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ー大図書館3ー






「で、十二天将たちはその力をそれぞれ信頼のおける人間に託したの。それが私たち、十二天将の力の継承者ってわけ」

「千年も前から・・・」


十二天将が託したものがこうして千年脈々と受け継がれている。彼と交わした約束と共に。

なんて途方もない話だろうか。こうして守り続けてくれた彼らに愛しさが溢れてくる。これは多分、彼の感情。


「あの約束がこんな形で叶えるなんてな」


雅也さんが優しい目でこちらを見ている。

ねぇ麻結莉ちゃん、と百花姉さんが私を呼んだ。


「私たちと、契約を結んでほしいの」

「それは、先ほどの話にあった九尾の力を完全に消滅させるという術に関係が?」

「えぇ、話が早くて助かるわ~」

「嬢ちゃんは賢いな~」


むずがゆい。


大図書館(ここ)に入る扉に六芒星の陣があったでしょう?あれが、その術の陣」

「あれは天照(あまてらす)月読(つくよみ)という二つの術を掛け合わせることで、より強力な術になっている」


まぁそれは今はどうでもいいか、とボリボリ頭を掻きながら雅也さんが呟く。えっどうでもいいの?結構真剣に聞いてたのに・・・。


「この術には名前がない」

「さっきの名前は?」

「あれは二つの術、それぞれの名前だ」

「まったくーもう。説明が下手ね。これじゃあ日が暮れちゃうわよ。

あのね、術というのは名前がないと発動しないものなの。しかも、その術を作った人にしか名前はわからない。あのとき晴明様に託された二つの術にはそれぞれ名前がかいてあったのだけど、肝心の二つまとめた本命の術の名前がどこにも書いていなかったのよね~」


うっかり屋さんよね~と百花姉さんが笑っている。・・・笑えない。いつも無表情だろ、というツッコミは今は無しで。

ちょっと~私の中の人がどえらいうっかりやらかしちゃってるんですけど~。


「術の名前、わかる?」


期待に満ちた眼差しを向けられる。期待には応えたいけれども、そんな重要なものの記憶は、ない。


「すみません」

「いいのいいの。わからないのなら、名前つけてなかったのかもね。もともと」

「そう言ってもらえると助かります」

「その代わりと言っちゃなんだけど、名前、考えてくれない?」


一瞬、頭がフリーズした。なまえ、名前?術の、名前!?ム、ムリムリムリムリ!


「そんなに青ざめなくても大丈夫よ~名前なんてフィーリングよ!」

「3人の子供の名前もフィーリングだもんな」


子供3人いるんだ。じゃない!


「名前なら、私じゃなくてもいいんじゃ・・・」

「いいえ、あなたじゃなきゃダメなのよ。彼と全く同じ霊力を持つあなたでないと。」

「霊力?わたし霊力なんて持ってないですよ。一般人ですよ」


4月からキラキラの高校生活を送るごく普通の女子高生のはず。霊力なんてもの持ってない。そんな普通ではありえない代物、遺伝的にもあり得ない、はず。


「ライ、とかいうヤツに襲われたときから、麻結莉からは霊力があふれ出ている」


気づいてなかったのか?と連吾が呆れたような顔で言ってくる。

うそぉん。そんなアンユ―ジュラルなもの、JKライフにはいらないのにー


「しかも、その霊力、俺達には心地いいが、禍とか陰のものにはかなり不快なものだろうな。狙われるぞ」

「狙われる・・・うそ」


怖い。また昨日みたいに追いかけられるの?


「だからな、十二天将(俺たち)が守るから、契約しよ~ぜ?」


な?とニヤっと笑って八重歯がキランと光る。あら素敵、じゃない!狙われるのは嫌、でも普通の生活を送れなくなるのも嫌。わがままを言っている自覚はある。


「その契約は()()()私のためのものなんですか?」

「鋭いな、()()()本当に嬢ちゃんのためだよ。」

「もう半分は?」

「千年前に使役契約を行ったのは、十二天将が人界にいるために少しずつ晴明様の霊力をわけるためだった。神が人界に居続けるためには人間とのつながりが必要だからな。」

「だから彼が亡くなったあとは、十二天将は人界にはいられなかったんですね」

「そういうこと」

「では、今のあなたたちが契約を交わす意味はなんでしょう?」

「使役契約は互いに霊力を分け合うことで成立する。わかりやすく言うと、自分の一部が相手の体にあるようなものでな、あーその、あれだ」

「つまり、お互いの位置がわかるのよ」


大雑把にだけどね、と言われましても。


「互いに位置がわかることが契約する理由、ですか?」


よくわからない。美形たちの位置がいつでもわかるようになるとか私にストーカーになれということでございましょうか。


「安心するのよ十二天将(わたしたち)が」

「あんしん・・・」


むしろストーカー予備軍の私に知られるのは危険なのでは。


「私たちの血が、魂が、もう離れたくないと、失いたくないと叫んでいるの」

「契約を行ったら、互いの気配をいつでも感じるからな。危険があればいつでも駆け付けられる」

「いわば、私たちの心の安寧のために?」


ずるい、こんなに悲しげな表情をされたら断れない。


「私に利益しかないように思いますが、本当にいいのでしょうか・・・」

「いいんだよ」


雅也さんに頭を撫でられる。意外に優しい手つきだ。さすが3人の子供を持つお父さんなだけはある。あぁ、心地いい~こんなところにゴッドハンドの持ち主が~


「おいおい睨むなよ」


楽しそうな声が頭上から聞こえる。なんだろう?

連吾くん?なんか怒ってる?なんで?

・・・はっ今、契約の話してたんだった!だから、話がそれて怒ってるのか


「すみません、契約の話でした。あの、皆さんがよろしければ、不束者ですがよろしくお願いします」


頭を下げる。


「えぇもちろん!」

「おう任せろ」

「あぁ」


三者三様の返事が返ってくる。なんかこういうの良いな。みんなで話すって楽しいことなんだな。


「契約って私、やり方がわからないのですが・・・」

「すぐ終わるから大丈夫よ!それに、麻結莉ちゃんは立ってるだけでいいから」


立ってるだけ?


―――――――――――――――――――――――――――



《我、巳嵜連吾は、汝、榊麻結莉を生涯の主として永久に愛し、守ることをここに誓う》


騎士のように膝をついて、私の手を恭しくとる。そのまま流れるように私の手の甲に唇をつけた。唇を、つけた?な、なななななななな!


「無表情でも顔は赤くなるんだな」


くそぅ、楽しそうに笑いやがってーーー!こんな経験ないんだから仕方ないじゃん!友達いないからこういうことしたことないんだもん!え?友達同士でもしない?そんなことは友達いないからわからない。


「あの、これもしかしなくとも・・・」

「ご明察!一人ずつやるわよ!」


おふぅ。なんてこったい。誰か私に鋼のメンタルをください!今すぐに!







































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