002
~とある魔王城の深部~
聖女アリア「てぇええええい!」
最後の四天王「ば、ばかな……、このワタシが……、こんな小娘なんぞに……」
バタッ。
最後の四天王「まさか……、人間ごときにこんな……」
聖女アリア「へへへ。思ってたより全然強かったでしょう? こう見えて修行をみっちりこなしてきたからね、その成果たるや、うんうん♪」
最後の四天王「なんだこいつ、独り言ばかり言いおって……。ワタシはこんな奴に負けたのか……? 信じられない……」
聖女アリア「あー、でも最後の最後で奥義をだせなかったのは悔しいなぁ。せっかくこの日のために編み出したのにぃ。まあでも魔王が残ってるし、そこで試せばいっか♪」
最後の四天王「まさか、まださらに奥の手があったというのか……。ハハハハ、とんだ井の中の蛙だった。人間にもこれほどの者がいたとはな……ガクッ」
聖女アリア「ふう。でもさすがに四天王最後のひとりは結構手こずったわね。さーて、これで残すは魔王のみ! やっとこれで煩わしい修行から解放されるーっ! やったぁー!!」
~とある魔王城の最深部~
最後の門番「ここは通さん!」
聖女アリア「邪魔」
最後の門番「ぎょえー」
聖女アリア「よぉーし! たどりついたぁー!! 魔王♪ 魔王♪」
カチャ。
聖女アリア「わーたしーはアリア~♪ 結構つよい聖女~♪」
魔王「き、きやがったな、人間!」
聖女アリア「ええ、きてやったわ! 魔王!!」
魔王「もっと近くに寄るがいい! 俺は魔王だからな、わざわざ玉座から立つことはしないんだ。それに俺ぐらいになるとここからいつでも貴様の心臓をえぐり取ることができる!!」
聖女アリア「はは~ん、距離を詰めて一撃で勝負を決しようという魂胆ね! その勝負のったッ!」
魔王「ふっふっふ……」
聖女アリア「ふっふっふ……」
魔王「クックック……」
聖女アリア「クックック……」
魔王「……く」
魔王「ぐ、ぐぉおおお……、なんだこれはぁああ!」
聖女アリア「!?」
魔王「き、きさま……、俺に何をした……」
聖女アリア「え、何をしたって、まだ何も……」
魔王「お、おかしい。視界に捉えただけで、俺の胸が、俺の心臓が破裂しそうになっているだと……!? 貴様、いったいどんな魔法を……」
聖女アリア「いやだから私は……」
魔王「ぐあああああああ!」
バタッ。
聖女アリア「……な、なんで? ほんとにまだ何もしてないのに」
聖女アリア「まあでもいっか♪ どっちにしろ結果はおなじだし。とりあえず魔王討伐した証として魔王を持って帰りますか。はい、足を持ちまして~、っと。このまま引きずって街まで帰りましょうね~♪ らんらんら~ん♪」
魔王(……ふっふっふ。ド素人め。魔王の俺がゾンビ無双で培った死んだフリの達人だとは見抜けなかったようだな。いいぞ。このままついていって貴様のそのエロい肉体に俺の恐ろしさを味わわせてやる……。ふはははは! ざまぁみろ!!)
聖女アリア「あッ!」
魔王(ン……!?)
聖女アリア「忘れてた! 靴紐解けてるんだった! 直さなくちゃ……」
魔王(なんだ、驚かせるなよ。死んだフリがバレたかと思っただろう)
聖女アリア「よっこらせ」
魔王(ンゴッ!?)
聖女アリア「どうせもう死んでるし、椅子がわりにしてもいいよね。弾力があって座り心地いいし」
魔王(ンゴ! ンゴンゴンゴ! ンゴ……、ふぅ……)
聖女アリア「……これでよし。無事靴紐も結べたし、しゅっぱーつ!♪」
魔王(……人間の女め。本性を現したな。よりにもよってこの魔王の顔を尻にしき、まるで獣のマーキングのごとく堂々と「これは私専用のイスよ」アピールするとは、なんてやつだ。この恩……この屈辱、決してわすれないぞ!!)