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逃亡中の元貴族  作者: お猫様の従者
7/13

救出、脱出

R18版に尋問シーンを載せる予定です。裏人格のブラックリサさん登場予定。

「待っていてくださいアキさん。」

 そう呟きながら大急ぎで銃を組み立てます。きっと今まで銃を組み立てた中で一番早く組みたったのではないでしょうか。まずは車の運転席に乗っている男を狙いましょう。息を止めて引き金を引くと男の頭は窓ガラスと一緒に吹き飛びます。横にいた男は何が起こったのかわからない様子です。おそらく着弾から少したってから発砲音が届いたことでしょう。その音で周りを見回し警戒しますが、こちらは次弾装填済みです。すぐに2発目を撃ち永眠していただきます。自動砲は装填がボルトアクション式のライフルより幾分か楽でいいですね。


「見張りがやられたぞ。」

「おい、どこから撃ってきたんだ。」

「探せ。」

「バカ、下手に出ると撃たれる。」

 なんだか隣が騒がしい。聞く耳を立てていると、どうやら襲撃を受けているような騒ぎだ。もしかしたらリサさんだろうか。だとしたら助かるかもしれない、なんとも情けない話だが。


 外の物音に気付き仲間がやられたものの、どうするべきかわからない様子の3人がスコープ越しに見えます。おそらく小屋の壁はベニヤに発泡ウレタン、薄いコンクリートかモルタルの標準的なつくりのようです。光学兵器なら攻撃は難しいでしょうがこちらは20mmのライフルです。たとえ建物の壁でもこの地下都市仕様の薄いつくりなら簡単に貫通するでしょう。半自動式の装填を生かして残り5発を続けざまに撃ち込みました。すると中にいた3人のうち2人は外に飛び出してきました。残っているのは足を抑えて動けない様子の人とおそらくアキさんと思われる人のみです。

 急いで弾倉を変えて逃げた男たちを撃ち殺します。弾が貫通し血肉が弾け飛び、(あた)りにひき肉をまき散らしながら絶命します。簡単に殺してはアキさんにしたことを考えると割に合わない気がしますが、跡形もなくなった頭で許してあげましょう。

 びっくりするほど重い97式自動砲をしまうと車に乗って小屋の近くに行きます。

「ひっ、こ、殺さないでくれ。」

 1人生きていた男に注意しながら小屋に突入しましたが、男の戦意は喪失しており私が拳銃を向けただけで命乞いをしてきました。見ると弾は直撃しておらず、壁の破片が足に突き刺さっているだけの軽傷です。とりあえずは無視してよさそうですが一応縛っておくとしましょう。あとでたっぷりと可愛がってあげるとしましょうか。

「アキさんっ。」

 力いっぱい扉に体当たりしましたがびくともしません。私は命乞いをしていた男をにらむと、

「そこのあなた、アキさんをここから出しなさい。そうすれば殺すのを考えてあげてもいいですよ。」

「さ、先に逃げた男の胸ポケットに鍵が入っているんだ。背が低くて太った方の男だ…です。」

 私は踵を返すと自分がひき肉にした男のところに向かいます。よりにもよってひき肉度合いが強い方が鍵をもっているようで、まだ温かい肉片をどけながら探します。すると脳みそと目玉の近くに鍵が落ちていました。摘まみ上げて急いで戻り血だらけのまま扉を開けました。

 すごいガスの臭いです。ただこのガスは毒殺を目的にしたガスの類ではなく酸欠にするための物のようです。薄い扉一枚のところに毒ガスを入れたくはないですよね。ただ濃度は相当で下手に吸い込むと頭がクラクラします。急いでアキさんを外に連れて出ましょう。


 僕は目を開けてみたが、真っ白で何も見えない。ここはどこだろうか、ただとても心地のいい寝心地に思える。特に枕は最高だ。少し高い気もするが高反発と低反発が組み合わさったような、頭をしっかりと支えてくれている上に程よい沈み込みで後頭部を包んでくれている。だんだんと視界が戻ってきた。状況を理解すると同時に、一瞬で正気に戻った。こんな気付け薬は初めてだ。リサさんが膝枕でこちらを心配そうにのぞき込んでいる。気道確保(など)の処置をしていないことを見るに、僕は軽傷で特に問題はないのだろう。とりあえずは起き上がることにする。

