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ー初仕事2- side 騰蛇




「せいっ!」


青龍が張った結界にわらわらと寄ってきた禍を端から斬っていく。以前大量の禍を細切れにした結界ではなく、霊力を流し込むための結界なので攻撃力はない。防御だけである。右手に持った刀に霊力を流しながら、あのときのことを思い出していた。



ーーーーーーーーーーーーーーー



「あっちにも禍がいるみたいだな」


今晩はやけに数が多い。斬っても斬っても湧いてくる。ここだけか?それともほかの場所でも?


「今夜は数が多いし手分けしてやらない?」

「そうだな。じゃあ俺はこっちに行くから」


背後の禍が湧いてくる森を指さして言う。


「じゃあ僕はあっちね。なるべく早く片付けてそっちに向かうから」

「あぁ」


青龍が走り去っていった。

襲い掛かってくる禍をひたすらに斬る。こんなに数が多いとなると、もしかして猖獗でも開いたか?いや、そんなわけないか、と自分のバカげた考えを打ち消す。最後に猖獗が開いたのは50年も前だし、こんなところに突然できるわけない。けど、嫌な予感がする。禍が来たと思われる方向に急ぐ。


「み、見間違いだよな。こんなところにあるわけ・・・」


およそ50メートルほど先の地面に昏い、どこまでも昏い穴が開いている。十二天将の力を継承してすぐの頃に見た大穴よりはだいぶ小さいが、底が見えない不気味な昏さは同じだ。思わず一歩後ろに後ずさる。


ーーーパキッ


枯れ枝を踏んで折れた音が暗い夜に響く。おそらく百いや二百以上いると思われる禍が、乾いた音を聞いて一斉にこちらを振り向く。


『グルっぎゃああああアアアっっっ』

「やばいやばいやばいやばいっ」


なんかこうわらわらうじゃうじゃわさわさと大群で押し寄せてくるのは生理的に無理だ!男なのに情けない?寝言は寝て言え!


うぉぉぉおおおおお!青龍の奴、なるべく早く来るっつったのに全然来ないし!なんなんだよちきしょーーー!


見えた!


「おい、青龍!いつまで俺を一人にするつもりだ!うっかり死んだらどうしてくれるんだ!もう嫌だ!」


思わず不満が爆発してしまった。この発言と行動だけ見たらただのヘタレ野郎だな、などと思っていたら、ふと青龍以外の気配に気づいた。なんか、不思議な雰囲気を持った女だな。


ーーーーーーーーーーーーーーー




暗い森の中を俺と青龍と”市民A”と名乗る変な無表情の女の3人で歩く。この無表情の女が見た今夜の記憶を貴人(きじん)に消してもらうために、彼女のもとへ連れていく途中に、ずっと探していたヤツに遭遇した。


ヤツが名乗った瞬間、目の前が怒りで真っ赤に染まった。右手にはいつの間にか召還していた愛刀があった。

斬る、斬る斬る斬るッ!こいつは絶対に許さねぇ・・・!

二回、三回と間髪入れずに斬りかかるがヤツには一向に当たる気配がしない。嫌な汗が止まらない。そもそもなんでいきなり俺たちの前に現れたんだ。一体何が目的だ。思考が多少の冷静さを取り戻していく。青龍が霊力を高めている気配がする。この距離なら青龍の攻撃は外れない。それなら、青龍の攻撃に合わせて一気に畳みかける!


「今日は戦いに来たわけじゃないんだけどなぁ」


のらりくらりと俺の攻撃をかわしながら、ヤツがぼやく。戦いにきたわけじゃない?目的はやはり他にあるということか。青龍の攻撃態勢に入ったのを感じながら、ヤツと一旦距離をとる。その一瞬の隙だった。


「あぁ君だね。妙な気配がするのは」


青龍の攻撃が当たる寸前、声が聞こえた。

攻撃が地面を砕き、視界が遮られる。どこだ、気配がしない。この一瞬でどこに消えた!


ヤツがいたのはあの女の真後ろ。急げ、急げ急げ!青龍も気づいてあの女に手を伸ばすが、ヤツが何かを言った瞬間、青龍がこちらに向かって吹っ飛んできた。ヤツのこの底知れない力は一体何なんだ。とっさに青龍を庇おうとしたが間に合わなかった。


遠くであの女の声の呼ぶ声が聞こえた気がしたが、木を何本かなぎ倒してようやく止まったときには俺も青龍も意識を失っていた。





ーーーーーーーーーーーーーーー



燃えるような真っ赤な夕焼けを眺めている。


ーここ、どこだ?


「騰蛇、あの子を助けてやってくれないか?」


ーこいつ、だれだ?

いや、俺はこいつ、この人を知っている。


「言われずとも」


無意識に、にやりと不敵に口角が上がる。たとえこれが夢だとしても、また会えて嬉しかったよ。我らが主。


「優しいところはちっとも変わってないね」


俺のことを優しいとかいう変人は、あんただけだよ。



ーーーーーーーーーーーーーーー






連日投稿してる人を尊敬します。えげつない

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