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ー七不思議ー

お待たせいたしましたぁあああ!




ーーーキーンコーンカーンコーン


「後ろからテストまわせー」


朝からお昼まで永遠とテストに向き合っていた。長時間同じ姿勢だったので体がガチガチである。右手で左手首を掴み頭上にぐっと伸ばす。この凝り固まった筋肉が伸びてますっていう感覚がたまらない。一仕事終えた達成感みたいなものを感じる。


「言い忘れてたけど、赤点取った奴には大量のテキストがプレゼントされるそうだ」

「さようなら、俺の花の高校生活」


ほろりと涙を流す土屋くん。ここはクラスメイトとして(友人ではない)慰めたほうがいいのかな。


「よっしゃお昼だー!アカリン、麻結莉ちゃん一緒に食べようよ!」


この男に限っては慰めるという行為はいらないな。なんという変わり身の早さ。もうテストのことは頭にはないようだ。


「まゆりん、ご飯食べよ~」

「うん!」


友達とご飯、なんて甘美な響きでしょう。


「僕たちも一緒にいいかな?」

「な~に?竜ちゃん(竜太郎)連ちゃん(連吾)も一緒に食べたいの?まゆりんどうする?」

「あれ?俺見えてない?土屋もいるよ。ここにいるよ」

「全然いいよ」


竜太郎はニコニコと爽やかイケメンスマイルで話しかけてきたが、連吾はプイッと顔を背けている。こどもか。イケメンがなんでも許されると思うなよ。その顔かわいいかよ。


ということで、5人でお昼を一緒に食べることにした。土屋くんもしれっと加わっていた。


「この学校、七不思議あるの知ってた?」

「へぇ~そんなのあるんだね」


土屋くんは入学二日目でそんなことまで知っているらしい。竜太郎が返すが基本的にこの二人しか話していない。アカリンも要所要所で話しているが、私と連吾は無言でひたすら咀嚼している。決して無視しているのではなく、会話に入るタイミングがわからないだけだ。入ろうとするたびに土屋くんが次の話題にいっていしまう。ある意味彼がいてくれてよかったのかもしれない。


「どうせ、歩く人体模型とかでしょ?」

「アカリン信じてないな?」

「まぁね」


ちなみに私とアカリン、連吾はお弁当、土屋くん、竜太郎はコンビニのパンとお弁当である。


「有陽高校には芸術コースやら会計コースやらあるからそこら辺の七不思議とはちょっと違うんだなこれが。どう、気になってきた?言っちゃおうかな、どうしようかなー」

「もったいぶらずに早く言え」


連吾の言葉が私が思っていたことと同じで驚いた。土屋くんと連吾の初会話がこれでいいのかとも思ったが、私も似たようなものだった気がする。


「まったくしょうがないなーそこまで言うなら教えよう」


鋼メンタルの持ち主だな。


「首が勝手に落ちる美術室の彫像、勝手に電源がつくコンピュータ室の右奥のパソコン、知らない間に隣のやつと入れ替わってる電卓、走ると確実に滑る渡り廊下、」

「後半のやつほんとに不思議」

「確かに変わってるね」

「この四つはまだ普通?なんだけど、残り三つが怖いんだよなー女子二人は怖いの大丈夫?」

「ここまで聞いたら気になるー」

「私も怖いものは平気です」


だって、本当に怖いものに最近よく会ってますから。いまさら学校の怪談にびびったりはしない、はず。というか、土屋くん以外本当の化け物と日々戦ってるわけで。


「残りの三つはここら辺の学校全部で内容が同じなんだよ」

「へぇ~かなり信憑性のある内容ってことかな?」

「顔面の無い女が美人の顔の皮を剥ぐ、植物が人を食べている、夜中に一人で泣いていると拷問される、言葉は多少違ってもこの三つだけは昔から変わらないらしい。怖くね?」

「そうですね」


お、うまく会話に入れた!と思ったが、周りのみんなの様子がおかしい。アカリンの顔は真っ青で、連吾からは明らかに殺気が漏れていて、竜太郎は無表情である。土屋くんも異様な空気を感じ取ったのか、口を閉じている。


「その話、どこで聞いたのかな?」


竜太郎の普段からは想像もつかないような抑揚のない声が問う。


「3年前にこの学校に通ってた兄ちゃんから、だけど」

「そう」


明らかに様子がおかしい。隣に座るアカリンの膝の上できつく握りしめられた両手に自分の手を重ねる。


「アカリン・・・」

「・・・あっごめんね、まゆりん、土屋くん。なんでもないの」

「いや、お昼にこんな話した俺が悪かったわ。ごめんな」


ーーーキーンコーンカーンコーン


「また明日も一緒に食べようぜ!」

「うん、そうだね」


少しわざとらしいが、明るく次の約束をする。あの3人、大丈夫かな。アカリンは「なんでもない」と言っていたが、なんでもないわけがない。連吾や竜太郎の様子から、自らを「大罪のリーダーのライ」と名乗った男を思い出す。きっと七不思議の最後の三つにはそいつらが関係しているのだろう。3人には直接聞けない。百花ねえさんの連絡先も知らない。あと面識があって、事情を知っていそうな人といえばあの人しかいない。明日の朝にでも聞きに行こう。何も知らないまま、後悔はしたくない。たとえそれでみんなから嫌われることになろうとも。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「じゃあ神子様は俺に着いてきな」


日が沈み月が頭上に輝いている。青龍と騰蛇は普段通りで、少し安心した。が、新たな危機が迫っている。女に二言はないのよ麻結莉!力を自分のものにしてみんなを守れるくらいに強くなる!と思っているけどやっぱり怖い!


「ビビってないで行くぞ」

「べべ別にビビってないし」

「頑張ってくださいね神子様」


青龍から離れたくないよ~。


「霊力もっと抑えろ!」

「動きに無駄が多い!」

「周囲に気を配れ!」


鬼だ鬼、ここにイケメンの鬼がいる。騰蛇のしごきはまさにスパルタ。おかげで(わざわい)をすべて葬ったあとはしばらく動けなかった。


「霊力のコントロールが目下の課題だな」

「はぁはぁ、はい」

「霊力をうまくコントロールできるようになれば今みたいにすぐに疲れることもなくなる」

「なるほど、頑張ります」

「ほら」


目の前には騰蛇の手が。え、掴めってことですか?ツンデレですか。ごちそうさまです。疲れて頭が働かない。


「とろい」


一言いい返してやろうと思ったが、騰蛇に手を強引に掴まれたことで言葉が引っ込んでしまった。そのまま手を引っ張られて騰蛇の方に引き寄せられる。咄嗟の出来事に体がついていかず、騰蛇の方へよろめいてしまう。まずい、ぶつかる!


「まったく世話の焼ける(あるじ)だな」


思った衝撃はいつまでたっても来ない。代わりに暖かいものに包まれている。目を開けると至近距離に騰蛇の顔が。剣だこのできた手、しっかりとした腕に包まれて、このとき不覚にも騰蛇にときめいてしまった。





短編「女騎士は衛生兵に恋をする」を投稿しました。お時間があればそちらもぜひ。


作者の家のどうでもいいエピソード

雪「母の日何が欲しい?」

母「サブレット」

雪「オーケー任せろ」

母の日当日

雪「三種類の味のサブレットをご用意しました」

母「違うこれじゃないスマホのおっきいやつ」

雪「それサブレットじゃなくてタブレット」

衝撃の間違いでした。


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