表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~空島編~
193/292

186話 犠牲

 虎徹さんと並びたち、化け物になってしまった楓さんとルノアさんと対峙するのは私ことサクラ・トレイルである。絶対に織田も憤怒の欠片も許さないよ!


「案は?」

「コハルの力を使います。そのためにも二人を無力化しましょう」


 憤怒の欠片であるサルが何かを仕掛けたのならコハルちゃんの大罪の欠片の魔力を吸収して無効化する特殊能力で二人を元に戻せる可能性がある。その前に一度勝ちをもぎ取る必要がありそうだけどね。


「う゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」


 化け物のような大声をあげた後に二人が競い合うように襲ってくる。一番身近にいる敵として私達を狙うことにしたようだ。都合がいいね。私がルノアさん、虎徹さんが楓さんを対処する。


 振り下ろしてくる拳に私の拳を重ねる。残念ながら化け物になって体の使い方が雑になっているパンチなんて怖くない。案の定ルノアさんの拳が破裂する。

 そのまま腕を駆け上がり脳天に踵落としをする。ぐしゃりと嫌な音がしてルノアさんが前に倒れこむ。


 思っていた以上にもろかったけどこれでもう動けないだろう。

 虎徹さんを見ると化け物になった楓さんの四肢を切り刻んでいた。……普通なら痛そうだけど痛覚はないから大丈夫だろう。


「キー!」


 サルが叫ぶとルノアさんと楓さんが震えだす。そして二人の四肢が再生した。まさかの長期戦ですか……。

 その後何度も動きを封じるもサルの一鳴きで復活し続ける二人。二人を無力化する度にキャッキャと喜ぶサル。いい加減にして欲しいな?


「コハル! 次のタイミングで!」

「ほほう。外部に助力を頼むか。では俺の配下になるということだな?」

「そっちが先に外から助力してるんでしょうが! それを言うならお前たちの負けだ!」

「はて、なんのことだ? たまたまサルが鳴いたタイミングで二人が動き出すだけだろう?」


 そんな理屈が通ってたまるか! もういい。魔法は使わない。でも魔道具なら良いよね?


 氷華に魔力を込めてサルに向かって振るう。残念ながら天の魔法を使っていないためそこまで強い冷気ではないし、案の定サルに触れる直前で蒸発した。でも、そのおかげでサルと織田の視界が悪くなる。


 カトレアちゃんは私が氷華に魔力を込めた時点で何をするのか分かったらしく直ぐに動き出していた。


「虎徹さん!」

「うむ」


 織田とサルに向かって冷気を飛ばし続ける間に虎徹さんが楓さんとルノアさんの二人の四肢を切り刻んだ。毎度毎度やりすぎだよ。協力してもらってる以上文句言えないけど。ぐぬぬ。


 状況を把握できていないサルが鳴く前にコハルちゃんが二人に手をかざす。ぞわっとする感覚と共に化け物になっている二人がしぼんでいく。二人から魔力が抜け出たのを感じたのかサルが鳴こうとする。魔力の供給をしてまた弄ぶつもり? そんなことはさせないよ! 今まで以上に魔力を流し込んでサルが鳴くのを妨害する。直前で消失していくとはいえ周囲全方向を魔力でできた氷で覆われたら声を届かすことも魔力を通すこともできまい!


 ピシッ! ピシピシッ!


「へ?」


 コハルちゃんが二人の魔力を吸収したところで嫌な音が鳴り始めて氷華の刃がボロボロになった。なんで!?


「まぬけが」


 どうやら天の魔法で補強していないの状態の氷華に魔力を込めすぎていたらしい。私の魔力に耐え切れなくて自壊してしまったようだ。


「ぐっ。でも十分だよ! 目的は果たしたからね!」


 楓さんとルノアさんの二人は既に元の姿に戻っている。幼い頃からずっと使ってきた刀が壊れてしまったのは悲しいけどそれで友を救えたのなら仕方がない。


「ふっ、反則負けを選んだか」

「いや? ちゃんと倒してからコハルちゃんに手伝ってもらったから反則じゃないよ!」

「減らず口が……」


 遂に織田が立ってサルと共に舞台に上がってくる。第三ラウンドだ。


 サルが織田の肩から降り、織田が刀を構えた瞬間に一陣の風が吹く。


「きゃあ!」


 次の瞬間にカトレアちゃんとコハルちゃんの二人が悲鳴を上げる。慌てて振り向くと二人に大量の切り傷が付いている。……見えなかった。咄嗟に回復しようとしてカトレアちゃんに目線だけで止められる。歯を食いしばりつつ織田を見据える。


「直ぐに治すから」


 織田を睨みつけて宣言する。次は止める。


「虎徹よ。貴様が頼った小娘は口だけみたいだぞ?」

「そうかもしれぬな」


 織田が私を視界に入れることなく虎徹さんに話しかける。ずいぶんとなめてくれるね。

 拳に力を入れて近付いて思いっきり振るう。しかし織田は笑ったまま少し下がる。追撃しようとすると視界が揺れる。顎が痛い。いつの間に蹴り上げられていたの!?

 虎徹さんに捕まって後ろに放り投げられる。投げ飛ばされた衝撃で回っていた視界が元に戻る。


「頭は冷えたか?」

「す、すみません……」

「くはははは。頭が冷えたところで無駄であろう!」


 助かった。あのままだと動けないまま一方的に遊ばれるところだった。私が負けたら後ろの四人が……。


 落ち着かないと。大きく息を吸って邪念を排除する。カトレアちゃん達の治療の事も頭から追い払って織田の動きに集中する。絶対に、絶対に負けないから。

次話は明日の17時投稿予定です


評価とブクマ、いいねをお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