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ー初仕事3-




春の夜はまだ少し肌寒い。まん丸の立派な月は太陽のように暖かい光は出してはくれない。


「騰蛇があらかた片付けたみたいだから結界をとくけど、たまに飛び出てくるから周りに気を付けてね」

「っわかりました」


禍が飛び出てきたらどうしよう。避ける?うなれ私の動体視力・・・!

消えていく結界の周囲に目を配る。


ーーーガサガサッ


前方から草を踏む音が聞こえた。注意深く目を凝らす。月の光に反射して仄かに輝く深紅色の髪が見えた。


「なんだ騰蛇か」


びっくりさせやがって~このかまってちゃんめ~


「なんか失礼なこと考えてるだろ」

「べっ別に~」


自他ともに認める私の無表情がなんでこの男には効かないんだ。表情が顔に出るなんて言われたことないよ。


「明日は俺に着いてきてみるか?」

「それってつまり・・・」

「禍を狩る側だな」

「無理ですよそんな力は持って・・・ますけど。でも足手まといになっちゃいますよ」


青龍に救いを求める目を向ける。だが、何を勘違いしたのか


「いいんじゃないかな」


などと。


「いやしかしですね」

「ごちゃごちゃうるさい。草薙の剣の力をコントロールできるようにするための特訓だ」


お前ぜんぜん使いこなせてなかっただろ、とあきれ気味に騰蛇が言ってくる。

た、たしかに。


「あまりにもへたくそだったら青龍のところにたたき戻すけどな」

「望むところです」


あれ?望むところです、なんて言ったら明日から禍と戦うことになってしまうのでは・・・しまったぁ!私の中の負けず嫌いがつい顔を出してしまった!


「期待はしないでおく」


むっかつく~!なんだこの一言余計な男は。最後に何か言わないと気が済まないのか。そういう病気なのか。


「ほんとに仲いいね」

「「どこが」ですか」


ニコニコと神のほほえみを浮かべている。神子様、と青龍から呼ばれた。


「僕とも使役契約を結んでいただけませんか」

「・・・青龍がいいのなら」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



月明かりの下で行った使役契約は、幻想的だった。しかしやはり手の甲にキスされるのは何度されても慣れないものである。眼福ではありました。


「なんか、霊力が上がった気がする」

「え?」

「言われてみれば俺も」

「ええ?使役契約の影響でってことですか?」

「そうだね」

「こんな利点があったのか」


二人とも知らなかったらしい。騰蛇なんて言われないと気が付かないのだから、上がるといっても微々たる量なのだろう。なんか申し訳ない。


「気にすんな」

隣の騰蛇から労りの声が聞こえた気がする、いや気のせいですな。でも、気のせいでもなんか嬉しいな。


「「っ!」」


それは無意識に出た笑顔で。月の下で微笑む姿は女神のように美しかった。思わず青龍と騰蛇は目をそらしてしまった。が、麻結莉本人は自分が笑顔になっていたことに気づいていないのでいきなり目をそらした二人を不思議に思っている。


「これは、すごいね」

「なにがですか?」

「ある意味兵器だな」

「だから、なにが?」


なんだなんだ?いきなり目をそらしたと思ったら意味の分からないことをつぶやき始めた件。


「そういえば、騰蛇には敬語使わないんだね」

「言われてみれば、無意識でした」

「俺も敬えよ」

「理由を挙げるとするなら、そういうところでしょうね」

「騰蛇は名前で呼んでるし」

「そう言われたので」


仕方なく。


「僕のことも昼は名前で呼んでよ。それから敬語もなしね」

「え、いやでも」

「ね」

「・・・でも」

「ね」

「・・・・・・・・はい」

「ありがとう」


イケメンの押しが強い。「ね」の時の顔がもう・・・ね。あ、「ね」がうつった。ね。


「それじゃあ送ってくよ」

「よろしくおね、、、、よろしく」

「うん」


やはり騰蛇以外には意識しないと敬語になってしまう。ただやっぱりいい笑顔だー。なぜだろう騰蛇の視線が痛い。この面食い女って視線が言っている、気がする。



ーーーーーーーーーーーーーー




「お前ら喜べ、テストだ」


藤岡先生が気怠そうにテストの束をパシパシと教卓に打ち付けている。というかいきなり予定にないテストをやると言われても、私は喜べそうにないがここは喜ぶべきところなのか。


「うそだ、だれか嘘だと言ってくれ」


土屋くんがぶつぶつ頭を抱えながら机に向かってつぶやいている。まわりのみんなの顔色も暗い。なるほど先生の発言はツッコミ待ちのボケということか。


もう一度周囲を見る。誰も先生の渾身のボケにツッコミを入れる気配はない。ここは私が言うしかない。覚悟を決めるのよ、榊麻結莉!・・・よしっシュミレーションだ!


▷なんで喜ばなあかんねん!(なぜに関西弁)

▷相変わらず怠そうですね!(先生の生態にツッコんでどうする)


だめだ。レパートリーが少なすぎる。


「お前ら前向け~テスト配るぞ~」


あぁっ。ツッコむ前にテストが配られてしまった。藤岡先生に向けて謝罪の意を込めて手を合わせる。南無。


「まゆりん、頑張ろうね!」


テストをアカリンからもらうときに小声で言われた。


「うん!頑張ろうね!」


元気百倍。アカリン万歳。


「それじゃあテスト開始」






新作「凍蝶」書き始めました。異世界恋愛です。

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