんで?」


 コハルちゃんからも呆れた目で見られた。くすん。


 虎徹さんが織田を確保し真田様の所へ戻る。もっと抵抗すると思っていたけどすんなりと連行された織田は真田様の下に付くことを宣言した。


 ―――


 その後、豊臣や徳川等とも戦って……なんてことは無く、軍事力のワンツーが手を組んだため勝ち目がないと判断した他の大名達がその場で真田様の下につき迅速かつ平和的に空島統一が成った。


 一週間ほどのんびりと過ごした私達は今日、真田様に呼ばれてお城に来ている。


「よく来てくれたね。協力してくれてありがとう」

「虎徹さんにはお世話になったのでお互い様ですよ」


 虎徹さんいなかったら憤怒の欠片に勝てなかった可能性高かったから助かったし、協力と言っても私達は私達の目的のために動いただけだ。恩を売りたかったわけじゃない。


「そうか。虎徹には感謝しないとね。ところでサクラ殿はどんな褒美が欲しい?」

「では刀を打てる鍛冶師を紹介してください」

「現品では無く鍛冶師なのかい? ふむ分かった。紹介状を書こう。明日には渡すから待っていてくれ」

「ありがとうございます」


 やったね。これで壊れてしまった氷華を打ち直せる。補修するための材料は……後で考えよう。


「カトレア殿とコハル殿は何が欲しい? 遠慮なく言ってくれ」

「そうね……。特に欲しいものは無いわ。どうしてもって言うならお金にでもしてちょうだい」

「妾は美味しいものが食べたいのう。おすすめの飯屋を紹介して欲しいのじゃ」

「欲が無いな。まあ良い、辞退しないだけ助かる」


 全員が辞退すると新しい長が褒美を渡さないケチな奴だって思われそうだよね。逆に大きすぎる褒美を出すと今後の資産管理能力が問われるだろうからちょうど良い落とし所になったのではなかろうか? 褒美を渡す時の課程や事情はどうであれ聞く側の感じ方が大切だから初回の褒美は特に難しいよね。


 その日はそのまま解散となり、コハルちゃんが教えてもらった穴場の食事処でご飯を食べに行く。焼き鳥に唐揚げにお酒の摘みみたいな料理が多かったけどとても美味しかった。地上の鳥よりも丈夫なのかギッシリとした肉質に上質な肉汁が閉じ込められて……はっ! 思い出しだけで涎が。テイクアウト用の料理も作ってもらって大量にストックしたからちょっとした記念日に食べよう。


 ―――


 次の日になって真田様の所に紹介状を受け取りに行く。楽しみだな。


「おはよう。早いな」

「楽しみですからね。朝としか言われてないし問題ありませんよね?」

「もちろんだ。受け取ってくれ」


 苦笑しつつ手紙と皮袋を渡してくる。皮袋はカトレアちゃんの褒美だね。


「どこの鍛冶師です?」

「楽しみにしてるとこ悪いが直ぐに打てる訳では無いよ。その紹介状は地底公国一の鍛冶師に宛てたものだ。名前はジャック。偏屈な爺さんだけど腕は確かだ。サクラ殿なら大丈夫だろう」


 大丈夫って何が? というか空島の鍛冶師じゃないんだね。直ぐに作れないのは残念だけど鍛冶と言えばドワーフとも言うしその中でも最も腕がいい人なら我慢できるよ!


 お目当てのものも手に入ったため城を後にして虎徹さんの道場に向かう。真田様が空島統一を成したおかげで襲撃されることも無くなり、褒美で貰ったオニューの道場だ。ドランも気に入っているらしい。やっぱり墓の下は嫌だったんだね。


 道場の扉を開けると新しい木の匂いに包まれる。質の良い木が使われているみたいだ。


「サクラ殿、かたじけない」

「サクラ殿、申し訳なかったでこざる」


 木の匂いを楽しみつつ虎徹さんを探していると見知った二人がやってきて地面に頭を付けた。これぞD O G E Z A! じゃなくて頭をあげてもらおう。


「気にしないでください。二人とも無事で良かったです」

「ザグラどの〜」


 泣きついてきたルノアさんの頭を撫でる。後ろから冷気が漂ってきたから受け止めるのもそこそこにして引き剥がす。ルノアさん? 口を尖らせてるけど泣いてたんじゃないの?


「拙者らは虎徹殿の下で鍛え直すことになったでござる。何時でも呼んでくれれば手を貸すでござるよ」


 織田やサルに何をされたのかは分からないけど虎徹さんが修行してくれるなら心も体も強くなれるだろう。応援してるからね!


 最後に虎徹さんとドランの二人に挨拶してから空島を出る。真田様がトップになって鎖国も終わっているため車に乗ったら正規ルートで地上に降りる予定だ。残る国は後二つ。次は目指せ地底公国!

次話は明日の17時投稿予定です


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