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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ 〜獣人国編〜
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159話 次の目的地

 サーカスでのパフォーマンスを終えた瞬間は静まりかえっており一瞬失敗したかと思いつつ舞台裏に戻ったけど私達の姿が消えた途端に大音量の歓声が聞こえた。


「どうやら成功したようね」

「静かすぎて一瞬ダメだったのかと思ったよ」


 カトレアちゃんと労いあってから舞台裏で休憩する。今舞台ではピエロがまとめに入っているはずだ。


「凄かったねぇ。魔法かい? 聞いていた物の何倍も凄かったよ!」

「ありがとうございます。サクラが特殊なだけで他の人にはあそこまでできませんよ」

「そうなのねぇ。団長も良い拾い物したわ。いつまでいるの?」

「いえ、今回だけの特別出演ですよ」

「そうなの。残念ねぇ」


 話しかけてきたのはグーチェさんだ。手足を縛られた状態でダーツの的になり、体を捻るだけで全ての矢を躱していた。まるでゴムでできたような人だったのに触らせて貰ったら普通の感触だった。人体の神秘だ。


 その後、クロージングで他の演者達と一緒に舞台に上がると歓声があがり、参加してよかったと思える数時間が終わる。


 ―――


「いやー、ハイネさん達が動けなくなった時はどうしようと思ったけど大成功で終わったね。終わったよ?」

「あはは、やらかした分を取り返せてよかったです……」


 機嫌の良さそうな声を出すピエロを伴い城へと向かう。ピエロを伴っているのはハイネさんたちの回収のためだ。どこかに引き渡されている可能性もあるけどピエロ曰くまだ城にいるらしい。どうやって居場所を察知しているのだろう。


「フィーネ様。ようこそいらっしゃいました」

「フィーネ?」

「私の名前だよ。だよ?」


 城に付くと門番さんは私とカトレアちゃんに挨拶した後ピエロに向かって頭を下げた。……もしかして地位の高い人?


「ハイネはいるかい? いるのかい?」

「ええ、保護しております。サクラ殿とカトレア殿が保護して(・・・・)くださったのですよ」

「うぐ。無事でよかったです……」


 門番さんがさわやかな笑顔で保護したと断言した。つまりそういうこと(・・・・・・)にしたのだろう。ご迷惑おかけしました。


 そのまま門番さんに城を案内されてハイネさんの所に移動する。部屋に入って私とカトレアちゃん二人で頭を下げる。


「「ハイネさん、ごめんなさい」」

「はっはっは。気にするな。傷ついたのは俺のガラスのハートだけだ!」


 ちっとも答えてない声色で冗談を混ぜつつ許してくれた。ありがたい。


「俺も二人のパフォーマンスを見てみたかったな。それだけは心残りだけど無事にサーカスが成功したのなら問題ねえよ」

「ハイネがいる時よりも盛り上がったんだよ。だよ?」

「フレンドリーファイヤーは止めてくれよ団長」


 ピエロの言葉に苦笑いしつつもニッコリ? と笑うハイネさん。うーん、悪役顔なんだよな。ウィードさんといい勝負。


「俺達の顔は怖いか?」

「え? 見慣れてるから怖くはないけど警戒はするかな」


 突然ハイネさんに質問され、最初は誤魔化そうと思ったけどそれは失礼だと思い素直に答える。


「そうかそうか。正直に答えてくれるのはありがたいな。なら二人と会った場面で俺はどうすべきだった?」

「……少なくとも回り込むのは無しかと」

「そうか。でも回り込まないと相手が逃げちまうんだ。安全な方向ならいいんだが危険な方向に逃げだされたことがあってな……」


 それは難しい問題だね……。


「それは……。もっと口調を直すとか?」

「ふっ、敬語で話しかけたら詐欺師扱いされたよ」


 遠い目をするハイネさん。割と壮絶な人生を歩んでない?


「そうだね。敬語じゃなくて……近所のお兄ちゃんや姉御ポジションを目指すのはどうかな?」

「姉御ポジション?」

「小さい頃にカッコ可愛くて気さくな人は周りにいなかった? いたらイメージしやすいと思うんだけど」

「おぉ! いたな! 頼りになるにーちゃんたち! なるほどそこを目指せばいいのか」

「ハイネさんに合うかは分からないよ?」

「おう!」


 本当に分かっているのかな? 勢いだけで返事をしていそうだけど大丈夫かな……。


「そろそろ次の開催地に移動し始めるのでハイネを回収していきますね」

「あ、はい。今日はお世話になりました」

「さようならなんだよ。だよ?」


 ピエロは急に真面目になったと思ったらすぐにふざけた態度に戻りハイネさんと他九人の狼の獣人達を回収して外へ出てしまった。うん。自由人だね。


「今日は部屋で休もうか」

「そうね。急な出番もあったし今日は疲れたわ」


 人を呼んで客室へと戻りゆっくりと休む。次の日にライアスの元を訪れる。


「来たか。もう発つのか?」

「うん。早めの方が良いと思うし」

「そうだな。これが紹介状だ。ま、すぐに追い出されたりはしないだろう」

「ありがとう」


 天空島の主への紹介状、ドワーフの地底公国への紹介状をライアスから受け取る。魔国は国王がレオナだから紹介状がなくとも断られないし、エルフの国は……私には必要ないらしい。エルフだから平気なのかと一人納得しているとライアスがニヤニヤ顔をしていたからグーパンチをお見舞いしてあげた。


「次はどこの国に行くんだ?」

「うーん。エルフの国かな? 比較的近場になるし」

「そうか、頑張れよ」

「?」


 アースフィアには大きく勾玉のような形をした二つの大陸があり私が暮らしている大陸にはブルーム王国や魔国、ドワーフの地底公国がある。今いるこちらの大陸にはアニエス王国とエルフの共和国である。ドメーア王国と天空島は二つの大陸の中央部に位置している。何回も大陸を行ったり来たりするのは大変だからエルフの国に顔を出してから天空島を経由して元の大陸に戻るのが良いと考えている。


「まあいいや、そろそろ行くね」

「おう。あ、サーカスは良かったぞ」

「……見てたの?」

「ふっ、もちろんだ。大盛況だったじゃないか」

「見なくて良かったのに」


 ライアスの反応に思わず仏頂面になるとライアスが噴き出した。


「じゃあね。カトレア行こう」


 にこやかに手を振るライアスにぶっきらぼうに挨拶をして城を出る。

 次の目的地はエルフの住む共和国、チェリエ共和国だ!

忘れていると思いますがウィードさんはサクラの刀のお師匠様で天翼族の凶悪顔の人です。


次話は明日の17時投稿予定です


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