表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逃亡中の元貴族  作者: お猫様の従者
2/13

再会と始まり

妄想メモ2話目。なんだか方向性がわからない。下手打つとノクターン行きになりそうな展開が頭の中で進行中。うまく分離できれば番外編がノクターン行きになるかも?


「やっと見つけました。坊ちゃま…いえ、御主人様。」

 そう言った彼女は少し潤んだ瞳で僕を見つめている。どう返していいのか考え黙っていると不安そうにこう続けた。

「覚えておられませんよね…。半年ほど前まで使用人としてお世話になっておりましたリサでございます。」

 覚えてますとも。むしろ忘れた事は無いくらいです。家では立場上、付かず離れず主の息子とその従者として振舞って居たが本当は初恋の相手だった。

「覚えている。いや、います。リサ…さん、誕生日おめでとう…ございます。19になりましたよね。」

 そう答えるとリサはパッと明るい顔になり、助手席を指しながら僕に聞くのだった。

「お隣失礼しても宜しいでしょうか。」と。


 今僕の隣には少しウキウキしながら8割程の不安を振り撒いている元使用人がいる。

「何でこんなところに来たんですか。もう雇用関係になく退職金もあるんですからもっと良い都市にいられるでしょう。」

 ここの環境はどちらかと言えば悪い方。もっときれいで住みやすいところはいくらでもある。少し俯きながら彼女は答える。

「勝手な事とは存じますがどうしてもお会いしたく、探偵を雇ってお探ししておりました。退職金は調査費にあてました。」

 驚いて彼女の方を見ると彼女も僕をしっかりとみて続けた。

「教えていただきたいのです。何故(わたくし)が解雇されたのか。ご先代様にもメイド長にも教えては頂けませんでした。私が何か粗相をしてお怒りになられたのだと思い考えましたがどうしてもわからないのです。」

 だんだんと小さくなる声。そんなもの分かるわけがない。理由はもっと深刻なところ、家の改易と関わるところだ。それを話すとなるとこんなひと目がある所では話せない。

「なぜそこまでこだわるのですか。ただ人員の整理のためかもしれませんよ。」

「そんな筈はありません。だって…」

 彼女も何か隠しているようだ。ふぅ、とため息をして僕は。

「ここでは話せないこともあるので後ほど僕の家に、これが住所です。それとも一緒にいきますか。」

「ありがとう御座います。でも後程お伺い致します。お話は…怪しい人が私をつけているので撒いてからにします。」

 そう答えると彼女は駅に消えていくのだった。


 僕は急ぎ帰り家を片付ける。ここに越してきて初めての来客なので少し緊張する。相手が同年代のかわいい元使用人だからではない。断じて、御先祖様に誓って。と思って掃除していたら頭に祖父の遺影が落ちてきた。どうやらばれてたみたいです。


1時間ほどしてコンコンコンと玄関から音がした。僕は除き穴から来訪者を確認してドアを開ける。

「お待たせして申し訳ございません。不審な男を撒くのに時間がかかりまして。」

「大丈夫です。僕も今までいろいろ準備してたので。どうぞ入ってください。」

 そう促すと少し申し訳なさそうに、

「あの、水道を使わせてもらえませんでしょうか。男を撒くとき少々足元が。」

 見ると彼女のスニーカーはだいぶ汚れていた。黒いタイツもふくらはぎ位まで泥のようなものがついている。膝丈のスカートとブラウスにも所々汚れが付いていた。

「気が付かなくてすいません。ところで何処を通って来たんですか。」

「えぇと、農業技術保存会の畑の中を通って、近くの地下鉄の排水道に入り熱交換所の排気ダクトから地上に出て、後はこちらまで裏の排水川の中を歩いて参りました。」

 見かけによらず凄いことをサラッとやってくれる。ただの元使用人ではない感じが凄い。僕を探すのも自力で出来たのではないだろうか。そうこぼすと人探しは専門外だそうで、じゃあ専門は何だろうと口にするのは止めておく。

ガレージの洗い場に案内しながら話す。

「ところでその話し方やめて普通にしませんか。もう雇用関係にないので、僕のことはアキと呼んでください。」

「…分かりました。ではアキさん少し席をはずして頂け…もらえませんか。そのタイツを脱ぐのに少し恥ずかしく…。」

「かさねがさね気付きませんで。」

そう言い残し先に部屋にはいる。


しばらくすると素足のリサさんが上がってきて僕の向かい側に座る。白いなぁ、柔らかそうだなぁ、脚。

「あんまり視ないで下さい。恥ずかしいですよ。」

「すいません。えぇと何から話しましょうか。」

「私を解雇した理由をお願いします。」

「それを話す前に聞きたいことがあります。あなたはいったい何者なんですか。ただの使用人とは思えません。この話しは大変危険なんです。」

「危険については承知しています。私が何者かは解雇理由を伺った後、お話しさせてください。」

 僕はしぶしぶ約1年前の出来事を話し始めた。


場所は第47地下都市の家。そこに政府外交部、総務部、貴族院等の連名で呼び出し命令が届く。ちょうど父の具合が悪く、兄を亡くしたばかりの我が家の当主代理として僕が出向く。そもそも核戦争後の新政府の人手不足により各地で暴動が発生、それを抑え治安の安定を計る目的で創られたのが現代の貴族だ。各地下都市の産業でトップの企業に税金の優遇をする代わり政治的責任を負わせる制度で、簡単に言えば戦後の混乱に乗じて稼いだ成金連中の集まりだ。そのためお国のご意向には逆らえないのが今の貴族。間違っても国会の様なところで会議に出席などできない。国が白と言えばカラスの色だって白だ。

