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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~空島編~
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183話 ドラン対カトレア

「やってやるぜーー! カトレアの実力を魅せな!」

「サクラの実力は確認しないの?」

「すでに見てるからな! 虎徹といい勝負していたのを見ていたぞ!! まだまだ甘ちゃんだがな!!」


 ドランの元、虎徹さんの道場で体を動かす特訓を始めたのは私ことサクラ・トレイルである。別に怪我をしたリハビリをするわけではなくて無駄のない動きを習得するための特訓だ。最初はカトレアちゃんの現状を把握するところから始めるらしい。


「「よろしくお願いします」」


 二人が礼をしてから相対する。ドランからは一切仕掛けることはせず、カトレアちゃんが攻撃してドランが対処していくようだ。


 虎徹さんそっくりの姿になったドランは完全に脱力した姿勢で立っている。隙が無いのはさすがだ。


 カトレアちゃんが近付いて打ち込んだ右ストレートをドランが首を少し傾けるだけで躱す。カトレアちゃんは躱されることをすでに予想していたのか肘を曲げてストレートから肘鉄に変化させた。すれすれで躱していたドランはそのまま横に倒れるようにして躱し一回転して元の姿勢に戻った。


「今の攻撃は入ると思ったんだけど」

「良かったぞ! だがもっとだ! お前ならもっとできる!!」


 しゅ〇ぞうか! それにしても思っていた以上にカトレアちゃんの動きに無駄が少ない。私よりも効率良く動いてるんじゃ……。


 今度はドランに足払いをかけようとしたカトレアちゃんだったが二人の足がぶつかった瞬間動きが止まる。


「かったいわね!」

「当り前だ! 気合を入れてるからな!」


 微動だにしないドランにどう対処するのかカトレアちゃんを見ていると今度は肩に手を当てた。


「筋が良いな! だが遅い!」


 肩に手が触れた瞬間にドランが後退してカトレアちゃんを褒める。


 カトレアちゃんがやろうとしたのは合気? 私は習ったことがないから違うかもしれないけど、どこで覚えたのだろう。


 次にカトレアちゃんが選択したのは高速の突きだ。ドランは最小限の体捌きで避けていく。一回一回腕を振る必要があるカトレアちゃんと体をわずかに逸らすだけで済むドランではどちらが先に疲れで動きが鈍るか明白だ。


 しかし少しずつカトレアちゃんの攻撃が当たり始める。ドランが躱しきれなくなったのか腕で防御をする回数が増えていったのだ。ドランが疲れ始めた? いや、これは……!


「カトレア!」


 私の声掛けに反応してカトレアちゃんが一歩下がる。


「ふぅ、そんな攻撃の仕方があるのね」

「俺様は攻撃してないぞ!」

「分かってるわよ」


 思った通りドランはわざと攻撃を受け始めたのだろう。そして防御の受け方、躱し方でカトレアちゃんの動きを速く、無茶なものに誘導していった。気付かずに攻撃を続ければすぐにスタミナが切れるように。脳筋に見えるのに考えているみたいだ。さすが技術が神掛かった虎徹さんのパートナーだね。


 少しの間カトレアちゃんの実力チェックを行い、カトレアちゃんが疲労で倒れたところで終了となった。


「二人とも基礎はできているな! ただし動き一つ一つへの意識が甘い! 無意識でできる動きのレベルを上げていけ!」


 日常の動作でどの筋肉に力を入れるのか意識して動くこと。そして毎朝起きたら疲労で動けなくなるまで体を追い込むことを言い渡された。これは疲れた時こそ必要最低限の動きを見つけやすいかららしい。最も負担の少ない動きがその人に最も適した動きなのだと言われた。


 今後のドランとの修行では遅く動く(・・・・)ことを主体としたトレーニングをしていくらしい。例えばだが、竹刀の素振り一回に一時間かけるとか十歩歩くのに一時間かけるとかだ。この修行の目的は言わずもがな体の動きを把握すること。各動作のどのタイミングでどれほどの力を籠めるか、特にどこへ意識を割く必要があるのか。そういったことを一つ一つ意識を回していくらしい。素振り一回でも手が頂点にある時と振り下ろした後では力を入れる場所が違うからね。


 一通り三か月後までの予定を聞いて今日は解散となった。


 ―――


 来客用の寝室へと案内され、カトレアちゃんとお風呂に入った後ゆっくりしているとコハルちゃんが帰ってきた。


「おかえりなさい」

「戻ったのじゃ。二人はお疲れのようじゃのう」

「これからは毎朝お疲れの状態になるまで修行だってさ」

「が、がんばるのじゃ」


 ちょっと引き気味のコハルちゃんだったけど収集した情報について教えてくれる。


「三か月後に各地の代表が全員で勝負をして最後まで立っていた者を送り出した大名が空島統一を達成するらしいのじゃ」

「バトロワってことか。私か虎徹さん、カトレアちゃんの内一人がバトロワに参加して他二人が憤怒の欠片を警戒するのかな?」

「各地から出る代表は二人だからちと違うのう。三人とも動く必要があることに違いはなさそうじゃがな」


 ふむ。それなら師範は出場禁止でもない限り虎徹さんの出場は決定的だろう。すると残り一枠は私かカトレアちゃんか。……憤怒の欠片がバトロワの出場者にいる可能性が高い以上、魔法抜きで強い方が参加することになるだろうな。


「カトレア。負けないよ」

「っ! ええ、私も負けないわ」


 カトレアちゃんに宣戦布告すると意外だったのか一瞬息を飲んだが笑顔になって乗ってきた。好戦的な顔をするカトレアちゃんはカッコイイね!


「ところで、今日の動き凄かったね。見ていて無駄が少ないのが分かったよ」

「ありがとう。サクラのおかげよ」

「私の?」


 特に何か教えたことは無いんだけど……。むしろカトレアちゃんの方が体を動かすの上手だし。


「サクラが身体操作の魔法を使ってる時の動きを意識したのよ。ドラン様にはあの動きはサクラに適したもので私は少し変えないとダメだって言われちゃったけど」

「なるほど」


 どうやらカトレアちゃんは天才だったようだ。コハルちゃんが言いたげな顔をしてるが無視だ。



 三か月が経過し、空島統一のバトルロワイアルが開催される。

次話は明日の17時投稿予定です


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