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ー大図書館2ー side ???






「長くなるから座ろうか」


座る?ここには大量の本しかないけど・・・


えい!という可愛らしい気合の声とともに、百花姉さんが近くにあった緑色の本を奥に押す。


――――――ギギギィ


本棚が隠し扉に・・・もう何も言うまい。

隠し扉の向こうは前の部屋と同じように本に囲まれていたが、そこには大きな円卓があった。

なんだか、〇リー・ポッ〇ーの世界みたい。おひげが素敵なおじいさんが出てきそう。


全員が座ったところで雅也さんが口を開く。


「まずは、嬢ちゃんに聞きたいんだが。()()()()思い出した?」


やはり私の記憶の封印が解かれたことを知っているようだ。隠す必要は特にないかな、と判断し正直に答える。


「私が思い出したのは、草薙剣の呼び出し方、青龍のこと、騰蛇のことです。それに、思い出したと言っても断片的ですし、ところどころ靄がかかったようで・・・」

「なるほどな。じゃあ、俺たちと嬢ちゃんの関係から話した方が良さそうだな」

「お願いします」


ずっと疑問だった。彼らが何故あれほどに私を、私の中の彼を求めるのか。


「むかーしむかしのだいたい千年前、魑魅魍魎が往来を跋扈していた平安時代まで遡る」



―――――――――――――――――――――――――――――――long long ago




side ???



「我ら十二天将を全員召喚できる人間がいるとはな。いやはや驚いた」

「うむむ?よく見ると人間でもないな。半分九尾の力を感じる」

「あはは!私ら全員を召喚したくせに死んでやがる!何がしたいんだこいつは!はははっ!」


十二人、いや、十二柱の神が自分たちを召喚した、床に突っ伏している青年を囲みながら楽しそうに話している。


「死んでない、勝手に殺さないでもらおう」


むくり、と青年が不満そうな声を漏らしながら立ち上がる。


「小僧、儂らを召喚したのはお前じゃな。何故召喚したのじゃ。命をかけてまで」

「あぁ、それは仕事を手伝ってもらいたいからだよ」


ほぉ、と鋭い視線が青年を射抜く。


「人間ごときが私らを利用しよう、ですって?生意気ね。その口、二度と開かないようにしてあげましょうか?」

「利用じゃない、手伝いだ」

「どっちも同じよ!」


「十二天将って神と瞳の色以外は俺たちとほぼ変わらないんだなー。それに老若男女揃っているなんて面白いなー」


ニコニコニコ。


「私の話、聞いてた?」


さっきまで怒っていた神の一柱が呆れている。残念な子を見るかのような目つきである。


「手伝いっていうのは、陰陽師の仕事だよ。前から思ってたけど、俺、働きすぎだと思うんだよね。だから、手伝ってもらおうと思って」

「お手伝い感覚で神を召喚するなんてっあははっ面白いね、キミ!」

「それに、いま俺、奥さんと子ども2人の4人で住んでるんだけど、食事作ってくれる人とか、門番してくれる人とか、全員辞めさせちゃったから色々回らないんだよねー。一応貴族なのに。」


困ったなー。誰か助けてくれないかなー。と、チラチラ視線を困惑する十二天将に向ける。


「あたしたちに人間の真似事をさせようだなんてね。いいわ!その話乗った!ちょうど暇してたのよ」


その後、賛成だ、反対だ、と色々あって一週間お試しで、青年の下僕・・・間違えた、お手伝いをした結果、十二天将に彼は気に入られ、なんやかんやで使役契約にまで至ったのだった。




―――――――――――――――――――――――――





なんやかんやの内容を知りたいような知りたくないような。


「神を使役・・・しかも使用人扱い」


えっ私の中の人怖すぎ。


「それで、めでたしめでたし、で終わったら良かったんだけどね。」


百花姉さんが悲しげに笑う。ずきん、と胸が痛む。これは、罪悪感?


「彼は人間と九尾の妖狐の間に生まれた子。その霊力は桁外れに強かった。故に、妬まれ、恨まれ、狙われてしまったのよ」



―――――――――――――――――――――――――1000years ago



side ???



「お前らには最期の最後まで世話かけるなぁ。」

「本当よ。あんた、最後まで人の話を聞かないんだから!人間の寿命がこんなにも短いなんてっ」


あぁ、泣いている。私の十二天将(生涯の友)が。涙をぬぐってやりたいが、もう目が満足に見えない。最後の頼みを聞いてくれるか?と彼らに問いかける。


「俺の中の九尾の力は、大きくなりすぎて、俺が死んでも、消えない。だから、九尾の力を、この地に封印する。」

「君に封印する力なんて、もう残っていないだろう?もう目すら見えていないじゃないか!」

「そうだよ!僕たちが九尾の力を何とかするからっもう無理しないで!」


俺はこんなにも愛されていたのか。なんて幸せなことか。思わず笑みがこぼれる。だが、背負わせるわけにはいかない。俺が死んだら、彼らは人界にはいられない。何より、愛する者たちにを縛るわけにはいかない。もう、開放しなければ。


「いいや、この時のためにお前らと出会うより前から、身の内に術を施し、毎日霊力を流して、今日ようやく完成した」


だから、大丈夫だと。もう、縛るものは何もないのだと。


「お前はっ!勝手な奴だ!いつもいつも一人で決めて、進んでいく!死ぬなんて許さない!許さないから!」


悲痛な叫び声があがる。置いて行くなと、置いて逝くなと泣いている。


「頼みとは、なんじゃ?」


そうだった。あまりにも幸せで、忘れていた。呼吸が苦しいのが恨めしい。もっと話していたい。


「封印は、いつか解けてしまう。自然に解ける前に、無理やり壊されるかもしれない。しかも、九尾の力は陰の力が強大すぎて、禍を引き寄せてしまう。だから、たまにでいい。気が向いたらでいいから封印の様子を見守ってくれないか」

「言われずともやりますよ。それくらい!他に、ないんですかっ!」


怒られた。ほかの頼み事、か。


「封印は、千年くらいは壊されなければ保たれるが、そのときに、九尾の力がどうなっているかは、わからない。消滅するかもしれないし、より強大になっているかもしれない。だから、完全に消滅させる術を考えた。」


震える手で、懐から術式を描いた紙を渡す。


「これを、信頼のおける陰陽師に渡してくれ。さっき思いついた術式だから、いろいろ改良が必要だろうけど、まぁ大丈夫だろう」

「何が大丈夫、だ!最後は丸投げじゃないか!」

「まったく最後まで困った人。任せてください。完璧に完成させて渡しますわ」


友が頼もしすぎる。世界中に自慢したい。時が止まればいいのに。


後悔ばかりの人生だった。大切なものをいくつもいくつも失った。己の無力を嘆いで絶望のどん底にいても、友がすくいあげてくれた。愛する家族が支えてくれた。


「また、会おう―――友よ」


そう言い遺し、彼が、安倍晴明が目覚めることは二度となかった。





































彼と、彼らの物語。



途中、長くなったので切ろうかとも思ったのですが、

なんとなく切るのは嫌だったので、一話にまとめました。

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