「マキダ家当主代理、マキダ アキでございます。」

 と言うと重厚な見た目の扉が開く。中に入ると普段ならまずお目にかかれない各大臣の御歴々がお揃いだ。部屋の奥一段上がったところに空席の玉座があり、その下に左右の壁を背に中央を向く方向に座っている。今更だがただ事ではない。外交部の所属らしき男が大臣の代わりに僕に告げる。

「先般A国のトップシークレットに当たる文章が流出した。A国の捜査情報のリークによればC国の仕業である事はほぼ確実で、我々もそうみている。しかしここで大きな問題がある。もしA国のと共同で真実を公表すればまた核の雨が降ることになるだろう。そこでA国は捜査機関の面子を立てつつ幕引きを図る為に我が方に犯人を()()()()()()と言ってきた。そして我々の調査の結果マキダ ソウイチ氏が怪しい(はんにん)と結論づけた。従って処分が決まるまでマキダ家の全ての権限と外出の自由を剥奪する。7月16日、只今より24時間体制で監視がつく。監視部隊には発砲の許可を与えてある事を留意せよ。以上。」

 そう言い終わると僕の後ろには小銃を持った男が二人立った。反論は勿論、発言すらできない状況になりそのまま連れ去られる様に自宅まで護送された。


 制限があるとはいえ色々と抜け道があり僕なりに調べた。どうも貴族連議長は味方で、今回の通達文が詳細に書かれていたのも議長の働き掛け。せめてものお詫びと言うことらしい。そして処分自体も軽くなるように交渉してくれているようだ。しかし国としてはうちは邪魔な存在らしく、今回のことを好機と見て絶対に潰す勢いが見て取れた。

 結果的に父は死罪で家は改易となった。母は生涯軟禁されるだろう。そして最も意外なことに僕は何も知らなかったと結論付けられ第1000地下都市以上からの追放となり、当時在籍していた何人かの使用人は第900地下都市以上からの追放で済んだ。おそらく議長のおかげだろう。


これが1年から半年前までの出来事だ。話したことがお上にばれたらと思うと胃が痛む。そしてこの話からすべてを察した様子のリサさんはこちらをまっすぐに見て口を開いた。

「では本当に私の責任ではないのですね。」

「はい。あのまま家の使用人を続けていればリサさんも処分が決まっていたでしょうし、何より知っていることが他の方より多いようだったので私が勝手に決めさせていただきました。」

 そう、僕は自身が多少家業に携わるようになってから薄々勘付いていたが、うちにいる使用人は普通じゃない。たまに居なくなったと思えば夜中にこっそり帰ってきたり、時々怪我もしているようだった。父は実際に非合法すれすれの仕事も多数請け負っていたようでたまに()()()()()なることも使用人にさせていた。結果、代々仕えてくれていた使用人の家族なんかは父と一緒に非公式で死罪となった。リサさんもまだ日が浅めとはいえここ4年ほどは()()()の仕事もしているようだった。そのときはまさか使用人まで死罪になるとは思わなかったが捜査が及ぶまでの僅かな時間で追い出すように解雇し、できるだけ遠くに、追い払うようにして逃した。戻られては困るので。それが好きな人にできる僕の精一杯だった。

「私は()()()()専門でしたので情報収集は苦手で…、知らなかったと はいえお家の一大事に不在であったこと深くお詫び申し上げます。」

重たい空気を吹き飛ばそうと話題を変えようとする。

「さてこれでこの話しは一旦終わりにして、これからどうする。行くところはあるかい。」

「もう行く宛はないのです。」

 ヤバい、もっと重い空気になった。どうしようかと考えているとリサさんはこう続けた。

「ここに置いてもらえませんか。何でもしますから。」

「まぁ、少しの間なら良いけど。」

「出来ればずっと…」リサさんが言いかけたとき外から拡声器で呼び掛けられた。


『おーい、アキ。居るのはわかってる。いい加減町から出ていったらどうだ。』

「よしそれで良い。」

「お宅らいったい何なんだ。いくら治安維持隊の後ろ楯があるとは言えただじゃ済まない…。」

「いいから言われたようにしろ。おい、EMP用意チャージできしだい打て。周りの施設に影響が出ないように最小出力だぞ。それでも十分350pm(ピコメートル)プロセス以下のチップは焼ける。」

スーツの男が部下らしき男に指示し、拡声器を持った男に視線を向けると、

『出ていかないなら今からあぶり出すぞ。』

登場人物の名前は作者の知り合いの名前を使ってカナにしています。それぞれ別の知り合いなので、現実のスズキとリサは知り合いじゃありません。この後も飽きない限りこの世界を妄想で発展させていきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