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『≪ナイトウォッチャー~深淵より生まれ落ちし悪意の看視者~≫――カズキ早く寝なさい明日も学校よ』

作者: 頼瑠 ユウ

我ながら、ひっでぇー奴が出来た。


( ゜Д゜)おかーさーん!!

 “此処は廃虚となったアパートの一室”だ。


「――五、四、三……」


 俺は腕時計を見ながら呟いた。

 深夜零時。


 日付が変わる瞬間に世界は一度、停止する。


 昨日でも今日でも明日でもないその刹那。虚数世界がこの物質世界を塗り替えるのだ。

 その虚数世界の果てに存在する深淵――そこから異形の化物『アンノウン』が這い出てくる。


 皆は知らない。


 いや、虚数世界が物質世界を塗り替えている間は、『適正者』以外は時間が止まってしまうから知るよしもない。


 そう。

 この俺、異神一鬼いがみかずき以外は。


 ――まぁ、俺が知らないだけで今も他の『適正者』が深淵に備えているかもしれない。

 名も知らない同業者の武運を祈り、その時を迎える。


「二、一、――零!」


 俺は手にしているリボルバーの弾倉を見て、僅かに眉を顰めた。


「……これで足りるのか――?」


 本来は六連装だが、今は五発分しか装填されていない。

 対異形様に魔術的な加工を施した特殊弾:【竜の息吹ドラゴンブレス】。


 生成に膨大な魔力を要する為に今日はこれだけしか用意出来なかった。

 “大物”が現れたら五発では――


「いや……そんな弱気じゃ駄目だ」


 今も誰かが異形と戦っているかもしれないのだ。同じ力を持つ俺が負ければ彼等に負担が掛かってしまう。

 それに、


「俺が皆を守るんだ……!」


 弾倉を押し込んで、ハンマーを起こす。

 一発が竜の一撃に匹敵する俺の究極兵装アルテマウェポン

 例え巨人型だろうと屠ってみせる。


「――っ、なんだ!?」


 バサバサとカラスに似た黒い鳥型の異形が飛び立った。

 小型の異形は物質世界に影響を及ぼす程の力は無い。


 倒せば倒すだけ、深淵の侵食は抑えられるが今の武器は僅か――口惜しいが、見逃すしかない。

 唇を噛みしめると、宙を舞う黒鳥の一羽が落ちた。


「……?」


 また一つ、その次も――。


「そうか、此処の屋上か……!」


 どうやら同じ廃虚に先客が居たらしい。

 音も無い正確な射撃――魔術による隠蔽を併用したスナイプ。


 これは心強い。

 虚数世界はその領域を支配する特殊アンノウンを倒せば消える。後であいさつをしておこう。


 その腕前に関心していると遂に全ての黒鳥が落とされた。


「まったく、頼りになるぜ」


 だが、恐れていた事態が起こってしまった。


 ――大きな地鳴り。


 廃虚の目の前の地面から黒い泥が溢れ出した。その泥は噴水の様に勢いを増していき――人の形を成していく。


「まさか……『深淵の巨人』!?」


 深淵の泥が直接、異形となったイレギュラー。

 その力は通常種とは桁が違う。


「だが、このまま『完成』し、“深淵そのもの”になってしまえば、物質世界が崩壊する!」


 それだけは――、


「此処で、止める!」


 そう想ったのは、屋上のスナイパーも同じだったようだ。

 立て続けに狙撃。


 泥の巨人の身体に穴が空くが、瞬く間に新たな泥が埋めてしまう。

 巨人はスナイパーを“視た”。

 泥の剛腕が振り上げられる。この質量の一撃は並みの防御魔術では防ぎ切れないだろう。


 この【ドラゴンブレス】でもダメージになるかは分からないが、迷っている場合ではない。


「“咆えろ”!」


 狙いを定め、引き金を引いた。

 青白い閃光がその腕を吹き飛ばす。


「ォオオオォォオォオオォ!!!!」


 大気が震える悲鳴。

 腕の再生が始まるが……


「! 時間が掛かるのならっ」


 殺しきれる!

 一瞬、止んだ屋上の狙撃が再開された。


 頭部を集中的に狙っていく。


「――そこを狙えという事かっ」


 生物の急所が異形の急所とは言い難いが、狙いは悪くない筈だ。


「“咆えろ”!」


【ドラゴンブレス】の二射目。


 巨人の頭部が弾け飛ぶ。


 しかし、


「オオオオオオオオオオオ!!!!!!!」


 どこからか、咆哮が轟く。


 ――核だ。


 あの泥の身体を形作る為の中心がどこかにある筈。


 だが、どこを狙えば良い?


【ドラゴンブレス】は残り三発。


 外せば終わりだ。


 少しの間を開けて、再び狙撃――いや、銃声が連続で響き威力も低下している。

 連射型の武器――マシンガンに切り替えたのか。


 ダメージや足止めが目的ではなく。


「あぁ、良いコンビになりそうだ」


 面による連射で泥を削っていく。

 左脇腹に紅い岩の様な塊。


 ――そこかっ!


【ドラゴンブレス】三度目の咆哮。


「何っ!?」


 残る腕を盾にして核を守った。

 残りは二発。


 だが、両腕を無くした巨人は無防備。


「外しはしない……!」


 四発目の【ドラゴンブレス】が紅い塊を捉える。


 やったか!


 ――オォォォォォオオ!!!!


 巨人の咆哮が轟く。


「っ、何て硬さだ!」


 残りは一発。

 これで倒せ切れなければ世界が終わる。


 出来るのか、俺に――!


 否、するのだ。


 俺が、俺達が――!


 屋上から無数の手榴弾が投擲され炸裂し、鎖が出現した。ソレは巨人に絡みつき動きを封じる。


「――この世界を……!」


 俺は銃口を向け、覚悟を決めた。


 そして引き金を引き、五度目の【ドラゴンブレス】が咆――、









「ちょっと一輝かずき、何ブツブツ言ってるの! もう十二時過ぎてるんだから早く寝な! 学校遅刻するよ」






…。


……。


………。






「お母さーん、リボルバーのカードリッジ知らない? 一個なーい!」


「カードリッジって何?」


「BB弾入れる奴! 知らない?」


「知らないよ、どこ置いたの」


「机の上に置いたけど無いんだよー」


「だから箱に仕舞いな、って言ったでしょ! それにBB弾も片付けな! リビングにも落ちてんじゃないの! 捨てちゃうよ!!」





リボルバーのモデルガンはお父さんに買ってもらいました。

お父さんは優しいから、予備のカードリッジをドン・〇ホーテで買って来てくれる。


井上一輝イガミカズキ君は健全な中二男子です。

これ以上広がるかもしれないし、広がらないかもしれない……

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