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第五話 魔改造

 一番気にかかるのは、それなりの規模の市街地だっただろうはずなのに、未だに何の復興もなされていない状態のままである点だ。


「人っ子一人いないんだよな、結構歩いたってのに。演習場(あそこ)で世話になった方が良かったかなぁ、多分無碍にはされなかっただろうし、そっちのが良かったかも色んな意味で。でも、とりあえず家に帰りたいんだよなぁ。でもこの風景見てると、家がそもそもあるのか、あっても住めるのかどうかすら怪しくなってきたな」

(もうとっとと転移すればよいのではないか?)

「俺の転移魔法、どこでも行けるかわりに使い勝手がなぁ。一度行った場所か、ちゃんと下準備しないで使うと、出る時に上下逆になったり、自転とか公転に置いてかれたりさぁ」


 なお、見える範囲ならその限りじゃない。ただし発動に時間がかかるので、見える範囲なら走ったほうが速い。


(われらの転移魔法は、紐付けされた転移陣同士でなければそもそも発動すらせんがな!)

「何ふてくされてんだよ」


 脳内でぷりぷり怒る邪神に眉をひそめる。どっちが上とかじゃなく使い勝手の違いなだけだろうに。石の中にいる、とか面倒くさいので勘弁だ。それに、まだ異世界転移魔法を使った後遺症で若干頭が痛い。いわゆるMP(魔力)不足も合わせて、高度の演算によって脳の神経回路にかかった負荷がまだ回復していない証拠だ。

 再度ため息を付きつつ、足元に転がっていたコンクリート片を蹴飛ばす。

 元国道なのだろうか、足元はそれなりに整った幅の広い舗装路面だ。

 ヒビや陥没があちこちに見える上に、路面の標示も道路標識も欠片も残ってはいなかったが。

 とはいえこのままテレテレと歩いて帰宅というのもな。全力で走れば新幹線と鼻歌交じりで競争できるレベルだとおもうんだが、全部が全部瓦礫になっているなら超高速で走ったところで誰に迷惑がかかるわけでもないけれど、どうやら日本全土がこう(、、)というわけではないらしい。もし走ってる最中に人目についてしまったり、見られるだけならまだしも、事故を起こしたりしたら目も当てられない。


「どっちみち、めんどくさい話になりそうだし」

(いまさらじゃの)

「うるさいよ」


 邪神に言われるまでもなくわかってはいるのだが、演習場の件でオレ個人が特定される事は無いと思うんだ。自衛隊さんたちも余裕なさそうだったし。そんな些細なことより、いまのこの世界の状況がめんどくさい極みだと思える。とっととおうちにたどり着きたい。んでもってあすら姉さんと会いたい。風呂に入りたい。布団にくるまって寝たい。


「というわけで何か足にできそうなものは……っと。お、いいもの見っけ」


 いいながら周囲に『探査(サーチ)』魔法をかけたところ、良さげなものを見つけた。魔力をレーダー波のように周囲に放射して、色々と調べる事ができるのだ。

 レーダーと違うところは、探査した対象の形状や材質なんかも把握できるところか。


「へへっ、ちょいとボロッボロみたいだけど、そこらはどうとでもなるしっと」


 軽く駆け出し、数百メートルを一気に移動する。止まるのと同時に小高い丘のような瓦礫を蹴り飛ばして、目的のブツを確認する。


「よし、原形は残ってるな」


 蹴飛ばして吹き飛ばした瓦礫の下から、元はバイクだったのだろうと思われる残骸が姿を現していた。


(なんじゃこれは。車輪がついておるが荷車かぇ?)

「バイクってんだよ。まあこのままじゃ動かないから弄り倒すけど」


 まだ半ば瓦礫に埋もれているバイクの残骸を、太い鋼管のフレーム部分を掴んで持ち上げる。片手で軽々、ホント人間離れしちゃったな俺。それはともかく、うん、これならなんとかなるだろう。


「えーっと、錬金スキル発動。材料は、っと――」


 異世界(向こう)で手に入れた素材でフルチューンだな。エンジンはどうすべ。ガソリンスタンドなんか無さそうだしそもそも手持ちの日本円なんて無いし、そもそもエンジンいじれるほどの機械工学の知識なんて無いし。いっそ魔導アイテム化すればいいか。そういや免許証、異世界での戦闘で消し飛んでるんだよな。高い金出して普通二輪免許取得した(とった)のに。再発行できるかな。

 まあいいや、原動機(エンジン)が付いてなきゃ自転車扱いだ(付いてないとは言ってない)。



「これでよし!」


 良くはない、とか括弧付きで付け足したくなる感じだがまあ置いといて。

 あれから小一時間。なんということでしょう、あのスクラップそのものだったバイクの残骸が、御覧ください。


「うーん、やりすぎたかもしれん」


 アニメか特撮か何かに出てきそうな、変なバイクになってしまいました!


「ちょ、ちょっと頑張りすぎた気もするが、俺は一向に構わん!」


 なんというか見た感じ、カウリングで全てが覆われた、元々はローアンドロングなドラッガータイプのバイクがなんというか、人型に変形しても驚かねえぞ的ななんというか、『誰かのバイク』的な姿に変貌していた。いじくり倒した俺が言うのも何だが大丈夫かこれ。あっちこっちにステッカー貼りたい感。


(以前の世界でも、似たようなのを作っておったなそう言えば。ぢてんしゃ、とか言うんじゃったか?)

「ぜんぜん違うがまあ大体あってる。さて、それじゃあ試運転と行くか」


 こうして俺は、下手な軽自動車並みの車格になってしまったお手製の、真の意味で『魔』改造されたバイクに跨り、ゆっくりとアクセルを捻ったのである。魔晶結石駆動(魔導モーター)なので音などはしないが。


「あすら姉さん、元気にしてるかなぁ、っとぉ!」


 日も傾き中。俺は人っ子一人居ない瓦礫の町並みを眺めながら家路を急いだ。

 全てはこの世界に戻ってくる、その意思その原動力となった、幼馴染のお姉さんである瑠久院(るくいん)あすらに再び会うために!


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[一言] 5年半も放置してたら幼馴染のお姉さんは人妻にクラスチェンジしてそうやなぁ……主人公の瞳からハイライト消えそう
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