表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/292

18話 もう一人の主人公<ライラス視点>

 サクラたちが洗礼式に参加していたころ、ある獣人の集落でも洗礼式が開催されていた。


 ―――


 ****の意識と****を接続します。

 イメージと現実の乖離の修復を試みます……。……。一部の修復を失敗しました。

 失敗箇所の確認を開始します……。……。今後の進行に問題がないと判断しました。


「****、おはようございます」

「桜庭龍馬の補佐をお願いします」

「****の幸福を祈ります」


 ―――


「さすがライアス様。光の適正をお持ちです」

「おう……?」


 今は……洗礼式の最中か。なんとか返事をしたが、いぶかし気な目で見られてしまった。


「ライアス様、どうかなさいましたか?」

「いや、なんでもない。が、終わったのなら戻っていいか?」

「もちろんでございます。ライアス様の言葉は絶対ですから」

「じゃあ戻るわ。後はよろしく」


 なんだか俺のことを持ち上げる発言だな。今ならおかしいと分かるけどさっきまで当然だと思ってたのが気持ち悪いな。


「かしこまりました。ステータスは後で確認できるようにしておきます」

「おう、ありがとう」

「いえいえ、ではごゆっくり」


 至れり尽くせりの対応にやや居心地の悪さを感じながら私室へと戻っていった。


 ―――


 俺の名はライアス・アルパイン。神霊に愛され、この辺鄙な場所にあるの集落の族長の息子だ。この集落を伸し上げ、獣王国と対等の国、もしくは獣王国をも傘下にする国にする存在……だとさっきまで思っていた。だが今の俺はそれが不可能だと知っている。というか、


「おいレオン、どういうことだ。お前が獣王国の国王をやってるなんて聞いてないぞ」

「聞かれてないからね。そんなことより洗礼式でなにがあった? 魔力の質が変わったぞ。それにどうやってそれを知った。知ってるのは一握りの存在だけなんだが?」


 そう、この世界で七人しかいないと言われている神霊のうちの一人であり、俺と契約しているレオンハルト・R・シャオローナ。通称レオンが獣王国の国王をやっていたのだ。もちろん表立っているのは別の人物である。俺が今ではあほらしいと思う勘違いをしていたのは、神霊しか持たない特別な耳(今となってはただの猫耳だ)を持ち、神霊と契約した俺が一番獣人族のトップにふさわしいといわれてきたからだ。トップが神霊なら俺がそこに成り代わる必要などない。


「信じられないかもしれんが、洗礼式で前世の知識を思い出した」

「ふーん。それで?」

「疑わないのか?」

「魔力の質が変わったからね、魂の変化が起きた影響だろう。もしかしてお前の前世は俺の側近でもしてたのか。誰だ?」


 ま、普通は異世界なんて思わないよな。俺だって日本の記憶がなければ異世界なんて信じないだろう。


「残念ながら違う。日本という場所の記憶だ。そこにはここの世界そっくりなゲーム、小説のようなものがあって、そこにレオンやライアスのことが書かれていた」

「日本? そんな場所ないと思うけど?」

「異世界だからな。空島の文化にブルーム王国の文化が足されたような世界だ。ま、魔法はなかったけどな」

「へー。面白い世界だね。どんな場所か教えてよ」


 あっさりと信じることに少し驚く。いや、レオンは俺が嘘をつかないって信頼してるだけか。


「また今度な。その小説によると数年後に魔王が復活するらしい。俺はどうやら他の神霊との契約者たちと共に魔王退治をしなきゃいけないみたいだ」

「魔王……か。……ライアスからそれを聞くとはな」


 小声で何を言ってるのか分からなかったが、レオンを見ると難しい顔をしている。


「どうした?」

「いや。魔王が復活するって表現が気になってな。俺の記憶に魔王はいない」


 どういうことだ? 創造神がこの世界を創ると同時期に神霊を作ったはずだろう? レオンの記憶になければ魔王が今までいなかったことになるんだが。


「は? 寝過ごしたとかじゃないのか?」

「さすがにその時は起きるだろうな」

「だよな」


 世界が滅びるかもって時に寝るようなやつが神霊の中にいるとは思えないしな。


「いや、この世界に魔王はいない……はずだが少しだけ心当たりがあるな。記憶にはないけど伝承はたくさん残ってる。どこで聞いたかまでは覚えがないが魔王って単語も聞いた気がする」

「調べられるか?」

「……やれることはやる」


 自信家のレオンにしては歯切れが悪いな。あまり当てにしない方が良さそうだ。

 とりあえず魔王のことはレオンに任せるとして、俺は少し記憶を整理しよう。といってもところどころ記憶に穴がある。最後の記憶は誰かのためにSDSを起動したところだな。……相手の名前も自分の名前も覚えてないな。SDSの起動がなんの役に立つのかも覚えていない……。なんかもやもやするな。

 それでもSDSに関する記憶はしっかり残ってるみたいだ。SDSの六周目までの世界ならごり押しするだけだが、七周目の世界だと詰むかもな。魔法の使えない魔力お化けとかいても意味ないし。


「-ス。ライアス。話を聞け」

「いった。考え事してる間に叩くな」

「俺の話を無視するのが悪い。それよりライアスの他に日本とやらの記憶を持つやつっているのか?」


 そうか、俺以外にも日本の記憶を持つ奴がいる可能性があるのか。こういう話の定番ってあれだよな? 


「……もしかしたらだが、レオン以外の神霊と契約している人。それからこいつは契約者じゃないがサクラっていうハーフエルフが日本の記憶を持ってるかもな」

「契約者はわかるけどサクラ? はなんでだ?」

「話の主人公の一人だからだ」


 正直一番可能性が高くて、一番来ないで欲しいパターンだけどな。まだ名の知らぬサクラの転生前の人には悪いけど俺は転生したのがライアスでよかった。


「そうか……。サクラの記憶は確認できないが他の契約者たちは記憶があるか兄弟たちに聞いてみよう」

「そっか、それは助かる」


 神霊同士のネットワークみたいなもんか。お互いの居場所は分かるのか? ……神霊のことを気にしても無駄か。


「おう、面白そうだからな。任せておけ」

「じゃ、頼んだ」

「行ってくる」


 しばらくレオンは帰ってこなさそうだな。神霊の契約者に記憶があればSDSの六周目までの世界、逆にサクラにあれば七周目の世界の可能性が高いか? どのみち魔王と戦うためにも今まで以上に鍛える必要がありそうだ。でもその前にちゃんとステータスを確認してくるか。

次話は明日の7時投稿予定です。


ブクマと評価をお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