ー覚醒2ー side 青龍
お久しぶりです。
いや、本当にお久しぶりでございます皆さん。
――――――――――――――10years ago
「あーら、また女の子に泣かされたの?」
泣き虫なのはお父さんに似たのかしらね?
と呆れた顔をしながら洗濯物をたたんでいた手を止めて、お母さんがぼくを見る。
「だって、ひぐっ、だって、怖いんだもんっ」
そう、女の子は怖い。いきなり抱き着いてくるし、腕を引っ張られるし、挙句の果てにぼくを挟んで女の子同士が喧嘩を始めるんだ。先生に助けを求める視線を向けても
「あらあら人気者ねぇ」
と言って笑うだけで助けてくれない。みんなぼくの事が嫌いなんだ。だから、いじわるするんだ。
拙い言葉で精一杯悲惨な現状を伝える。すると、お母さんはぼくを膝にのせて、言った。
「よく聞きな竜太郎。みんなあんたのことが嫌いでそんなことをしているんじゃないよ。あんたのことが好きだけど、その気持ちをどうしたら伝えられるか、まだよくわからないから行動で示しているんだ。」
「嫌いだから、いじわるしてくるんじゃないの?よくわからないよ。」
へにょ、と眉毛を下げて言った。好きだからいじわるするなんてよくわからない。ぼくだったら、いっぱい優しくするのに。
お母さんは、まだわかんないか、と笑いながらぼくの頭をガシガシと少し乱暴に撫でる。ぼくはお母さんの撫で方が好きだ。撫でられると不安がなくなって、安心する。
「今はまだ女の子の方が身長も高いかもしれないし、力も強いかもしれないけれど、そのうち男の子の方が身長もぐっと高くなって、力もうんと強くなる。」
「え~?お母さんはお父さんより強いじゃん」
確かに!とお母さんが笑っていると、夜ご飯を作っていたお父さんがへにょ、と眉毛を下げながらやってきた。
「事実だけど、なんか傷つく。」
「ははは、どんまい!」
ばしばしとお母さんがお父さんの肩を叩いている。痛そう。
「お母さんは鍛えているから例外だ。」
真顔で言ったお父さんがお母さんに頭を叩かれた。めっちゃ痛そう。
「竜太郎、女の子には優しくしな。そしてもしも大切な女の子ができたなら守ってやんな。」
「よくわかんないけど、わかった!」
幸せの記憶。家族3人が揃って笑っていた日々。確かにそこに幸せはあった。
二度とやってこない、日常。
――――――――――――――
「うっ、あっあああああああっっ!!!!」
身を裂くような悲鳴が聞こえる。
そうだ、僕は女の子を助けて、僕たちに関する記憶を彼女から消すために貴人の元へ連れて行く途中で大罪のリーダーを名乗るライという男に・・・!
憎い憎い憎い!母さんの仇・・・!
「せ、、りゅう!起きろ!青龍!」
「と、うだ」
どうやら奴の攻撃をくらって気絶していたらしい。
「起きたなら行くぞ!弓を顕現しろ!あの女が危ない!」
さっきの悲鳴は彼女の・・・!彼女はどこだ!?
「な、んだ、あれ?」
驚きに目を見張る。”市民A”と名乗った不思議な彼女は、目で見える程の強大な霊力を体から迸らせながらライの前に立っていた。
――――あぁ、やっと、やっと会えた。我が主。
いつの間にか両目から涙が流れていた。僕は、あの人を知っている。あの眩いほどの霊力を見たことがある。遠い遠い昔の記憶。この血と魂が覚えている。
隣を見ると騰蛇も涙を流して彼女の姿を凝視している。
今が、約束の時。彼と交わした千年前のあの約束を!
「私の大切な者たちをこれ以上、傷つけさせはしない。」
姿は彼とは似ても似つかない姿なのに、彼女の背中には彼の影が重なって見える。
≪我が声に応じ給へ≫
霊力が彼女の右手に集まっていく。
≪顕現せよ≫
ライは逃げることもせず、ただただ彼女の、いや、彼の姿を、霊力を見て呆然としている。
≪草薙剣≫
遥か昔、神代の時代に八岐大蛇を倒したとされる神器が、彼女の声に応じ、顕現した。なんという神々しさだろうか。黄金の光が刀身から放たれている。
「っく!」
覚醒した直後に神器を顕現させた影響か、彼女の体がふらつく。
『守ってやんな』
母さんの言葉が蘇る。
―――わかってるよ。母さん。いまならちゃんと、母さんの言葉がわかる。
彼女の肩を支えて、草薙剣を共に握る。すると、反対側からも手が伸びてきて、草薙剣を掴んだ。顔を見ずともわかる。
「しっかり支えてろよ!青龍!」
「それはこっちのセリフだよ!騰蛇!」
「青龍!騰蛇!無事だったんですね!」
彼女が嬉しそうに笑う。
ライはこちらを見て嗤った。
「ははっあはははははは!そうかお前か、お前だったのか!安倍晴明!!!」
「「「消え失せろ!!!」」」
剣をライに向かって一直線に振り下ろす。
閃光が辺りを包み込む。
・竜太郎
青龍の名前。
・竜太郎の母
明るい人。大罪の一人に殺された。故人。
・竜太郎の父
料理がうまい。妻の尻に敷かれるタイプ。
・安倍晴明
?????????
竜太郎の両親はとても仲が良かったです。