表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ 〜神樹編〜
176/292

170話 母襲来

 神樹の迷路を進みつつ植物型の魔物と戦っているのは私ことサクラ・トレイルである。行きは虫型の魔物と戦っていたため共闘してくれたけど外に出て関係値がリセットされたのか帰りは普通に襲われている。人間で言う白血球みたいな存在かもしれないね。


「妾の力が増えてるのう」

「さすがにびっくりね」


 生まれたてということがありコハルちゃんが少し心配だったけど一つも気にすることが無かったのは良い誤算だった。むしろ新しく得たらしい怠惰の罪(アケーディア)嫉妬の罪(エンヴィー)を駆使して危なげなく戦闘している。ローレンが傲慢の大罪(ルシフェル)を使えなかったのにカトレアちゃんが嫉妬の大罪(レヴィアタン)を使えたのはコハルちゃんの存在が影響していそうだ。


 怠惰の罪(アケーディア)嫉妬の罪(エンヴィー)も大罪スキルの劣化版ではあるけど強力であることには変わりない。休憩スペースで休みつつゆっくりと降りていくと植物型の魔物の数は減っていった。最後の休憩スペースを通り抜けると完全に魔物はいなくなる。


「やっとここまで戻って来たわね」

「予想以上に長居しちゃったね。またもや日光が恋しいや」

「コーン」


 途中で歩き疲れたコハルちゃんは狐の姿に戻ってカトレアちゃんに背負われている。ちなみに私が背負うことを提案したら全力で断られた……。ぐすん。


 無事に入り口までたどり着いた私達はそのまま外に出る。やっぱり日の日差しは暖かいね!


「サクラちゃ~ん!」

「わぷっ」


 この声は母かな? どうしてこの国にいるの?


「久しぶりね~。心配したのよ~」

「母さま、力入れすぎ……」

「ごめんなさいね~。それよりそこの子は二人の娘かしら~? 可愛いわね~」

「え!?」


 コハルちゃん狐の姿なのによく分かったね。さすが母!


「さすが母! じゃないわよ。ローズさん、正確には私達の子供ではないですよ。それとお久しぶりです」

「カトレアちゃんも大きくなったわね~。早くサクラちゃんとの子供を見せて欲しいわ~」

「か、母さま……」


 女の子同士で子供は作れないんですよ? と冗談めかしたかったけど顔が熱くて言葉が続かない。母があらあらあらと嬉しそうな顔をしてるけどカトレアちゃんに失礼なので止めてあげてください。私みたいな男としても女としても中途半端な存在じゃなくてもっとしっかりした……ダメだ、想像するのも嫌だな。いつの間にか私の心は狭くなっていたらしい。


「お主ら似ておるな……」


 心の中で自爆した私はコハルちゃんが言ったことはもちろんカトレアちゃんも顔を赤くしてそっぽを向いていることにも気付くことはなかった……。


 ―――


 母の襲来により出来上がった混沌とした空間も少ししたら落ち着き、私の顔の火照りも収まった。まずは気になったことを母に聞く。


「母さまは何故ここに?」

「決まってるじゃない! サクラちゃん達を取り戻すためよ!」


 取り戻す? 一体どういうことだろう。


「サクラからチェリエ共和国に来てから半年程連絡がつかなくなったから女王に祭り上げられて逃げられなくなったのかと思って助けにきたの」

「半年!?」


 一か月くらいの気分だった。確かにずっと日の光を見てなかったし多少のズレはあると思っていたけど半年は経ちすぎじゃない?


「神界に接していたからじゃろう。時の流れが違うからの」

「な、なるほど」


 疑問の答えはコハルちゃんが教えてくれた。ずっと真っ白な空だったから分からなかったけど高速で時が流れていたみたいだ。いや、神界の時間の流れを知ってるってコハルちゃん何者?


「無駄に長く生きておるからな。知識量は負けんよ」


 このゼロ歳児は何を言ってるのか……。生まれてからの話も聞いてるけど生まれて一か月……数か月の子狐に言われても違和感しかない。


「そんなことはどうでもいいわ~。それよりも早くこの国から出ていきましょう~」


 母は言うが早く私達三人を両手に抱える。……私達そんな片手で抱えられるほど軽くないのですが?


「安心しなさい。三人とも羽より軽いわ~」


 渋顔の私を無視して母が走り出す。そのままチェリエ共和国の外に出ようとして……。


「ちっ」


 え? 母が舌打ちした? カトレアちゃんを見るとカトレアちゃんも母の舌打ちが聞こえたのか目を丸くしている。その表情も可愛い。じゃなくて。


「母さまどうしたの?」

「ん? あら~、ごめんなさいね~。まさか私達が逃げ出さないように結界を張られているとは思わなかったのよ~」

「せっかく帰ってきた女王様を逃がすわけないでしょう? 観念して女王に戻りなさい!」

「断るわ~」


 近付いてきたエルフの女性が話しかけてきた。母は嫌そうな顔をしながら断るけどエルフの女性はにっこにこだ。


「彼女は?」

「名前はネリネ。お母さまの前の女王で今の女王代理ってところよ~」


 前女王様! 母と同じくらいの年に見えるけど実は相当のおばあちゃんだったり……寒気が?


「あなたがローズの娘ね。あなたでもいいわ。女王の位を継承しなさい」


 私思うんだ、王位ってそんな簡単に譲るものじゃないって。

次話は明日の17時投稿予定です


評価とブクマ、いいねをお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