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小さな龍のレクイエム(改稿版)  作者: セレシア(旧 助谷 遼)
小さな龍のレクイエム<セレシア視点>
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105話 駆け引き

 私が(勝手に)監禁されて数日後、私ことセレスは冒険者ギルドにやって来ている。


 ここのお菓子は美味しいね! くふふ。サクラも喜んでるのが分かる。ギルマスの部屋に王様と王子、ジークにギルマス、サクラと私にライアスとレオンが集まると地下へと移動する。


「地下牢かな? 誰に会うんだろう?」

「んーとね。ふんふん。アービシアだね!」


 サクラが聞いてきたから怠惰の大罪(ベルフェゴール)で調べて教えてあげる。え? アービシア? 木の実渡したから大丈夫だと思うけど何かあったかな?


「ああ、その件はありがとう。ただなぜか効かなかったんだ」

「えっ?」


 木の実が効いてない……? それは大変……。どうしよう……。先ずは状態を確認しないといけないね。ライアスを呼んだのはアービシアの闇魔法に対抗するため? 今のライアスだと黒の魔法には対抗できないと思うんだけど……。


「レオンレオン」


 小声でレオンを呼ぶ。


「どうした?」


 レオンも私に合わせて小声で返してくれた。


「もし、ライアスがアービシアの魔法を打ち消せなかったらレオンが対応お願いね」

「は? それってどういう……」

「可能性の話。大丈夫だと思うんだけど念の為」

「……分かった」


 私が本気だということに気付いたレオンが頷いてくれた。これで一安心かな?


 ―――


 アービシアの前に到着すると早速ライラがアービシアに話しかける。


「さて、サクラを連れてきたよ。魔王について知ってる情報を吐きな」

「くっくっく。その前にそこの神霊サマに幾つか聞きたいことがある」


 私? もしかして過去の世界の記憶を思い出したとか?


「待ちな。先に情報を吐いてからだよ」

「いや、いいよ。なに?」


 アービシアの質問次第でアービシアから出てくる情報が分かる……というか記憶が戻っていて私が魔王って言われたらどうしよう……。


「いやなに、単純な疑問だ。何故オレだけ捕縛したんだ? 他の魔族、ヴァニティアとかも生け捕りにした方が良かっただろう? オレよりも魔王に近い存在がいたんだ。不自然じゃないか」


 ……! こいつ……。気を失ってたはずなのにヴァニティアが逃げていった事に気付いていたなんて……。


「ヴァニティアを倒したのは私じゃないよ。変な言いがかりをしないでほしいな」

「言いがかりではないだろう? 現にお前はオレを助けた上に今も魔王の居場所を隠している」


 記憶も戻ったのかな……。なんで思い出したの? 助けたって二週目の世界の話でしょう? わざわざ私にだけ伝わるように仄めかさなくていいのに! いや、助かるけどさ……。そしてこの質問は私が記憶を思い出してるのか確認しようとしてるんだね? バレない方が良いよね。とりあえずとぼけよう……。


 私が答えに詰まっているとライアスとサクラが援護してくれた。……闇魔法? レオンを見ると頷いている。黒の魔法じゃない……私の考えすぎだったのかな……。


「くっくっく。そう考えるのもお前たちの自由だ。それで、質問の回答は?」

「そういった依頼だったからだよね? 他に言いようがないんだけど……」


 先に答えを考えていて置いて良かった! 困惑しつつも何とか答えられたよ!


「ふーむ? そういう事にしておこう」


 アービシアが含み笑いをした後、サクラを見る。アービシアの態度を見ると本当に記憶を思い出してるのか分からなくなる、どっちなの? 記憶戻ってるの? 戻ってないの?


「サクラ。いくら仲良くなっても神霊を信じるな。これは父から娘への忠告だ」


 私は一人息を飲む。アービシアが言ってることはある意味正しい。だって私は魔王になるんだから……。


「忠告ありがとう。でも大丈夫。セレスが嘘を言ったら私は分かるし、逆に私が嘘をついたらセレスが分かるほどには仲良くしてるから」


 嘘つかなくて良かった!! やっぱり私の嘘は分かるんだね! 私はサクラが嘘ついても分かんないけどね! 保険をかけておいて良かったと喜ぶ。もちろん仲良くしてるって言ってくれて嬉しいよ? 顔がニマニマしちゃう。くふふ。


「サクラ……。うん。私はスパイじゃないしサクラの味方だよ!」


 危ない。うっかり魔王じゃないって嘘つきそうだった! ふふん。ギリギリで魔王バレするのを防げたよ!


「うん。セレスを信じてるよ」

「えへへ。私もサクラを信じてるよ」


 信じる内容はきっと違うけど……。私はサクラを裏切ることになるけれど……。サクラはちゃんと私を殺してくれるよね?


 とうとうアービシアが魔王について話し始める。思わずサクラにしがみつこうとして肉球に阻まれる。あ、今の私は人の形態じゃなかった。


「くっくっく。そう急くな。遺跡にいた魔族からの情報だが最近魔国の国王が死んだらしい。後釜には良く分からんチビが収まったとさ」


 …………? どういうこと? やっぱり記憶戻ってなかったの? 知ってたら私だって言うはずだよね? ……!! チビだって? グリフスはどうしたの? というかなんでそんな情報を持ってるの? 思わず問いただしたくなるのをグッと我慢する。ダメだここで突っ込むと私が魔王について意図的に隠してる事がバレちゃう……。

 恨めしげにアービシアを睨むとアービシアは私を見てふっと笑った。…………。そうか……わざとか……。私の態度を見て記憶が戻っているか確認したんだね? アービシアはサクラの父親だけあって頭の回転が早い。でも私の正体を暴露するつもりは無さそうだ。


 アービシアへの問答が終わり、退出する際に私にだけ聞こえる声で一言。


「お膳立てはしたぞ。さっさとサクラに殺されてしまえ」


 本当に……本当にコイツは…………。いろいろと聞きたい事はあるけどグッと我慢だ。サクラ達と一緒にギルマスの部屋へと戻る。


 ギルマスの部屋で今後の方針について話し合いが行われた結果、サクラとライアスが魔国に行くことになった。……お膳立てってこれのことか。魔国で大量の魔族と戦えばサクラの戦闘経験は飛躍的に増える。実戦が多ければそれだけ私がサクラを鍛えられる。さっさと鍛えてさっさと殺されろって? 良いよ。その挑発に乗ってあげる。その代わり、サクラがアービシアを倒せるようになるまで鍛えてやるんだからね!

次話は今日の17時投稿予定です


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