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第一話 帰還

 見上げれば、青い空。

 周りを見渡せば、コバルトブルーの地平線が緩く弧を描いている。

 そして、見下ろせば。

 白い雲。

 現在位置、高度数万メートル。多分。


「コレは予想してなかったぁああああああああああああああああ!」


 俺の名は神川流行(かみかわ ながれ)。年齢不詳の元男子高校生である。そして、只今絶賛落下中だ。

 盛大に落下している最中、ふと視線を向けた先。その視界の片隅には、見覚えのある――忘れようがないあの綺麗な稜線で定評のある日本一の山。


「ああっ! 帰って来た! 帰ってこれたんだ!」


 懐かしい景色を目にして多少なりとも落ち着いた俺は、落下の風圧も何のその。どうすれば無事に着地できるかを考え始めていた。

 標高3,776メートルの富士山がまるで航空写真のように眼下に見えるということは、現在高度は推して知るべし、適当に言ったさっきの高度もあながち間違いではないだろう。

 そしてこのままでは普通に地面に激突して死んでしまうのが普通だろう。だが確か物体が高所から堕ちたとしても到達できる速度というのがあって、終端速度と言われているはずだ。人間なら空気抵抗を利用すれば時速200キロ程度で落ち着くはず。多分。


「それっくらいなら死にゃしないとは思うんだ、今の俺」


 大きく両手両足を広げ、ごうごうと身体にぶつかり通り過ぎてゆく大気を全身で受け止める。昔の、貧弱な坊やだった頃なら、とてもではないが風に逆らって手足を伸ばしてはいられなかっただろう程の風圧だが、今の俺にはそよ風だ。


(果たして大丈夫かの? この世界には魔法がないと言うておったではないか)


 何とか対処を考えようとしていると、脳内に声が響いた。

 落下中で、耳に入るのは空気を切り裂く轟音だけのはずで、しかしながら妄想とかなんかではなく、確実に誰かの声。そしてそれが誰かを俺は知っている。


「うーんその心配はあったけど……お前の声が聞こえる時点で問題なくね?」

(……そう言われてみればそうかもじゃな。まあ最悪我が眷属に加えて復活させてやろう)

「そうならないことを祈るわ。飛行魔法も今は使えねえしなぁ」


 何しろこの世界に戻るために、ほぼ全魔力を使用する事になったからな。

 世界間を跨いで転移する魔法は、目的地の異世界を探す・探し当てた先との次元間彼我座標を計測、固定あるいは追跡。そうしてから空間を繋げて転移する、というそれぞれ単体でも高難易度な魔法を同時に並行して発動する必要があった。

 同じ世界の中で転移するだけでも、生半可なやつが使用するとそれだけで下手すると脳が焼き切れたり溶けて蒸発するレベルの魔法。それを異世界へと転移するのに使った俺の消耗は、如何ばかりか。ちなみにそれらを回復させる魔法のお薬もあるにはあるが――。


「あれ、劇薬だからなぁ……依存性もあるし、ある意味麻薬以上にやべえ……って、いらん事考えてる暇はねえな。さっさとどうするか真面目に考えないと――」


 せまり来る地面を前にというか下に見て、そこまで思案して、ティンときた。

 真っ直ぐ落ちる(、、、、、、、)から駄目なんだと。


「いーーーーやっほぉう!」

(なんじゃ、いきなり気でも違ったか?)


 脳内に響く声に、俺は無言でいることで応えた。まあ既にまともな神経ではないのは自覚している。

 頭を真下に向けて真っ逆さまに地面に突っ込めば、流石の俺も痛いじゃすまないだろう。だがしかし。


「滑空してなるたけ地面と平行になるように落ちて、できれば滑走するように着地できれば! 今の俺なら多分死なん、と思う! んだけどね!」


 少しでも揚力的な何かをと考えて、俺は虚空から二振りの剣と大ぶりの盾を取り出した。


「頼むぞ」


 幅の広い、刃渡り50cm・身幅15cmほどのグルカナイフに似た形状の剣を両手に持ってそれを翼に見立て、盾の持ち手につま先を突っ込んでサーフィンボードのようにして俺は地上へと落ち続けるのをコントロールしようとし、それは一応の成功を見ることとなったのだ。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 久々の作品公開 [一言] ティンとくるって、おてぃんてぃんに性的な興奮による反応あり…… 一応生死の境目のはずなのに それこそ精子の境目とかか下ネタでボケかませるぐらい 余裕なのね。
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