004
~妖しいオークの森~
魔王「どうか何卒、この魔王めにお慈悲を……」
聖女アリア「集中集中……。大丈夫、痛くないように一撃でケリをつける!」
ツリ目女子高生「いや、要点はそこではないような?」
魔王「な、なんでもします! マジでなんでも! お二人の部屋のお掃除でも洗濯でもなんでもしますから、どうか命だけはッッッ!!」
聖女アリア「えー……、でもそれだと魔王を討伐したって認めてもらえないもん」
魔王「そ、そこはご安心を! わたくしめに名案がございます!」
聖女アリア「ほう? ならばひとつ、その名案とやらを聞こうか」
ツリ目女子高生(いったいどっちが魔王なんだろう……)
魔王「はッ! じつはこう見えて、わたくし魔王は生まれてこの方、直接人間と対面したことがないのです。要するにどんな死体をもっていこうがそれが魔王かどうか見破れる人間はこの世に存在しません!」
聖女アリア「なるほど……、言われてみれば確かに」
ツリ目女子高生(やばい。あたし……、何かとんでもない陰謀に巻き込まれようとしている……?)
魔王「それに、わたくしめはこのとおり、ぽっちゃり体型ではありますが、これでも魔王の端くれ。何かとお役に立てるかと!」
聖女アリア「それもそうね……。うーん、貴方はどう思う?」
ツリ目女子高生「なんであたし!?」
聖女アリア「えー、だってほら、私と一緒にこの魔王を匿う罪人だし?」
ツリ目女子高生「えぇ――――ッ!?」
魔王「かたじけない……」
聖女アリア「安心して。だいじょうぶ。何とかする!」
ツリ目女子高生「なんとかって……、まだ何も思いついてない人のセリフじゃ……」
魔王「安心なされよ。こちらのお方がなんとかして下さる」
ツリ目女子高生「あなたは黙ってて」
魔王「はい」
ツリ目女子高生「……いや、というか、それよりもあたしは自分のことで精一杯だし、まずここがどこなのかも分かってなくて……」
聖女アリア「あ、そうだった。じゃあこの話はおしまい!」
魔王「だな。俺なんかのことは置いといて、本題に入ろう」
ツリ目女子高生「うーん……、結構まだ頭パニック状態でぜんぜん冷静じゃないんだけど……、ここが死後の世界じゃないなら、たぶんあたしのいた世界とはまったく別の世界だと思うんです……。ていうか、どうしよう、家に帰らないと親が心配して絶対ケーサツに通報する……。超過保護だし……」
聖女アリア「まったく別の世界……かぁ」
魔王「きっと魔法か何かで移動したんだろうな。別の世界……、それなら確かに貴様が身につけているものが見慣れないものというのも頷ける」
ツリ目女子高生「ああ、これは制服っていうんです」
魔王「……可愛いな、似合ってるぞ」
ツリ目女子高生「あ、ありがとうございます……」
魔王「……」
ツリ目女子高生「……」
お腹グー。
聖女アリア「あー、おなかすいたぁー」
魔王「おい。ぶち壊すなよ」
聖女アリア「ん? 文句?」
魔王「いえ、滅相もありません」
お腹グー。
ツリ目女子高生「でも確かにお腹すきましたね……、あたしずっと歩き続けてたし」
聖女アリア「よし♪ じゃあ魔王はなにか食材になるもの探してきて。私たちはここで火を起こして休憩もできる寝床もつくっておくから」
魔王「はあ!? なんで俺が!? 俺は魔王だぞ!! 俺が命令すればみんな言うことをきく魔王なんだぞ!?」
聖女アリア「墓場、ここでよかった?」
魔王「わたくし、最善を尽くして参ります!!」