001
~とある魔王城の最深部~
魔王「はあ、暇すぎて死にそう……。ゾンビ無双も飽きたし、オークのなつやすみも結局俺は何してるんだろう……ってバカバカしくなるばっかだし、万策尽きたなあ」
ドタバタドタバタ。
ドワーフ大臣「カロリーの化身! ではなく陛下!」
魔王「!!!」
魔王「い、いきなり何だよ! ビビるだろ!?」
ドワーフ大臣「失敬。しかしそんなことより、こんなところで何あぶらを売ってるんですか!? しかもハムをそんなにたくさん抱えて……、なんと醜い!!」
魔王「み、みにくいって何だ!! 食欲不振でガリガリよりかは健康的にぽっちゃりなほうが全然マシだろう!?」
ドワーフ大臣「おいたわしや……。そんな悠長なことを言ってるから裏で『魔王』をもじって『魔オーク』などと呼ばれているんですよ? よいのですか? 陛下に対する畏敬の念も持たぬ愚か者どもに舐められたままで……」
魔王「魔オークか……。そういえば昨晩、キッチンでメイド達と楽しそうに誰かさんも俺のことについて話してたような? はて、どんな内容だったかな?」
ドワーフ大臣「……」
魔王「……(俺のごはんをエサって言ったよね)」
ドワーフ大臣「それはそうと陛下」
魔王「おい」
ドワーフ大臣「近頃、ばかな人間がやたらと息巻いて『魔王をたおせー』と暴れ回っているようで、それが聞くところによるとどうやら今回のやつは中々腕の立つ者らしく、魔王軍としても何かひとつ対策を練ってはいかがかと」
魔王「そんなのゴブリンマスター軍にやらせればいいだろう」
ドワーフ大臣「陛下、お言葉ですが、彼らはすでに討伐されたもようです」
魔王「馬鹿をいうな。ゴブリンマスター軍は魔王城の外では1位2位を争う……」
ドワーフ大臣「はい、そのゴブリンマスター軍がフルボッコだったそうです」
魔王「ふ、ふるぼっこ……、つまり全滅か?」
ドワーフ大臣「はい」
魔王「ちょっとまて。ということは何だ? そのゴブリンマスター軍を倒したという中々腕の立つ人間はもうすぐそこまで迫っていて、もうじきオークマスター軍に牙を向こうとしているという事なのか? そんなの前代未聞だぞ!!」
ダッダッダッ。
サキュバス秘書「しつれいしますッ! 突然すぎてすみませんッ!」
ドワーフ大臣「小柄でかわゆいサキュバス秘書! さてはゴブリンマスター軍をフルボッコにしたという人間が倒れたか!?」
サキュバス秘書「そ、その逆です! オークマスター軍が全滅しました!!」
魔王「え……」
ドワーフ大臣「え……」
サキュバス秘書「で、ですので……、できれば退職金を……」
ドワーフ大臣「き、緊急事態じゃ……!! サキュバス秘書、今すぐ四天王を全員招集せよ! 我が魔王軍を本気にさせたこと、ばかな人間に思い知らせてやれ!!」
サキュバス秘書「あ、あの、それよりも退職金を……」
ドワーフ大臣「そんな事はどうだってよい、さっさと行け!!」
サキュバス秘書「で、でも、もし四天王も倒されて意気揚々とここまで乗りこんできたら、どうするおつもりですか……? わ、わたしは絶対に戦えませんよッ!? か弱すぎますし……」
ドワーフ大臣「安心せい。たとえ万が一、億分の一、魔王軍もやられ四天王もやられたとて、我々には陛下がおられる!!」
サキュバス秘書「ですが、へ、陛下は……戦えるんですか……?」
魔王「おい! 貴様、いま俺を見下したな!? ここぞとばかりに見下したな!? 俺は魔王だぞ!!」
サキュバス秘書「し、しつれいしすぎましたッ、すみませんッ!!」
魔王「ふん! これだから格下は。いいか? その目にしかと焼きつけろ。この俺がいかに恐ろしい魔王か、この場で見せてやる。ふん!!」
ドワーフ大臣「……」
サキュバス秘書「……」
魔王「ふん!!!」
ドワーフ大臣「……」
サキュバス秘書「……」
魔王「く、くそッ……、玉座にケツがつっかえて……」
ドワーフ大臣「……今までお世話になりました」
サキュバス秘書「……今までお世話になりました」
魔王「ちょ、ちょっとまて! まだ本気じゃ……クソッ! ケツが完全にハマって抜けね……ッ! おいッ!! お、俺もいっしょに連れていってくれぇ――――――ッ!!」