07
ヘルムート様が部屋を出て行ってから私は彼の話した内容を思い出し紙に書きだしてみた。
そしてその内容があまりにも私の覚えていた前世の記憶と違いすぎて困り果ててしまう。
「おかしいでしょ?ゲームの強制力が働いて私が殿下達と関わらなきゃならない立場になるのは分かるけど、これじゃヒロイン関係してこないじゃない?てかヒロイン何の役にも立ってないし・・・」
私としてはヒロインに攻略対象者を癒してもらって、私は忘れられた婚約者になるはずだったのにヒロインは何故か攻略者対象者に避けられている。
ヘルムート様がこの部屋を去ろうとした時、何気に私がヒロインだと思った女性の事を聞いてみた『入学式の時殿下の前で派手に転んだ令嬢はお元気?』と言う何とも怪しい問いだったがヘルムート様は疑問を持つことなく彼女の事を教えてくれた。
『あぁ・・・あの平民のカーリンて子ね、派手に転んだけどケガはなかったようだよ、それ以降は俺や殿下達の前でハンカチ落としてみたり、意味ありげな視線を送ってきたりするから全員気味悪くて避けてるよ、彼女何がしたいんだろうね?俺達が彼女を相手するはずないのにね』
ヘルムート様の返事は高位貴族子息と正しい、子爵や男爵ならいざ知らず伯爵以上の貴族が平民と関わるはずがない。
貴族は貴族の役割がありそれを果たすために優遇されている、彼等は領民を養うために領民やそれに関わる平民とは関りを持つが、それ以外の平民とは旨味がなければ関わろうとはしない、まだ学生でしかも今後どう成長するかも分からない平民女性と関わる事は学園に入学して半年ほどしか過ぎてない今は時期早々と言えるだろう。
しかしヒロインが平民だとは思わなかった、貴族は学園に入学することは強制だが平民は試験を受けて入学資格を貰わなければならない、貴族なら簡単な面接だけだが平民となるとそれなりの学力が必要だ、しかも学費免除となると特待生枠なのでなかなかに狭き門のはずだ、彼女が平民でも裕福な商家の娘なら特待生枠を狙う必要は無いが貧しいなら特待生なはず。
人を見た目で判断してはいけないとは思うが、入学式で見た彼女は頭が良さそうには見えなかった、となると裕福な家なのだろうか?ヒロインの事をそこまで深く考える必要性はないのかもしれないが、彼女がヒロインならもっと頑張れと心底思う。
ヘルムート様の話を聞いただけでは判断できないのかもしれないけど、彼の話を纏めるとまるで私がヒロインのようでいただけない。
そこまで考えた私は深いため息を吐き出して、今後どう動くべきか考える。
攻略対象者達を避けることはどうも強制力でできない気がしてきた、では次私は何をするべきなのか。
関わることを絶つことが出来ないのなら次私がやることは悪役令嬢としてのフラグを折るだろうが、関りを絶つ以外でフラグを折る方法が思いつかない。
「色々と調べる必要がありそうよね・・・ゲームの事は調べることが出来ないけど、自分の髪色と目の事は調べられそうだしそこから攻めていくしかないはね」
ヘルムート様は学園の図書館にも私の髪色や目の事に関して書いてある書物があると言っていたしそこから調べようと思い立った私は部屋を出て図書館に向かおうと足を踏み出し、ここが殿下の寮で有る事を思い出した。
あまりにも以前の部屋と変わらないものだから考えに没頭しすぎてそのことを失念していた。
このままここに居るのは好ましいとは思えない、だが荷物を侍女の力だけ借りて元の部屋に戻すのは厳しい、元の部屋に戻るのは後日従者の手の借りれる時にして今後は研究所中心の生活に切り替えようと私は決めて、急いで図書館へと足を勧めた。