03
テオ様に通された部屋は質素な部屋だった、調度品類も置いてなく机と椅子それに薬草に関する本が並ぶ本棚が有るだけ、これは執務室のようなものだろうか?それとも所長室とかなのか?そんな疑問を持ちながら辺りをキョロキョロしていたら、テオ様に凄い顔で睨まれた。
そんな敵意むき出しにしなくても良いのではないだろうか?私は貴方のお兄様の婚約者ではあるけどできれば穏便な方法で婚約を白紙にしてほしいと思っているか弱い令嬢なんですけど・・・
「君はロビン殿下の事をどう思っている?」
鋭い視線を緩めることなくそんなこと聞かれても私困るんですけど?
殿下のことをどう思っているか?そんなの知るかである、見た目だけで言うなら綺麗な人だなとは思うだがそれだけだし、中身と言われても私が知っている殿下の知識など少ない、国王陛下と正妃の間に生まれた第一王子で王位継承権第一位このまま何もなければ王様になる人くらいしか知らない。
そりゃ王子様だから色々と大変だろう事は想像できる、魔力量が少ないせいで色々と嫌味を言われたりもするだろう、しかも王族であることは隠されているけど弟は優秀であることは確かだから変にプレッシャーも感じているだろう、だけど侯爵家の令嬢でしかない私にそんなの知った事ではない、婚約者なのだからそれではダメなんだろうけど・・・
「ロビン殿下は素晴らしい方だと思います」
取って付けたような返事を返してはみたがどうやらテオ様はそんな言葉を望んではいないようだ、鋭い視線に嫌悪感までプラスされてしまった、最悪オブ最悪状態ですよ。
「そんな形ばかりの言葉など聞いていない、僕が聞きたいのは君の本音だ」
本音を言えとテオ様は言うけれど本音を言っていいかしら?不敬罪で投獄されたりしない?ただでさえ悪役令嬢ポジションで先行きが不安だというのにこれ以上不安を増やしたら私の体がもたない、フラグはできるだけ折りたい、フラグを折るために私は目の前の彼含めて攻略者全員とかかわりを持ちたくないのだから。
一向に本音を話さない私にテオ様は苛立ちを感じているのか鋭い視線で睨み続けてくる。
私の本音は殿下含めて彼らに関わりたくない、できればヒロインに頑張ってもらって攻略対象者全員を癒してもらって穏便に婚約を白紙にしていただきたい、ただそれだけです。
「何も言う気はないという事か?」
そんな刺さりそうな鋭い視線を向けられそんな事言われても私だって困る、投獄されないと確約してくれるなら私としても本音を言ってしまいたい、この研究所に通うとなればテオ様とは関係を持っていかなければならない、攻略者全員と関わる教室よりは攻略者一人と関わる研究所に通う方が今後のことを考えれば安全だ、できれば穏便に研究所通いをして平穏な学園生活を送りたい、それには今目の前の問題を解決しなければならない、だが問題を解決する方法が見つからない、積んでる色々と積んでる、だからもうやけくそで本音を言ってしまうことにした。
「テオ様・・・私の本音は興味がないです・・・テオ様も知っておられると思いますが昨日申し上げたように婚約者であるロビン殿下の顔すら知らないほどに興味がないです」
言ってから気づいた昨日も本音言っちゃってるんだから今更そこを気にす必要なかったなと・・・
だがテオ様は私の言葉に納得してはいないようだ、訝しがるように私を見つめてくる。
そんな疑いの目をされてもこちらも困る、今言ったことはまごう事無き私の本音、それを疑われたら何も言えないではないか。
「昨日も確かにそんな事を言っていたな、だがそれもロビン殿下に興味も持ってもらう為の作戦なんじゃないのか?」
テオ様の言葉に私はどうすりゃいいんだ状態ですよ、これでは何を言っても彼の思いたいようにしか受け取ってくれないではないか、本音を言えというくせに何を言っても彼の思い込みで解釈される、どれだけ興味がないと言ったところで意味なんてない。
何も言えなくなった私にテオ様は自分が言ったことが正しかったのだと思ったのか、そこから饒舌に私と殿下ではどれほど不釣り合いかを語りだした、その内容はどれだけ殿下が素晴らしいのかと言うブラコンを拗らせまくった内容すぎて私はどこをどう突っ込めばいいのかすらわからなかった。
「と言うわけでだな君とロビン殿下では不釣り合いなんだ、君の魔力量の多さは確かに凄い、それを活用して薬草を活性化させ薬を作り出したことも評価するがだからと言ってロビン殿下に相応しいとは僕は認めない」
決まったと言いたげな満足そうな表情でそこまで言い切ったテオ様はさすがあの美しい殿下の弟だけあって普通にかっこいいと思ったが、だから何だと言いたい、どんな令嬢だってきっと彼は認めやしない、この重度のブラコン拗らせ野郎が認める令嬢などきっとこの世界に居るとすればそれはヒロインだけだろう、だから是非ともヒロインには頑張ってほしいところだ。
「そこで君には特別待遇として個室の研究所と個人の薬草畑を与えよう、そこでロビン殿下と関わらず一人で頑張るんだな」
幸い転じて福となるとはこの事だろうか?彼は私にとって最高の提案をしてくれた、彼にとっては殿下に近づく悪女を追いやったのだろうが、私にしたら最高の提案だ、これで殿下と関わる必要はなくなる、しかも追いやった悪女と彼がすすんで関わるとも思えないこんな最高オブ最高な提案乗らないはずがない、私は満面の笑みを浮かべてその提案に頷いた。