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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ 〜獣人国編〜
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158話 サーカス

「団長、こいつら誰だ?」

「助っ人だよ。なんだよ?」


 ピエロに楽屋裏に連れていかれた私とカトレアちゃんに大きなゴリラが近付いてきた。思わず構えを取るけど特に悪い人ではなさそうだ。……また冤罪で殴るところだったね。


「そうか。二人ともよろしく頼むよ」


 私とカトレアちゃんの頭にポンポンと手を乗せると演目の準備があるのか部屋の外に出ていった。


「では二人には簡単に説明するんだよ。だよ?」

「えっと、何をかな?」

「演目の順番さ! 最初はさっきのグレゴリが力自慢をするよ。するんだよ?」


 見た目通りの演目をするんだね。どれだけパワーがあるのかな?


「次は満を持して僕の番だ。簡単な手品をするよ」

「その後はハイネ達の空中ブランコだね」


 ハイネ? 空中ブランコってことは狼の獣人達のことか。


「そしたら私達はそこで?」

「いや、そこは変えるあるよ。君たち二人はおおトリさ! ピヨピヨ」


「口調が安定しないわね……」

「どれが素だろうね」


 変わり続けるピエロの口調にカトレアちゃんが混乱している! 可哀そうに。よよよ。


「演技力も問題ないみたいだね。だね?」

「あ、はい」


 演技力のアピールじゃなかったけどまあいいか……。


「ハイネ達の番にはグーチェが軟体アピールをして、続けて動物芸だよ。いわゆる小休憩だね!」


 小休憩? あ、獣人だから動物が言うこと聞いても普通の事なのかな? 日本では珍しくてもこっちでは珍しくないのかも。


「小休憩を挟んだら君たちの出番だよ。だよ?」

「分かったわ。任せて頂戴」


 ―――


 ピエロは説明を終えると舞台裏から顔を出さなければ他の人の演目を見ても良いと一言残して会場に入っていった。


 私とカトレアちゃんは演技の打ち合わせをしつつサーカスを見る。


「最初はあのピエロが出てくるのね」

「司会みたいなものだね」


 ピエロが場を和ませてからグレゴリさんを紹介する。観客がワクワクした様子なのが舞台裏からでもよく分かるね。


「緊張するわね」

「私も一緒だから大丈夫だよ」


 大勢の観客に見られながら舞台に上がるのを想像したのかカトレアちゃんが緊張した様子を見せたため私はそっとカトレアちゃんの手を握る。一瞬驚いた様子のカトレアちゃんだったけどしっかりと手を握り返してくれた。


 そのままグレゴリさん、ピエロ、ハイネさんの演技が終わり、動物芸の番が来る。観客のボルテージも最高潮だ。


「そろそろ順番が来ますが大丈夫かな。かな?」

「任せなさい。二人で最高の演技をしてみせるわ!」


 いつものごとく突如私達の後ろに現れたピエロに向かってカトレアちゃんがサムズアップする。緊張はなさそうだね。


 動物芸をしていた動物たちが突如暴れ出し観客に向かう。


「さ、出番だね」

「ええ、魅せてあげましょう」


 ―――

<とあるサーカスの観客視点>


 私は娘のおねだりに負けてサーカスを見に来たしがない父親だ。最初はサーカスなんぞくだらないものだと思っていたが見てみるとなかなか趣深いものだった。


「動物さん達賢いね!」

「ああ、そうだね」


 娘が喜ぶ姿を見て来てよかったと思う。帰ったら妻にも感想を聞かせてやろう。

 しかし、突如そんな余裕はなくなった。動物が襲ってきたのだ。悲鳴を上げる娘を庇いつつ目をつぶる。しっかりと娘を抱きしめて衝撃に備えるけどなかなか衝撃が来ない。


「お父さん! 見て! すごいよ!」

「?」


 先ほど悲鳴を上げていたのが嘘のように娘がはしゃいだ声を出す。それにつられて会場を見ると襲ってきていたはずの動物が宙をかけて会場の中央にいる少女達と戯れている。


 少女達が動いた軌跡に煌びやかな光が残る。気のせいか動物たちも少女達に従うことを喜び敬っているように見える。


「天使様だ! 天使様は本当にいたんだね!」


 娘の喜声にしみじみと頷く。まるで天上の神々の戯れを拝見しているようだ。

 そのまま動物達が舞台裏に帰っていくと少女二人が残される。少女達は手を取り一瞬姿が消える。


「天使様は消えちゃったの?」

「まだいると思うよ」


 姿が消えたことに不安そうに呟く娘を宥める。いや、まだ見ていたいという私の願望かもしれないな。


 少しするとピンク色の氷が吹雪のように吹き荒れる。吹雪が収まると中心には先ほどの少女二人が立っていた。


 少女達はお辞儀をした後に演技を始める。狐の少女の背後から巨大な狐が現れたと思ったらエルフの少女の背後から……!? 巨大な神霊様の姿が現れる。


「神霊様……。初めて見た……」

「レオン様も基本姿を見せないからな。しっかりと目に焼き付けておこう」


 感動した様子の娘と一緒に神々しい姿を見る。他の観客達も見惚れているみたいだ。


 色とりどりの魔法と共に少女と巨獣が踊るように演武をする。時に荒々しく、時にコミカルに、神々しさは残したまま演武は続き、観客は声も上げられずに彼女達に魅入る。


 空中ブランコや玉乗りなど神霊様にやらせるのは不敬だと思えるような演技も終えた頃には私も含めて涙を流して祈りの姿勢を取っていた。


「凄かったね」

「ああ、いろいろとな……」


 少女二人が舞台裏に帰ったことで金縛りから解かれたように割れんばかりの歓声があがり帰宅することになったのだが……我に返って二つ思う。神霊様に対して大分不敬だったよな。そして……サーカス要素申し訳程度しかなかったな!

次話は明日の17時に投稿予定です


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