003
~妖しいオークの森~
聖女アリア「らーんらんらんらーん♪」
魔王(こいつ、迷子のくせに鼻歌なんて歌いやがって。どんだけお気楽なんだよ……)
聖女アリア「帰ったらお湯浸かろ~♪ 帰ったらお湯浸かろ~♪」
魔王(だったらいい加減ちゃんと帰路に着けって。何時間オークの森をうろついてんだ、まったく。このまま迷子で死んじまったら俺の作戦がおじゃんじゃねえか)
聖女アリア「あれ?」
魔王(ン? どした?)
聖女アリア「もしかして……、迷子になったかも!?」
魔王(いま気づいたのかよッ!!)
聖女アリア「やば……、どうしよう。近くに誰かいないかな。あー、でもいたとしてもどうせ魔王の手下だし、もし出くわしたらどうしよう……」
魔王(いねえよ! 誰かさんが魔王城に向かう道中でみなごろしにしちゃったようだからな!!)
聖女アリア「いやでも、うん、帰り道を教えてもらったあと倒しちゃえば問題ないかぁ♪」
魔王(悪魔かよ! 魔王の俺でもそんなことしねえぞ!?)
聖女アリア「あ、いた」
魔王(生き残りのオークがいた!? 今すぐ逃げてぇー!!)
ガサッ。
ツリ目女子高生「ひいい! た、助けて下さい! 殺さないで、なんでもしますからぁーッ! おねがいします! おねがいします! おねがいします!」
聖女アリア「あれ? 魔王の手下っぽくない……? だいじょうぶ?」
ツリ目女子高生「え?」
聖女アリア「……」
魔王
ツリ目女子高生「……」
ツリ目女子高生「ひと……? 言葉通じてる……? よかったぁぁぁ!」
聖女アリア「もしかして貴方も迷子かな」
ツリ目女子高生「は、はい! たぶん!」
聖女アリア「そっか、それは残念だ……。じつは私も迷子なんだよね……」
ツリ目女子高生「あ……、なんか……すみません」
聖女アリア「で、貴方はどこから来たの?」
ツリ目女子高生「そ、それがですね……、あたしにもまったく意味がわからなくて……、ホント不思議なんですよ……」
聖女アリア「ふしぎ?」
ツリ目女子高生「そう、とても不思議で……。だってついさっきまでカラオケしてたんですよ……? で、トイレいって、手を洗って、洗った手を拭きながら目を閉じて、はあ楽しいなぁーってルンルン気分で目を開けたら……、ここですよ? ていうか、そもそもここ日本ですか……?」
聖女アリア「にほん……?」
ツリ目女子高生「え? もしや日本をご存じない……?」
聖女アリア「うん」
ツリ目女子高生「オワッタ……。そっか、あたしホントはあの時に倒れて打ち所が悪くて死んだんだ……。つまりここは死後の世界。天国か地獄……」
聖女アリア「いやいや。死んでるのはこっちの魔王で、貴方は死んでないよ?」
ツリ目女子高生「じゃあここはいったいどこ……、魔王!?」
聖女アリア「そう♪ みてみて、はい、魔王討伐の証♪」
ツリ目女子高生「うっわー……、ホントに死んでるんですか?」
聖女アリア「確かめてみる? はい、どーぞ♪」
ツリ目女子高生「……つんつん」
魔王(あ……、そこ……)
ツリ目女子高生「うわ! い、いま動きましたよ!? び、びくって!」
聖女アリア「え? 本当? んー……、じゃあ試しに、持ってきた剣で串刺しにしてみよっか。最悪、魔王だって分かればそれでいいし」
魔王「や、やめろッ!! ばかか貴様!! そんな尖ったもので串刺しにしたら本当に死んじゃうだろうがッッッ!!!」
聖女アリア「……」
ツリ目女子高生 「……」
魔王「あ……」