「ご迷惑をおかけしました。」

 そう僕は謝ったがリサさんは僕よりも申し訳なさそうに、正座をして地面にひたいを付けた。

「迷惑だなんて滅相もございません。警戒をおろそかにして自分の買い物をしてしまい、結果アキさんを危険な目にあわせてしまいました。どんな罰でも受ける所存です。」

「顔を上げてください。感謝こそすれど罰だなんてそんなこと考えませんよ。それよりその手大丈夫ですか。どこか怪我でもしたんですか。」

 僕は少し早口で、心配で慌てながら聞いてみた。するとゆっくりと頭を上げつつ、

「これは()()()の返り血みたいなものなので大丈夫です。」

 りささんはそう言うと頭が無くなった人間だったものを指さして汚物を見るような目で眺める。

「それとひとり生き残りがいますので、これから拷、尋問します。」

「はぁ。ほどほどにお願いします。」


 小屋に戻ると尋問、というかまんま拷問が開始された。

「あなたには黙秘権もなければ、助けを呼ぶ権利もありません。回答に疑わしい部分があれば、正直に話したくなるようにしますのでそのおつもりで。」

 疑わしい部分というとこちらで勝手に判断することになる。おそらくそれが目的なんだろうけど。リサさんはまず優しく誘拐の目的を聞き始めた。

「どうしてアキさんを攫ったのですか。目的は何ですか。」

「知らねぇ。本当だ。ただこの小屋まで写真の男を連れてこいと言われた。生死は問わないが生きていた方が報酬を上げるといわれて攫った。」

 怯えながら男は答える。ほぼ間違いなく真実だろう。

「ではあなた方に指示を与えたのはどこのどなたでしょうか。」

「それも知らない。突然メールが届いて最初はただのいたずらだと思ったが、実際に手付金を入金してきやがった。それで仲間も誘って一儲けするつもりでやったんだ。」

 これも本当だろう。こいつは何も知らないチンピラだ。だがリサさんは大変ご立腹のようでこの男は許さないリストに入っているようだ。

「なるほどわかりました。では最後にあなたが何も知らないという証拠を見せてください。」

 わかりました、と聞いた時は一瞬安心した男が後半のセリフで固まる。それはそうだ、ないことの証明はとても難しい。例えば地球外生命体がいることを証明するには一つでも生き物が見つかればいいが、いないことの証明をするには全宇宙をくまなく探さなければならず不可能だろう。そこまで難しいことでないにしろ無いことの証明は難しい。

「証拠も何もほんとに知らないんだ。」

「怪しいですね。」

 リサさんはそう言いながら男の脚に刺さった壁の破片らしき物をゆっくりとほじるように、えぐるように動かす。僕は退室しようかな。僕は男の絶叫を背に小屋を後にし、車に乗って扉を閉めた。


 結局のところは特に追加で得られた情報もなく、ただ死体が増えただけだった。僕らは外に出るためのリフトがあるところに向かいつつ話をした。

「あんまり殺さない方がいいですよ。」

「私も無暗に殺すことはしません。今回は受けた被害に対しての報復措置です。」

 リサさんは腕を組むようにして胸もとを隠しながら少し怒り、『ぷいっ』という擬音が似合いそうに頬を膨らませて返事をしている。胸元を隠すというのも車に乗る前に拷…尋問の返り血を洗い流したいといって水浴びをしたため、ちょっと目のやり場に困ることになっている。僕は()めたのだがリサさん曰く、「あんな汚い人たちでは変な病気を持っているかもしれませんので。」とか言っていたけど、もし持っていたら手遅れな気がするが気持ちの問題だろう。

「報復にしては少しやりすぎではないですか。」

「いいんです。バカは死んでも治らないと聞いたことがあるので。」

 見えてきた、スズキがトラックに乗って待っている。

「随分遅かったな。心配してもう少ししたら見に行こうかと思ってたところだ。」

「申し訳ありません。犯人に尋問をしてましたので遅くなりました。」

「てことは急いでここを出なくてもいいってことか。」

「そうもいかないと思う。僕は捕まってから犯人たちの黒幕と思われる人間と話したんだ。おそらく遠くにいて指示だけ出しているから、僕が無事だと分かれば別の人間をよこすと思う。」

「わかった。詳しい話はあとで聞くからさっさとここを出よう。」

 そう言うとスズキは壁から延びる導線を引いて離れる。物陰に隠れるとリサさんに目配せをしてリサさんはと言うと、対物ライフルを変圧器に向けて発射する。するとすぐに辺り一帯は停電となり非常灯のみが光っている。

