告白と夜
こうして書いていると恥ずかしいこと極まりないですね。とても人様に公開できる代物ではない気がしてきます。やさしく見守ってください。
「ここで行き止まりですね。」
リサさんは壁に手を当てて困り顔。
「もしかして地上経由じゃないといけないところですかねぇ。」
僕もどうしたものかと考える。
「取りあえずはゆっくりできるところを探しますか。」
そう提案すると異議なしということで比較的安全なところを探す。地下都市もここまで下の番号になると、ほぼではなく完全に無法地帯と化している。今いる地下都市の外周部は比較的人が来ず安全なのだがそれを狙ってたまに強盗が発生するようだ。そのためもう少し中央寄りの決して良くはないが極悪でもない人たちが集まるところを探す。すると前金で1,500地下都市付近の相場の1週間分支払えば3日ほど泊めてめてくれる家があった。そこで休みながらこれからのことを考える。
「とにかく情報収集をする。俺はトラックにこもってこのあたりの地図と保守点検用の地下通路の詳細と、地上の放射線量を調べる。お前らは食料調達でもしてきてくれ。」
とスズキが言うので僕ら二人は買い出しというより収集に向かった。
食料品以外は市が出ており、行商人のような半グレ連中が商売をしていた。そこを過ぎて工場街に行く。昔は管理されていたと思われる食品工場が立ち並び、そこでは野菜や肉が製造され人によるメンテナンスは不要で自立稼働している。人口はとても少ないので普通なら足りるのだが、ここは無法地帯で悪い奴らと偉い奴らはおんなじ考えをする。既得権益化するために自由に食料は持っていけないようで工場のとなりには腐敗した食べ物の山と、中に入れてもらえずゴミをあさる人や餓死した人がいた。僕らは工場正面に行き交渉をする。
「こちらで食料が製造されているようで僕たちも頂けないでしょうか。」
「ここをなんだと思ってるんだ国営工場だぞ。ここにあるものはすべて国のものだ。まあ交渉次第では考えてやる。」
もう放棄されて久しいであろう工場に絶対で、公務員とは思えない連中がそんなことを言ってくる。
「では何が欲しいですか。金かですか。」
「ここで金があってなんになる。せいぜい金をしゃぶって飢え死にするだけだ。」
「では何ですか。」
「そうだな、今は娯楽がほしい。酒、薬、うまい本物の肉、何ならここで殺し合いをしてもらってもいい。おっ、そうだその女がいい。」
「駄目ですこの人は僕のものです。酒や薬も持ってないです。」
「おめぇの女だとぉ。ガキが偉そうにしやがって、お前みたいな頼りない男より俺たちといたほうが楽しいぜお嬢さん。」
「こんな男絶対つまんないって。すぐ死んじまいそうな辛気臭い顔してるしよぉ。」
世界の半分は女なのになんでそんなに欲しがるかね。ちなみに指名された本人は回れ右して車に戻る。実際弱くてリサさんに守ってもらっているので言い返せないが忠告だけはしておこう。
「あなた方のためにも食料を渡した方がいいと思いますよ。」
「あぁん。なんだって。もう一遍言ってみろ。」
しかし時すでに遅し、リサさんは拳銃を構えた。それに気づいた連中は慌ててレーザー銃を向けようとするが反応が早い人順でリサさんに撃たれる。手元にあったはずの銃は既に鉄くずになっており全員戦意消失。
「お触りがない限りお掃除しないんじゃないんですか。」
「はい。ですから命はとっていません。あなたたち、私のことは何と言ってもらっても構いませんがアキさんを悪く言うと次は玉、片方取りますよ。」
リサさんは『あなたたち』以降声のトーンが落ち、視線が鋭くどす黒いオーラを放っている。ほら、玉をとるとかいうから皆さん手で股間を隠しちゃったじゃないですか。僕は目玉だと思ったのですがどちらが正解でしょうか。とりあえずリサさんをなだめよう。
「まあまあ。それで食料はわけていただけるんですか。」
「このっ、女に守られてはずかしくないのか。」
「おいよせ次は玉取るってあの女が言ってんだ、さっさと渡して帰ってもらえ。」
