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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ 〜神樹編〜
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161話 魔法の絨毯

 チェリエ共和国へ移動しつつカトレアちゃんとお話しているのは私ことサクラ・トレイルである。

 クラーケンに車を大破された為今はカトレアちゃんに狐化してもらい運んでもらっている。卵はカトレアちゃんが持っていた方が良さそうだということでカトレアちゃんが抱えている。危険な時は私のストレージに入れておくけどね。ちなみにアイテムボックスだと時間が経過しないため産まれるのが遅くなるということで却下された。例の黒い石と同じストレージに長時間入れておくのも嫌だから基本はカトレアちゃんが持ち歩いているわけだ。


 森の中を駆けつつエルフの国についての話題が出てくる。私がいれば森の中は安全だから整った道よりも森の中を駆ける方が早く進めるのだ。植物の友万歳!


「チェリエ共和国ってどんな場所なのかローズさんに聞いてる?」

「神樹を中心に出来た国だとは聞いているけど詳しくは教えて貰えて無いんだよね」


 母に聞いても苦笑いして誤魔化されるのだ。ただのんびりした人が多いいとか。エルフだからね。


「そういやエルフってほとんど見ないわね。私達の村(メディ村とセリアン町)ではサクラとローズさんしか居なかったし学園にいた時だって学園長くらいしか居なかったのよね。なんでかしら?」

「さあ、引きこもり体質なんじゃない? 冒険者ギルドではたまに見かけるけど……」


 大陸が違うから見かけなかったのもあると思うけど長命なだけあり子供が出来にくいのだろう。


 少しの間カトレアちゃんに運ばれて道を進んでいくと途中で崖に出た。普通は吊り橋か何かがあるはずなのだけど……。


「落ちてるわね」

「時間が経ちすぎて腐ったのかな?」


 穴だらけの板が数枚くっついたボロボロのロープが崖下に向かって垂れている。吊り橋の残骸だろう。


「流石に飛び越えるのは無理ね」

「カトレアの背中も気持ちよかったけど別の移動手段にしますか」


 私が足場を作ってカトレアちゃんに走ってもらうのも有りだけどカトレアちゃんにばかり負担がかかるから別の案を採用する。


「まほうのじゅうたん〜」

「ただの絨毯じゃない」


 某猫型の青いロボット風に綺麗な絨毯を取り出すとカトレアちゃんの冷たい視線が突き刺さった。ぐすん。


「私が魔法をかけた絨毯で魔法の絨毯だからなんでもいいの」


 空と天、風の魔法を絨毯にかける。これで空飛ぶ魔法の絨毯の出来上がりだ。


「なんで絨毯なのよ」

「ベッドもあるよ?」

「なんでそのチョイスなのよ!」

「さあ。柔らかいからじゃない?」


 お約束に突っ込まれても私は答えられないよ。面積が確保出来て柔らかければなんでもいいんじゃないかな? 座布団とか。


 二人で魔法の絨毯に乗って崖を越える。カトレアちゃんのモフモフも良いけどゆったりと進めるのも気持ちいいね。


「サクラ……」

「なに?」

「最初からこの絨毯を使えば良かったんじゃないかしら」

「…………」


 そこに気付くとは流石カトレアちゃんだね!


「もしかして狐状態の私を堪能したいから絨毯を出さなかったとか言わないわよね?」

「…………勘のいいカトレアも大好きだよ!」

「サクラ? こっちを向きなさいな」


 ちぇっ、誤魔化されないか。いやーいい天気だなー。


「いい度胸してるわね」

「や、やめ、逃げ場無いから。落ちたら危ないから。ね。ね?」


 外を見てカトレアちゃんの追求を誤魔化す作戦は失敗だったらしい。

 逃げ場の無い絨毯の上で捕まるのも時間の問題で、そのまま私は……。


 ―――


「はぁ、はぁ」

「やりすぎちゃったかしら」


 少ししてぐったりとした私は傍で座っているカトレアちゃんに膝枕をされていた。


「どうしてこうなった?」

「なんでもいいじゃない」


 私の髪を梳いたり指に巻いたりしつつ上機嫌な声が上から聞こえてくる。カトレアちゃんの機嫌が戻ったのなら細かいことは気にしなくていいのかな?


 ―――


 数週間後、私とカトレアちゃんは砂漠の真っ只中にいた。


「サクラ。本当にこんな場所にチェリエ共和国があるの?」

「そのはずなんだけど……」


 森を抜けて数日、見てる景色はずっと一面砂だらけである。オアシスすら見えないとか末期じゃない?


「エルフって砂漠の民じゃないわよね? 森の民よね?」

「そうだよ。うーん。どこかの森に避難していればいいけど……」


 エルフ全員寝ている間に滅びたとかじゃないよね? もしや怠惰の欠片の仕業!?


 私は目を閉じてから耳を澄ませて植物が近くにいないか調べる。もちろん植物の声が聞き取れる……なんてことはなく水の音を聞き分けようとしているのだ。魔力感知の方が詳細に把握できるけど方向を知りたいだけなら無駄に魔力を消費する必要もないからね。

 私が聞くことに集中し始めたことに気付いたカトレアちゃんは少しの間静かにしていたけど私が目を開けると何かを見つけたのか聞いてきた。


「向こうの方向に大きな植物の気配があるよ」

「そこって……」


 私が指さした方向をみてカトレアちゃんの顔が引き攣る。


 集中して探すことで初めて気付いたけど、砂漠の地下には膨大な空間が広がり、植物が沢山生息していた。そう、チェリエ共和国は砂漠の地下にあるみたいだった。

次話は明日の17時投稿予定です


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