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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ 〜神樹編〜
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168話 命名

 カトレアちゃんと子狐を後ろに庇い、オリディア様と相対するのは私ことサクラ・トレイルである。今こそ男を見せる時!


「……分かったわ。今すぐ処分する必要はない。けどその子が牙を向いたらあなた達が責任をもって処分するのよ」


 しばしにらみ合ったのち、先に折れたのはオリディア様だった。


「つまりこの子が悪さをしない限り処分しなくて良いということですね?」

「ええ、そういうことよ」


 言質もとれたし戦闘にもならなそうかな?


「ごめんなさいね。この世界の為だから」


 私が気を抜いた途端オリディア様が子狐を捕らえていた。いつの間に!?


「ダメーーー!!」


 オリディア様が魔法を使おうとした瞬間カトレアちゃんが叫ぶ。オリディア様がカトレアちゃんの叫び声に怯んだ一瞬で子狐を奪い返そうとすると……。


「やかましい! 妾をあれらと同じように扱うでない!」

「え?」


 カトレアちゃんを縮めた姿の子供がオリディア様をひっぱたいていた。


 ―――


「何じろじろ見てるのじゃ。モフモフなんてするでないぞ」


 カトレアちゃんの子供の頃に似てるなとか毛先や耳先が狐の姿と同じでピンク色になってるなとか眺めていると不機嫌そうに尻尾を振られてしまった。ぐぬぬぬぬ。


「あ! あの時の九尾じゃない!」

「うむ。やっと思い出したか薄情者が」


 真剣な顔をしていたカトレアちゃんが突然声をあげたかと思うとミニカトレアちゃん……略してミニレアちゃんが神妙な顔をして頷いた。え? カトレアちゃんの知り合いが卵から生まれたってこと?


「か、可愛い……!」

「触るな戯けがっ」


 子狐がミニレアちゃんになってから黙っていたオリディア様が突然ミニレアちゃんに抱き着こうとして逃げられている。ショックを受けた顔してるけど先に処分しようとしたのはオリディア様なので助けたりしない。……そんな上目遣いで見て来ても手を貸さないんだからね!


 私に見捨てられて捨てられた子猫のような顔をしたオリディア様が部屋の端でいじけている中、カトレアちゃんにミニレアちゃんについて聞いてみる。


「うーん。私の命の恩人かしら?」

「うむ。妾はカトレアの祖母の命を救うために憑依させられたのじゃ。勘違いするでないぞ? 妾も弱っていたゆえ互いに利があったことで恨んではおらぬ。だからモフモフするでないぞ?」


 またまたモフモフ禁止を言い渡されてしまった。まだモフモフしたことないのにひどく警戒してない?


「妾はカトレアの中にいたからの。お主がカトレアをモフモフしたときの「わーわーわー!」」

「うるさいのう。別に言ってもいいではないか」

「絶対にダメッ!」


 そんなに必死になるなんて……。モフモフする回数を減らしたほうが良いかな? 週に四回から三回に……。


 ―――


 ミニレアちゃんから生まれてから今までの話を聞いている間にオリディア様が復活した。オリディア様は首を傾げながらもアビスの邪悪な感じがしないからミニレアちゃんが暴れたり暴走したりしない限り処分しないと誓ってくれた。どうやら今回の誓いは本気のようだ。神様だから宣誓したことは破れないらしい。これは昔セレスに聞いた話だから本当の事だ。


 そしてそのままミニレアちゃんの名前を決める流れになった。ミニレアちゃん呼びは私が勝手にしてるだけだからね。


「妾の名前? なんでも良かろう」

「最終的には九本の尻尾が生えるはずだし……きゅうべいとかどうかしら?」

「絶対にダメ!」

「そ、そんなに反対しなくてもいいじゃない」


 いやいや、そんな契約したら不幸にしかならない名前の生き物の名前は不吉だから止めてくれ。もっといい名前があるでしょう。ミニレアちゃんとか!


「微妙ね……」

「妾もきゅうべえの方が……いや、どっちもどっちじゃな」

「はいはいはい! サクレアなんてどう?」


 私の案はダメだしを受けてしまった。可愛いと思うのに……。オリディア様の案はずいぶんとおいしそうな名前だな……。ん? そういうことか。なら……。


「フォックスとチェリーでフォーリーなんてどう?」

「女の子らしくないわね。狐桜(コハル)にしましょう」

「どれでも構わぬ」


 サクラとカトレアからサクレアも私達の子供っぽくて捨てがたいけど直球過ぎて恥ずかしいから英語に変えてみた。コハル……私の渾名の桜姫(はるひめ)を思い出すのは嫌だけど良い名前だね。


「ならくじ引きにしましょう!」


 そういってどこかコンビニやお祭りで見たような箱を取り出したオリディア様。日本の文化に染まりすぎてやしませんか?


 みんなが固唾を飲んで見守る中、ミニレアちゃんがくじを引いて中身を読み上げる。


「ふむ。これから妾のことはコハルと呼ぶがよい」

「やった!」


 こうしてカトレアちゃんの卵から生まれた子狐はコハルと呼ぶことになった。


 ―――


 コハルちゃんを見て私には一つの野望ができた。でもコハルちゃんの様子を見る限り達成するのは困難なものだ。警戒しているコハルちゃんを掻い潜り、言質を取らねばならぬ! 男にはやらねばならぬときがあるのだ!


 勇んでコハルちゃんの前に立ちはだかる。コハルちゃんは一瞬ビクッとしたが逃げ出すことはなかった。第一段階はクリアだね。さりげなく、さりげなーく狐の姿に戻るように促そう。


「コハルちゃんは狐に戻れるの?」


 しまった、思わず直球で聞いてしまった。失敗か? ……否! 大丈夫。最終目標はばれていないはずだ。内から湧き出る欲望を押さえつけて優しいお姉さんを演じるんだ。サクラ!


「さん付けか呼び捨てにせい。年下にちゃん付けされるとむず痒いわ。そして戻れるぞ? ただ成長前だからのう。動きにくいのじゃ」


 ぐぬぬ。そう簡単にはいかないか、でもその言い分ならこちらに好都合! コハルちゃん。覚悟!


「狐の姿で動かないと成長した後も動きにくくなるかもよ?」

「お主! 子狐の姿の妾をモフりたいだけじゃろうが! さしずめカトレアと妾のモフモフに挟まれたいといったところか?」

「ちっ、ばれたか」


 どうやらコハルちゃんは手ごわかったようだ。最終目標まで看破されるなんて……。ふっ、もっと信頼を得てから出直そう。


「恰好付けても無駄じゃぞ? お主の考えてることは分かりやすいからの」

「ぐぬぬぬぬ」


 生まれて間もない、それも一日も経ってない子供にまで考えが筒抜けだとは。でも私はあきらめない。絶対にダブルモフモフの野望を叶えてやるんだから!

次話は明日の17時投稿予定です


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