その後、案内されて食糧庫に向かい持てるだけの食料を積んで帰る。帰り際にひとこと言わせてもらおう。
「また食料を独占するようなら頭が吹き飛ぶと思えよ。」
すると奥にいた男が「てめぇは何にもできないくせに。」とかつぶやき、リサさんに睨まれてそっぽむいてたりした。
宿に帰るとスズキのほうも片付いたようで会議が始まる。ちなみにリサさんは食事の支度をしてくれている。
「まず地図と目的地だがこのあたりで間違いない。そしてここに行く経路だが一度地上に出なくてはならないようだ。そこで地下都市のここの壁に建設時に使われていた大型リフトが埋まってる。壁は発破を仕掛けて吹き飛ばすしかない。」
スズキは紙の地図にペンで丸を書きながら説明した。
「そうか…、ちなみに外に出られたとして放射線はどうだ。」
「その辺は何とか大丈夫だろう。波はあるが6μSv/hから10μSv/hぐらいで対策をして少しの間なら大丈夫だ。」
「対策というと、どの程度すればいい。」
「まずマスクは必要だな。風が吹けば放射性物質の埃がまうからフィルターが付いたガスマスクみたいなのだ。それから肌が露出しない格好をする。」
なかなか装備集めが難航しそうだ。服は簡単だがマスクは見つかるかわからない。
「マスクが問題だと思ってるかもしれないがあてはある。」
「本当か。」
「ああ、昔ここに納品に来たことがあってな。そのとき知り合った女がいて、軍関係の横流し品をなんでもそろえてる。」
「それはすごい。すぐに行こう。」
「ただし奴はちょっと変わっていて…人間ならだれでも襲う。男女問わず掘って喘がせるのが好きらしく、俺もケツを狙われた。」
「…。他にあてはないですか。」
「ない。」
そんな馬鹿な。すぐそこにゴールがあるのにそのゴールが地獄の中に立っていた。言葉が片言になってきた。
「ちなみに以前はどうやって回避したんですか。」
「一緒にいた奴に犠牲になってもらった。」
「…今回はどうします。」
「アキ頼んだ。」
「嫌だ。確かに巻き込んだのはこちらだが、それとこれとは別だ。」
「じゃあどうする。奴の協力を得るには誰かに犠牲になってもらうしかない。」
どうする。これは以外に難問だ。いっそのことマスクなしで行ってしまおうか。
「では私がその役をいたしましょう。」
いつの間にか食事を持ったリサさんが後ろにいた。
「いや…、しかしそんなことは頼めませんよ。そうだ、その辺のチンピラ捕まえて引っ張っていったらどうですかね。」
「だめだろうな。結構審査がきびしくてこの辺のチンピラでは相手にしてもらえないだろう。そこ行くと譲ちゃんならちょうどいいかもな。同性だから手加減してもらえるかもしれん。何より美人だ。」
それでも納得できないでしょう、こんなことをお願いするなんて。掘って喘がせるのが好きとか間違いなくリサさんの何か大事なものを奪われる気がする。しかしこれといった名案も浮かばないのでこういう時は諦めて、
「またあとで考えましょう。せっかくのリサさんの料理が冷めてしまいますし。」
とりあえず問題は先延ばしにした。魚と鶏肉の中間のような味の何かのフライとパン、それから野菜のスープ。最後にリンゴまでついてる。フライなどという油を使う料理はなかなか口にできないためスズキも飛びついた。
「いやぁうまいな。こんなうまいの食堂でも食ったことねえよ。しかも最近は変な味の総合栄養食だけっだったしな。」
「ほんとだ。すごくおいしいですよ。今日日、男女差別と言われそうですがこれからずっと僕にご飯を作ってほしいです。」
スズキがこちらをジト目で見る。そんなまずいこといったかな。リサさんはというと自分の分の謎の肉のフライを取り落として、こちらを見た後で何か覚悟を決めたようだ。えっ、そんなにダメな発言でしたか。僕絞められちゃうのかな。
