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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ 〜獣人国編〜
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160話 恩返し<ライアス視点>

アフターシナリオ ~獣人国編~ 最終話です。

ライアスともう一人の視点のお話です

 俺の名前はライアス。サクラの同級生でありアニエス王国の国王をしている。ま、表に出たがらないレオンの代行だがな。

 元々前世の記憶を穴抜けで持っていた俺だったが十年前に突然全ての記憶が戻ってきた。今頃記憶が戻ったところで人格が変わるわけでも価値観が変わるわけでもないけどな。


 俺の記憶が穴抜けだったのは俺の前世の名前が猫宮だったかららしい……。猫の概念を持ち込まないためだと聞いてふざけるなと怒った俺は悪くないと思う。


「あいつら大丈夫かな?」

「サクラ一人なら心配だけどカトレアもいるなら大丈夫だろう」


 サクラとカトレアを見送った後、執務室でいつもの業務をしつつも心配になって声に出す。するとレオンの返事がありそれもそうだなと一人頷く。


 セレスを魔王の運命から救うといったSDSの目的以上の結末を導いたサクラだけど今度の敵は本物の神様だとか。桜庭先輩ならともかくサクラはおっちょこちょいというかドジというか、それも目を離せない要因となっているけど一人だと不安が残るな。

 カトレアにもセレスが作ったサクランボを渡したけどまさかの卵が産まれるだけでカトレアの強化にはならなかった。セレスの事だから何らかの意味があって用意したと思うけど子守をしつつ続けるには無茶な旅路になると思いため息を吐く。


「二人の事を心配し過ぎるなよ。お前の背にはこの国の民の命がかかっているのだからな」

「あぁー、国王なんてさっさと引退したい。冒険者として活動したい……」

「わがままいうな。国を支えるのも大事な仕事だ」

「分かってるさ」


 自由に旅に出ることが出来る二人がうらやましい。俺だって学生の時みたいに旅に出たりしたい。……国王になってしまった俺にそんな自由が与えられてないのは分かり切ってるけどな。もしかしてシルビアも今の俺と同じ思いをしていたのかもな。


 ブルーム王国の王太子で同級生のシルビアの事を思い出す。魔国への潜入時もずっと国に残っていたシルビアも戦うことは許されず俺達の帰りを待つことしかできなかったはずだ。力があっても使えない。期間も長かったし無力感も大きかっただろう。


「何度も言わせるなよ? 俺達が国、大陸、アースフィアを守ることで間接的にサクラ達の援護になるんだ」

「分かってるよ」


 地味だが大切なことだとは分かっている。待ってる間にもやることがあることも。でも、俺はサクラに恩返しができているのだろうか……。この国はサクラの故郷でもなければ思い入れのある地でもない。まったく関係ない地であろうとも守り切れなかったら心を痛めるのであろうサクラの為にしっかりとこの地を守護するのが俺の役目とも言えるけど、欲を言えばもっと直接的な手助けがしたい。


 ぱきっ


 知らぬ間に手に力が入っていたみたいで持っていたペンが折れる。


「もっと力を抜けよ。大事な時に力を出せなくなるぞ」

「!?」


 大事な時……。神霊達がどう考えているかは分からないけど今は我慢する時期だということだな? 然るべき時に力を貸せるように。サクラが助けを求めた時に直ぐに手を貸せるように……。


 前世で受けたたくさんの恩。桜庭先輩は覚えていないと思うけど今の生を全てサクラの為に費やしていいほど先輩には助けられてきた。今は性別が逆になってしまい可愛らしい姿となったサクラを思い浮かべつつ気合を入れる。


「うし、ちゃっちゃとやっつけますか!」

「だから力を抜けって言ってるだろう!」

「おう!!」


 書類とのにらめっこを再開する。一つ一つがサクラの手助けになることを信じて。


 ―――

<オリディア視点>


「セレスちゃんは順調のようね」


 下界の様子を眺めつつ呟く。我が子(セレス)が大樹の枝のように広がる世界を移動しつつ魔王を鎮め、時にはアビスと向かい合いつつも過去に滅びた世界を救い上げていく様子を見て応援しつつも直接介入できないのがもどかしい。


「それにしても彼がセレスちゃんと良い仲だったなんて……」


 セレスちゃんと共にいる今代の地球の神に恨めし気な視線を送るけど気付かれる様子はない。


「ママは許しませんからね!」


 名も知らぬ(・・・・・)地球の神にちょっとした天罰でも下ればいいと考えつつもセレスちゃんが悲しむと思うと手を出せないため歯噛みするしかないのだ。


「セレスちゃんを無事に元の世界に帰すことが出来れば……交際を考えてあげても……いや、やっぱり駄目ね。サクラちゃんか、桜庭君? くらいできた人じゃないと!」


 ふんすと。気合を入れて宣言するけどもちろん二人に声は届かない。


「サクラちゃんはどうしてるのかしら」


 過去の世界から目を離して世界樹の頂点(・・・・・・)に目を向ける。世界が崩壊すると世界樹の枝から生えている葉は枯れてしまい、てっぺんに新たな葉を創り出す。その葉が新たな世界の土台となるのだ。世界を司る葉はとても大きく、一度に八枚までしか葉をつけることができないため同じ世界の創り直しは七回までしかすることはできない。枯れても腐っても世界樹の葉はとても丈夫で取ることはできないため、もし八枚とも枯れてしまったら世界樹ごと取り替えるしかないのだ。


「セレスちゃんの後始末をサクラちゃんがしてくれてるのね。距離が離れていてもぴったりのパートナーね。ベストパートナー賞でもあげちゃおうかしら」


 今まで何度も何度もセレスちゃんを救うことが出来ずにもう一回失敗したら世界樹ごと取り返すしかない時に来てくれたのがサクラだった。最後のチャンスにてようやく助かったセレスちゃんが枯れた葉へと渡って葉を直す度に生じる現代への影響を知らず知らずのうちに治めているサクラちゃんを見て頼もしく思う。偶然か必然か、()の思惑を超えた動きをするサクラちゃんを微笑ましく見守っているととある物が目に付いた。


「いいこと考えちゃった♪」


 さっそく立ち上がった私は一人準備を始めたのだった。

本編次話は明日の17時投稿予定です

アフターシナリオ ~獣人国編~の補足情報まとめを同時投稿しています


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