表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~海底王国編~
145/292

141話 カトレアの戦い 3<カトレア視点>

 ズルいズルいズルい……。


 頭の中にずっと同じ言葉が駆け巡る。そんなことを思いたい訳じゃないのに、私が私じゃ無いみたいに嫉妬の感情が私の心を支配する。


 サクラと隣に立てるのがズルい。サクラに頼られるのがズルい。期待されて期待に答えられるのがズルい。サクラに認められているのがズルい。背中を預けられるのがズルい。


 頭がふわふわする。上手く考えが纏まらないわね。


 ―――


 しばらくして視界が開ける。ここはどこだったかしら。サクラはいないの?


 もやもやした頭のまま部屋を出て廊下適当に散策する。サクラはどこにいるのかしら。早く遊びましょう? 他の人と遊んでいたら嫌よ? 私を悲しませないでね?


「カトレアさん? もう大丈夫なんですか?」

「…………」


 声をかけてきたこの子は……アイリちゃんね? 私のサクラにちょっかいをかけようとした悪い子よ。私の中の嫉妬心が強くなる。力が強くなった気がするわ。


「カトレアさん? え? その姿は? へ? 狐? きゃっ」


 火の魔法を使って当てようとしたけど少し狙いが逸れてしまった。失敗したわ。悪い子は消さないといけないのに……。


「貴様! 妹姫様に何をしている!」


 沢山の邪魔者が来た。さっさと排除しないと……。この人達は悪くないのに? いえ、悪い子を消す邪魔をする人は同罪だよね? いつものように突進して残った相手を攻撃すればいいわよね。あれ? 私が突進したところで大したダメージにはならないわ? 悩んでいる間に捕らえられてしまった。どうしましょう。……はっ! このままで平気ね! きっとサクラが助けてくれるわ。楽しみね。


 王の間まで連行され、ジーベットさんの前で跪かされる。あら? ジーベットさんも悪い子を庇うのね?


 ジーベットさんとアイリちゃんを睨みつけているとサクラがやってきた。さあサクラ! 私の事を助けてね!


 …………? なかなか助けてくれないわね。しかも私よりも先にジーベットさんと話すなんてなんのつもり?


 サクラはジーベットさんと少しお話した後に私の方を向いた。やった! やっぱりサクラの相手は私よね! 一緒に悪い子をやっつけましょう!


 なんで? なんでよ! なんで私じゃなくてそこの毛玉(・・)と話をするの? 私の方がモフモフなのよ? 一瞬サクラが悪いのかと思っちゃったけど違うわよね。悪いのは全部あの毛玉。だって私とサクラを引き裂いた元凶だもの。サクラを解放してあげないとね。


 ふふふ。さすがサクラね。目が合っただけで力が湧いてくるわ。私を取り押さえてる人を振り払い元凶の毛玉を攻撃する。サシの勝負なら私の魔法(・・・・)が使えるわね。嫉妬の大罪(レヴィアタン)。あれ? 私はいつからこんな魔法を使えたっけ? まあいいわ。これで毛玉の攻撃は私に届かない。これで……え? 今度はそっちのお魚さん(・・・・)? 全く、サクラも仕方ない子ね。サクラが人気者なのは誇らしいけど私の仕事が増えるから自重して欲しいわ。それにしてもやっぱりズルいわね。サクラと肩を並べて戦うなんて。


 しばらく毛玉とお魚の二人と戦う。お魚の歌を聞くと少し動きにくくなるわね。でも負けないわよ。サクラも応援(・・)してくれているもの。ふふふ。嬉しいわ。サクラの応援があれば百人力よ。サクラの応援のおかげが少し動きやすくなった。これで毛玉を片付けられる。


 ぞわっ


 サクラ? 嫌な予感がしてそちらを見るとサクラが近付いてきていた。共闘してくれる……雰囲気じゃないわね。何かその手つきに見覚えがあるような? 頭の中で危険信号が点滅する。あの手はやばい。何かわからないけどとりあえずやばい。じりじりと下がる私と歩調に合わせて近付いてくるサクラ。積極的なことは嬉しいのだけど時と場所を選んでほしいの。ね?


 とんっ


 いつのまにか壁際まで下がっていたらしい。これ以上後ろに下がることが出来ない……。それでも近付いてくるサクラを見て冷や汗が出てくる。


「ぅひゃん」


 サクラが私の尻尾の内の一本に思い切り抱き着いてきた。ちょっと! 尻尾は敏感なんだから止めて頂戴! ここで突然脳裏に過ったのは止めてと言っても終わらないモフモフ地獄に気持ちよさに腰が抜けた記憶。学園にいた時にも同じことがあったわね。……不味くない? このままじゃ私は人前であられもない姿に?


「サクラ。やめぅひゃう」

「あ、正気に戻った?」

「戻ったから。戻ったから止めて。人前だから」

「なら部屋に戻ったらモフモフさせてくれるんだね?」

「いいわよ。分かったからとにかく止めて頂戴」

「やったー! 狐状態のカトレアゲットだぜ!」


 とんでもないことを約束させられた気がするけどうまく頭が働かないわ。


「あれ? サクラ縮んだの? だから拾い食いはダメだっていったでしょう?」


 いつかはやると思っていたけど変なものを食べちゃったのね。


「カトレア。逆! 逆! 私が縮んだんじゃなくてカトレアが大きくなったの!」

「大きくなったどころじゃないけどね……」


 私が大きくなった? 確かにリヴィ様も小さくなってるしサクラの勘違いじゃなさそうね。


「そういえば話しにくい気がするわ」

「本当にカトレアなのね。巨大な狐にしか見えないわ……」

「え? 巨大な狐?」


 マジュリーの言葉に驚いて見渡すと一斉に全員が頷く。



 え? 私本物の狐になっちゃったの?

次話は明日の17時投稿予定です


評価とブクマ、いいねをお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