その後はというと、なぜかリサさんは今夜一緒にトラックのコンテナで寝ましょうとか言い出して、いつも家では夜遅くまで作業をしているスズキが今日はキャビンで早く寝るという。これ完全に怒られるやつではないか。逃げたいけど外も怖い。前門の虎後門の狼といったところ。だったらネコ科が好きな僕としてはトラ、この場合リサさんということにして進むしかない。1時間以上の入浴をしたリサさんが例の制服に着替えてコンテナに入っていった。ちなみに逃亡を開始して初めての夜はダンプで襲撃後、逃げて給油所で仮眠をとったのだがスズキはコンテナ内でパソコンをいじりながら寝落ち、リサさんはキャビンの仮眠室、僕は車の運転席を倒して寝ておりそれがデフォルトになる予定だった。
「失礼します…。」
僕はそおっと中をうかがいながら入室する。すると意外なことにリサさんは少し緊張した笑顔でいた。そして僕の手を取って背負い投げ…する訳でもなく、そのまま簡易ベットまでドナドナされる。
「さあ、お願いします。心の準備はできています。…できれば優しくしてほしいです。乱暴なのがお好きでしたらがんばってみますが、先に言っていただけると嬉しいです。」
ベットに座ったリサさんは目をギュッと閉じて少し顎を上げる。いかんでしょうこれは。いくら僕でもわかりますよ、このままキスして欲しいということでしょう。そしてふたりだけの空間で始まったら止められる訳も止める理由もなくなってR18コースです。初等部の子供でも分かるよね。しかしどこでどう転んだらこうなるのか、態度が変わったのは食事の時からだ。あの時の発言でなぜこうなるのかさっぱりだが今は原因追求より事態の対処をしなくては。危うくしっとりとした唇や上着《うわぎ》の上からも分かる柔らかそうな胸。短めのスカートから覗く一流の料理人が作ったホワイトソースのように滑らかな太ももからふくらはぎの曲線、さらにはまだ乾ききっていないブラウンに白のメッシュ入りの髪に至るまで全てに魅了され手を出すところだった。なんとか話題を別の方向に変える、と言うより捻じ曲げなくては。
「そういえばリサさんの髪きれいですよね。栗色の毛に白のメッシュがアクセントになっていて、染めているんですか。」
この方向で間違ってないか不安だが他に思いつくこともなく自信なく質問してみた。しかし間違ってはいなかった、というかこの質問で当面の危機は解消できたのだが空気が一変する。
「きれい…ですか。こんなのが。」
悲しそうな表情になり僕は焦る。やばい聞いてはいけないことだったか。黙っていたのが悪かった。
「私の髪はもともとブラウン一色でした。でも7年前、先代様にお世話になる前に私は突然一人になりました。父はいなかったのですが、母が強盗に殺されて私はそのままさらわれて少女兵として教育を受けたのです。女の子なら警戒されにくく、大人になればハニートラップ等で諜報活動がしやすいので重宝されるようです。しかし私は入隊が遅すぎました。周りの子は10歳未満のうちに基礎的な訓練を終えるそうです。ですから私の訓練内容は周りの2倍ほど多いもので休みはありませんでした。4か月で基礎訓練さらに次の2か月で射撃訓練、髪の色が変わったのは対拷問訓練が始まったころでした。」
ついつい聞き入ってしまう。それは自分が好きな相手のことをより知りたいと思うためと、思い出させた責任として受け止められればと思ったためだ。
「まずは簡単な痛みに耐えることから始まり、少量の自白剤投与による耐性づくりなどもされました。そのころからだんだんと髪に白髪が混ざり始めこんな色になってしまいました。それでもこの髪はきれいで、す…か。」
僕は気づいた時にはリサさんを抱きしめていた。どうしたらいいのか分からないが一つだけ言えることがある。僕は両肩に手を置いて目を見つめて思ったことを伝える。
「理由なんて気にしませんよ。そんなことが、僕には想像もできないそんな辛いことがあったなんて知りませんでした。辛いことを話させてしまってすいませんでした。」
「理由なんて気にしない、ですか。でもそれだけじゃないんです、他にも羞恥の感情を抑えるために人前で肌をさらすような訓練やもっと恥ずかしいことだってさせられました。でもここ数年普通に暮らして羞恥心も戻ったと思っていたんですが違ったようです。どこまでが恥ずかしく思うことなのか基準があいまいになったままです。知らない人に触られれば嫌だと言う気持ちになりましたがアキさんなら何をされてもいいんじゃないかと思ってしまいます。こんなはしたない女なんて嫌じゃないですか。」
