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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~空島編~
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177話 空へ!

 今更だけど……なんで和を見ると郷愁を感じるんだろうか。私は前世で日本に住んでいたけど屋敷や和室も旅館に泊まったときにしか入ったことがないはずなのに……。ま、気にしなくても良いか。きっと魂にわびさびが刻まれているんだろう。


「さて、次の目的地は空島。正確には空島にある月支連邦国だよ」

「いくつもの国が集まってできた国だったかしら」

「そうだね。厳密には国じゃなくて大名と呼ばれる将軍……伯爵以上の上位貴族のような存在の権力が大きいと考えればいいかな」


 戦国時代みたいな構図だよね。授業で聞いた限りだと統一戦争はなく平和みたいだけど。天翼族の知り合いはウィードさんと楓さん、それからルノアさんも天翼族かな? つまり今までの国とは違って伝手が無いのだ。


 私としてはSDSにも出てきた虎徹さんの道場に入ることができれば何とかなると思ってるけどちゃんと接触できるか心配かな。一先ず二人に虎徹さんの特徴を伝え、最初の目標は月支連邦国で虎徹さんと接触することだと共有しておく。


 海を出て車を出発させる。車の中で魚を釣りつつ海の上を進む。ちなみに釣りを楽しむために自動撃退用の魔砲は外している。コハルちゃんも大量に魚を釣っていて楽しそうだ。


「そろそろ釣りも終わろうか」

「そうね。さっさと魔砲を設置して中に入りましょう」

「うむうむ」


 大満足の顔をしたコハルちゃんは最も多く魚を釣っており、数十リットル分のバケツが魚で埋まっている。私は少ないけどタイやブリなど珍しい魚や魔魚など特殊な魚を釣った。そして不満顔で片づけをしているカトレアちゃんは数匹しか釣れていなかった。しかもその数匹も釣ったのではなく捕ったものだ。三人並んで釣りをしていたのにこの差はなんなのか……。


 カトレアちゃんを宥めつつ車を浮かす。このまま空島を目指せば二、三日で到着すると思う。


「すごいのじゃ! 海がどんどん離れていくのう!」

「海ってかなり広いのね。ドメーア王国はどこにあるのかしら?」

「さすがにここからは見えないと思うよ。遠いうえに海底にあるから」


 大興奮のコハルちゃんとすまし顔だが尻尾が振れて興奮を隠しきれていないカトレアちゃんが微笑ましい。


「サクラにとっては珍しくなかったかしら?」

「そうだね。前世でも飛行機に乗ったことあるし、空や風の魔法を使えるようになった時点で空飛べるようになったし、なんなら最近(・・)見たばかり(・・・・・)の景色だから」

「羨ましいわ」

「断るのはカトレアじゃん」

「それとこれは別よ」


 カトレアちゃんにおねだりされたらいつでも空の旅に連れ行く準備はできてるけど体重がばれるから嫌だとカトレアちゃんに断られている。今の私なら乙女心もほんの米粒位は理解できるようになったから無理やり連れていくことはしない。紳士だからね!


 しばらく高度を上げていくと鳥型の魔物や大型の飛虫が襲い掛かってくる。到達前に全て撃退されるから被害は無いけど一体一体が大きい。


「見掛け倒しの生き物が多いのかしら?」

「サクラが魔砲を魔改造しただけかも知れぬぞ?」

「コハル? 後でお話が必要かな?」

「必要ないのじゃ!」


 ビシッと敬礼するコハルちゃんを横目にカトレアちゃんに大きい魔物が多い説明をする。これは学園生活の時に学園長と話をしていて聞いた話だけど、どうやら浮力を得やすくするために体の構造が風船のように進化したらしい。だから針で刺せば子供でも倒せるらしい。空を飛ぶ必要があるけどね。


 雲に差し掛かると雹や雷が車に当たって音が凄い。遮音結界を張って闇魔法で明るさを抑えているから問題ないけど普通に通過したら鼓膜が破れそうだ。


「天翼族の人達はどうやって行き来してるんだろう」

「馬鹿ね。普通雲の中を通るなんて考えないわよ」

「……そうだね」


 雲の切れ目を狙うんですね? 迂回するなんて遠回りになるだけだと思っていたから思いつかなかった。


「サクラは変なところで抜けているのう」

「ぐぬぬ」


 しばらく三人で暇つぶしのゲームをしていると雲を無事に通り抜ける。


「おー!」

「乙じゃのう」


 雲を抜けると和の国であった。

 色とりどりに紅葉した木々に石垣が積まれたレンガ、木造建築など戦国時代や鎌倉時代など、日本史に出てくるような街並みが各島々に広がっており、各島に一つのお城があった。もちろん和風のお城で大小様々なお城がたてられている。


「思っていた以上に島がたくさんあるわね」

「それぞれの島に特徴があるみたいじゃのう」

「あっちは鎌倉時代、あれは室町時代? どっちがどっちだっけ?」


 それぞれの島に年代ごとの文化が根付いているのかそれぞれが独立しているように見える。


「違和感があるね」

「そう?」

「授業の内容を覚えてる?」

「そういえば、積極的に交流しているって習ったわね」


 そう、交流しているはずなのにそれぞれの島で特色が綺麗に別れすぎている。意図的に残すとしても多少は混じる方が自然のはずだ。それに島間の人の移動が皆無なのも気になる……。


「さっそく問題が生じておるようじゃの!」

「なんで楽しそうなのよ……」


 ワクワク顔のコハルちゃんには悪いけどさっさと片付けないとね! どうせ憤怒の欠片の仕業だろうし。

次話は明日の17時投稿予定です


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