「発破っ。」

 スズキが導線をつなげた機械のスイッチを入れると小さく『ぱん』という音が連続して何回も鳴る。少し拍子抜けして壁を見ると、最後の1つが爆発すると同時に『ゴッドン』とゆっくり壁が手前に倒れてきた。

「うまくいったな。最小の爆薬量で最大の成果を得られたぞ。」

「うまいものですね。私も見習わなくてはいけません。掃除をするときなどは。」

 確かにすごい。僕はもっと大きな爆発を考えていた。もちろん辺りに音は響いていたが想像よりずっと小さかった。これなら道板(みちいた)を倒れた壁の段差にかけるだけで通れる。がれきの撤去がないので大幅な時間短縮になった。問題はリフトが使えるかどうかだ。

「あとはリフトですね。アキさんお願いします。」

「はいやってみます。」

 電源はトラックの発電機からとるとして回路に不良個所がないことを祈る。

「これはワイヤー式じゃないのか。」

「うん。4か所にあるモーターがギヤを動かして鉄柱の溝に噛んでいく仕組みだね。っと、そこに注油してくれ。」

「ここか。」

 僕は電源をつなげつつスズキに注油作業を頼む。最後にいつ使われたのかわからないぐらい古いのでグリスはカチカチ、オイルはジャリジャリのドロドロ。古い油を取りながらギヤボックスなどに注油していく。見たところ湿度温度が一定に管理されている地下都市の設備なので、さほど傷んではなさそうだ。最後にブレーカーを上げると一瞬火花が飛び通電した。少し昇降させてみたが問題なさそうだ。

「よし行くぞ。」

 最初こそ『ギギギ』ときしむ音がしたが上るにつれて調子が戻ったようだ。今はたまにレールのガイドローラーに油を足しているだけだ。

「地上はどうなってるのかな。」

「さあな。廃墟だらけか、もしくはもう何もない荒野が広がってるかもな。」

「私できれば星というものが見てみたいです。見れますかね。」

「どうだろう。地上は天気が自然に変わるらしいから、雲が出たら空は暗くなるらしいし。」

「では晴れていることを祈りましょう。」

「おい、そろそろマスクと防護服を着た方がいいぞ。」

 ちなみにリサさんは先ほどリフトの修理中にトラックの中で返り血を浴びた服を着替えている。防護服の関係でパンツルックなのだが、これは新鮮で良い。デニム生地がおしりから太ももはパツッとしていていかにも健康そうだ。上は防護服のせいで暑くなるので男物のタンクトップを着ている。女物はなかったらしい。普通のTシャツでもよかったと思うが着てみたかったそうだ。この、男物というミスマッチ感が何とも…。僕ら男どもは普通に薄着をして着た。


 『ガタン』と言ってリフトが自動で止まった。到着したようで目の前に大きな鉄の扉がある。

「いよいよか。線量計は大丈夫か。」

「ああ、しっかりと動いてる。譲ちゃんはトラックで待ってな、俺らで扉を開けてくる。」

 スズキは意気揚々と扉を開けるスイッチを押すが反応はなし。メーター類も消灯されたままなのでそもそも電源がリフトとは別のようだ。

「まいったな。これは200V電源が必要だ。なんでこっちは普通に交流電源なんだよ。」

 二人して頭を抱えていると背後から発砲音が聞こえて振り向く。するとリサさんが対物ライフルで扉の閂のような形の電動ロック部分を数回撃った。『キーン』と言う金属音がしてロック機構が崩れ落ちた。

「錆びているようだったので、もしやと思い撃ってみました。」

 なんか最近はリサさんが生き生きしている気がする。扉は開いたのであとは重い扉を押して開ける。『ギギ、キー』と億劫そうに扉が動き出した。いよいよ初めての地上の世界だ。


 外に出てみて一同びっくりした。資料や教科書で見るような建物の廃墟はほとんどない。もっともここにはもともと建物がなかったのかもしれないが、それにしても何にもない。目の前にはおそらく舗装道路だったと思われるひび割れたアスファルトと、その間から生える膝ほどの背丈の草がぼうぼうと生えている。そのほかはぽつりぽつりと細い木があるばかり。まるでサバンナや西部劇の荒野のような景色だ。

「ここが地上か。何にもねぇな。」

「ところで線量計はいかがですか。」

「そうですね。1μSv/hを指してます。予想より全然高くないですね。」

 リサさんと僕は線量計をのぞき込む。スズキはそんなに心配していないようで、目的地の方角を探している。

「取りあえずこの道に沿って北を目指す。いくぞトラックに乗れ。」

 そして僕らは道が悪いため、普通に走れば1時間も掛からないような道のりを3時間かけて走った。


「まだ着かないのか。」

「もうじきだと思うぞ。あの山のふもと辺りが目的の場所だからな。」

「うぅ、腰が痛いです。」

 さすがのリサさんも3時間座りっぱなしで悪路を走っていると応えるらしい。グーを作って腰をたたいている。

「ははぁ、そりゃアキとヤり過ぎだ。」

「このバカ、僕は何もやってない。」

「そうですよっ。()()ヤってません。」

 うぅん、まだって何ですか予定はあるんですか。それはうれしいことで…。

「子供は多い方がいいですから、たくさん作りましょうね。」

 それを僕に言ってどうしろと言うんですか。

「けっ。」

 一方スズキは自分で振っておいて苦い顔をして唾を吐きそうになっていた。

「セクハラはほどほどにした方がいいと思いますよ。ねっアキさん。」

「リサさんに仕返しされたね。わざと惚気(のろけ)て嫌な思いをさせるなんて…、僕もドキッとしましたよ。」

「あら、アキさんが良ければ私はいつでもかまいませんよ。」

「あぁもう、わかったから俺が悪かったって。」

 これでしばらくは大人しくなるだろう、と思いたい。


「ついたぞ。」

 なんだか揺られ過ぎたせいで停止したのにまだ動いている気がする。『プシュー』とブレーキの音がして完全に停止したことがわかる。

「ここが目的の場所なんですか。」

「うぅん。何と言うか洞窟、坑道いや、防空壕。いずれにしろ気味が悪いなぁ。」

「まあこんなところで悩んでいても仕方ない。お前ら行くぞ。」

 そう言うとスズキは懐中電灯をもって横穴に入って行ってしまう。僕らもそれに続き中に入っていく。ちなみに僕は油で燃えるランタンを持っていく。

「なぜその様な古いもので明かりを取るのですか。こちらの電気式の方が楽ですよ。」

「探検家のつもりか。そんなもの持ち出して。」

「いいんだよこれで。もしこの穴の中が空気が薄かったり無臭のガスが充満してたら酸欠になるまでわからないでしょ。でも火を燃やしてればこの火が消えたら危険だってわかる。」

「なるほどなぁ。」

「よくご存じですね。」

「まぁ消えるくらいの時は末期らしいけどね。」

 どうでもいい話をしつつ近所の散歩ぐらいの気持ちで歩いているが、結構な距離を歩いている。

「実はな、トラックに乗っていたころからこの測位システムが動いてないんだ。この山の周囲3キロは電波が入らない。」

 僕らが地図として使っていたタブレットを取り出して、少し不安そうな表情でスズキが話し始めた。

「これはGPSはもちろん、みちびき、グロナス、ガリレオにも対応している。ついでに北斗とかいうのまで使えるらしいんだが、どれも駄目だ。地上の電波基地もつながらない。」

「地下に入る前からですか。それは変ですね。」

 そう、地下都市の中ではそれ用に設計された測位システムが稼働しているし、地上では旧時代の衛生測位システムなどがいまだ使える…現在は各国が攻撃し、落としあっているが。地下の測位システムは基本的に衛星と同じつくりなので地上に出てからも使っていたのだがこの山の周りだけ、どのシステムも使えないとは不思議だ。

「おい、あれを見ろ。」

 先頭を行くスズキが何かを発見したらしい。近づくとそれは大きな観音開きの扉だ。右の扉には3枚の葉っぱのデフォルメされた様なマークに真ん中から上に向かって棒が出ている。その棒から7つの点が出ていて左右には点が5つの同じようなものがやはり葉っぱから出ている。左には何かの花びらのようなものの中に『統』の字が書かれている。何より存在感があるものは扉の上に位置する黄金の飾り。真ん中には小さな真円がありその周りにはドロップ型を縦に引き伸ばしたようなかたちが16本、真円から延びるように描かれている。

「これは、写真で見たことがある。昔使われていた国の印だ。」

 僕は葉っぱのマークを指してそう言った。

お読み頂きありがとう御座います。


 現実のリサさんの名前を借りた方は可愛く、クラスというか学年で見ても変人と嫌われていた私にも話しかけてくれてましたね。部活も違うし何でだろうか。人間ができた人だったんでしょう。

 背格好は全く違う人にしてますので、借りたのは名前の読みだけですから。キモがらないで下さい。

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