「僕は今のリサさんが好きです。外見も内面も、強いところも。それで思うのですが僕はリサさんとならどんなことでも、言い方は悪いですがエッチな事もしたいと思ってしまいます。開き直っているようですが、それは普通のことなんじゃないでしょうか。もしリサさんが僕に好意を抱いているとすれば、ですけども。」
「アキさん…。たぶん好きです…。ということは普通のことなんですね。」
というリサさんは飛びついてきたと思うと僕の左足の内側に片足をかけ、ふくらはぎあたりで払いながら僕を押し倒す。そのまま僕の上に進み出てきて仁王立ちをし、そのまま座ろうとするので全力で逃げながら、
「でも順序はまもりましょう。まずは手をつないだりそんなところではないでしょうか。」
「そうなんですか。私は恋愛がどのように進むのかわからないので…。」
「僕も初めてですから、気にしないでください。」
そう言ってふたりで黙ってしまいとりあえずベッドに座り手をつないでみた。なんだかお母さんと散歩をして手をつないだことを思い出すが、その時とは少し違う。指もからめるようなつなぎ方になり、そのままやめるタイミングを失い2人で横になりながら話していたが寝落ちした。
起きるとまだ手をつないだままで、狭い簡易ベットで寝ていたものだから密着している。どうやら先に寝てしまった僕を壁際に寝かせ、その後リサさんも寝たようで現在退避スペースがない。リサさんが起きるまで暇なので寝顔を観察してみる。覗き込んでまつ毛長いな、なんて考えているとリサさんの顔が赤くなってきた。これ起きてるやつですね。
「おはようございます。起きてますよね。スズキさんもいますし、そろそろ出ましょう。」
「おはようございます。そうですね。」
嬉しそうに起き上がり髪を軽くとかして、
「落ち着いたら染めようかと思っていたんですけど、このままでいいですか。」
「はい、いいと思います。僕はその色好きですから。」
外に出るとスズキはコーヒー、と言ってもパンを焦がして作った代用コーヒーを飲んでいた。こちらを見て少し考えた後、トラックのコンテナに入りすぐに出てきたと思うと僕の腕を引いてトラックの影に入る。
「おい、夜何してた。正直に言ってくれ。」
「特に何も。強いて言うなら昔の話を聞いて、手を握って寝た。」
スズキは1,2歩後ずさると額に手を置いて、
「まじかよ。何も無かったって保育園児かお前ら。なんにも思わなかったのかよ。」
「そんな事はないけど、今はいろいろ大変だしね。一応告白のような事はお互いにしたからこれからかな。」
「ふぅん。まあそれだけ大切な人って事か。それで話は変わるが例の女の件誰が行く。」
「一度あってみようと思う。それから交渉して出来れば物々交換でマスクを貰いたい。無理でも僕が犠牲になろうかと。」
「わかった。行くだけ行くか。」
そんな話をしていると、インスタントご飯と味噌汁、長方形のブロックなのに味は魚の焼き物が用意してある。またリサさんに作らせてしまった。3人で美味しく頂くとスズキの案内で知り合いだと言う女の所へ行く。『尻愛《しりあい》』の間違えではないかと思う。
宿からそう遠くないところにゴミ捨て場のような倉庫があり、その中に入っていくと異様な光景が目に入ってくる。壁に吊られたままミイラ化した人が何体か。男女問わずだ。まだ生きてるのも、ひとりふたり居るかもしれない。風で揺れてるだけかな。
「よう、相変わらずイカれてんな。」
スズキは女に挨拶らしき言葉をかけた。
毎度ありがとうございます。
さてさて私の分の書き方について読みにくいと感じられるかと思います。「!」や「?」を極力使ってないので感情や語気が分かりにくくなっています。正解はありませんがお読みいただいた方の好みに合わせてキャラクターを微調整して頂きたく存じます。