表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
アフターシナリオ ~海底王国編~
130/292

126話 出航

 夜になりカトレアちゃんと二人部屋を出る。ドゥーグさんは約束を守ってくれているようで周りには人がいない。


「これで落ち着いて出航できるわね」

「そうだね。誰かに見つかる前に出発しようか」


 闇夜に紛れて町を縦断する。たまにはこういうのも楽しくていいね。


 そのまましばらく歩き、海辺で魔動車を出す。


「思っていたよりも滞在したわね」

「そうだね。最初はただ通り抜けるだけの予定だったからね」

「どこに通り抜けるだけの予定だった町で家まで貰っちゃう人がいるのよ」


 ここにいますがなにか? なんならカトレアちゃんもお仲間ですが?


「そうだったかしら……。私もサクラの非常識に侵食されてる? いえ、そんなはずは無いわよね?」

「カトレア?」

「なんでもないわ」

「そ、そっか」


 よく聞こえなかったけどなんでもないならいいよね。


「しゅっこうだーーー!! いたっ」

「うるさい! 夜中に大声出さないの! ひっそり出てる意味がなくなるでしょう!」

「そういうカトレアの方が……いや、なんでもないです」


 据わった目をしたカトレアちゃんにお口をチャックする。船出は必須の様式美なのに……。車だけどね。


 しばらくはドゥーグさんにもらった海図を頼りに車を運転していく。


「港町から離れると辺り一面海だから方角が分からなくなるわね」

「そこは大丈夫。方角が分かる魔道具は用意してあるから」


 いわゆる方位磁針のようなものだ。これは私がもたらしたわけではなく昔からあるものだという。


 見渡す限り海が続く景色になってから数日。途中までは順調だったのに異変が起きるのは唐突だった。


「……カトレア。ここに山なんてあったっけ?」

「そんなものは海図には載ってないわ。ここは海のど真ん中よ」

「じゃあ私達が見てるのは幻? それとも蜃気楼?」

「蜃気楼は知らないけど魔力感知で見れば幻かどうかは判断つくでしょ?」

「ですよね。ははっ」


 乾いた笑いが出てくるけど許してほしい。突然大波が発生したと思ったら目の前に山が現れたのだ。それも断崖絶壁の。決して私の胸の事じゃないからね? いいね?


 現実逃避をしてしまったが何度魔力感知を使ってもこの山が魔物だと示している。もしかして……。クラーケンの成体?


「子供殺した恨みかな?」

「子供って……クラーケンの成体ってこと?」

「そうみたい……」


 カトレアちゃんも大きさと子供を殺した発言から悟ったらしい。さすがに大きすぎないかな? 思わず二人して目が遠くなる。


「はっ! 現実逃避してる場合じゃない! 逃げないと!」


 我に返った私は車を急転換させて急いで逃げる。戦えば倒せると思うけど絶対長引くしめんどくさい。


 しかし現実はそう甘くなく、私達が逃げる速度よりも山サイズのクラーケンが足で魔動車を捕らえる方が早かった。急いでカトレアちゃんと一緒に車からでて大木よりも大きな足の一本を焼き切る。しかし直ぐに次の足に捕まり、再度焼き切るといったいたちごっこになってしまう。何度足を焼き切っても再生して何度も何度も襲ってくる足にカトレアちゃんが捕まりカトレアちゃんに気を取られた私も捕まってしまった。そして車もろとも海底深くに引きずり込まれていった。


 ―――


 ふと眩しくて目が覚める。えっと私は何を……。はっ! カトレアちゃんは!?


 すぐ隣にカトレアちゃんが横たわってるのを見て少し焦ったけど息をしてるのに気づいてホッとする。海に引きずり込まれた時に氷でクラーケンを串刺しにしたおかげか海の中で解放されていたらしい。……なんで海底なのに息ができるんだろう? しかも眩しくて目が覚めたよね?


「カトレア、カトレア。起きて!」

「んぅ? サクラ?」


 寝ぼけたカトレアちゃんも可愛い! じゃなくてカトレアちゃんに今の状況を説明する。とっても分かってることはないけどね……。


「私達を引きずり込んだ張本人はどこに行ったのかしら?」

「車も持ってかれたね……乗るのかな?」


 クラーケンの姿も車の姿も見えない。……車は途中で大破したかな? クラーケンはあの程度の攻撃で死ぬとは思えないけど……。しばらく辺りを散策すると空気と灯りがある空間が一定の半球状に広がっていることが分かった。それと、空気のある範囲には魔物が寄ってこないみたいだ。


「ここで呼吸ができる原因はこの神殿かしら?」


 カトレアちゃんが言うのは空気のある範囲の中心に位置する神殿だ。さしずめ海底神殿とでもいえば良いのだろうか。小さな竜宮城?


「何か祭ってるのかな?」

「神霊様ゆかりの地かしら?」


 確かに神聖な雰囲気がする場所は神霊が関わってる気がするね。……オリディア様だったりするかな?


「中に入ってみる?」

「そうだね。他に行ける場所はないし」


「おじゃましまーす。だれかいますかー?」


 声をかけつつ神殿の扉を開いて中に入る。


「アイリちゃん? いえ、アイリちゃんはここまで来れないわね。あなた達アイリちゃんに何をしたの? どうやってここに来たのよ!」

「ああぁぁぁああ!! 思い出した!!」

「突然人を指さして叫ぶんじゃないわよ!」


 神殿の中にいたのは槍を構えてこちらを睨みつけるアイリの姉。SDSの五周目の主人公であるマジュリー・オリエンテイルその人だった。

次話は明日の17時投稿予定です


評価とブクマ、いいねをお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